転職時にもらう源泉徴収票、いつの分が必要?発行タイミングと提出のルール
転職活動を終え、新しい会社への入社準備を進める中で、必ずと言っていいほど耳にするのが「源泉徴収票」という言葉です。「前の会社からもらったはずだけど、どの年の分を提出すればいいの?」「いつもらえるものなの?」「なぜ転職先に提出する必要があるの?」など、源泉徴収票に関する疑問は尽きないものです。
この記事では、転職時に必要となる源泉徴収票について、**「いつの時点の」「いつ発行される」**ものが必要なのか、そしてなぜ転職先に提出する必要があるのか、その基本的なルールや注意点を分かりやすく解説します。スムーズな年末調整や確定申告のために、ぜひ参考にしてください。
源泉徴収票とは?その役割を再確認
まず、源泉徴収票がどのような書類で、どんな役割を持つのかを簡単に押さえておきましょう。
源泉徴収票は、1年間に会社から支払われた給与・賞与の総額(支払金額)、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、そしてその年に源泉徴収された所得税の額などが記載された書類です。
つまり、「あなたがその年の1月1日から12月31日までの間に、その会社からいくら給料をもらい、いくら所得税をあらかじめ納めたか」を証明する公式な書類です。これは、会社が従業員に代わって所得税を計算し、毎月の給与から天引きして国に納める「源泉徴収制度」に基づいています。
転職先に提出するのは「いつの」源泉徴収票?
転職先の会社から「前職の源泉徴収票を提出してください」と言われた場合、基本的には**「その年の1月1日から退職日までに、前職の会社から支払いを受けた給与等に関する源泉徴収票」**を指します。
具体例:
- 2025年5月にA社を退職し、2025年6月にB社へ転職する場合: B社へ提出するのは、**「2025年1月1日からA社退職日までのA社発行の源泉徴収票」**です。
- 2024年12月にC社を退職し、2025年2月にD社へ転職する場合: D社へ提出するのは、**「2025年1月1日からD社入社日までに他の会社からの給与所得がない」**ため、原則として前職(C社)の源泉徴収票の提出は不要です。ただし、C社から受け取る「2024年分の源泉徴収票」は、ご自身で2024年分の確定申告を行う際に必要になる場合があります。
なぜその年の分が必要なのか?
これは、転職先の会社が、あなたがその年(1月1日から12月31日まで)に得た全ての給与所得を合算し、年末調整を行うために必要だからです。年末調整によって、年間の正しい所得税額が計算され、源泉徴収された所得税額との過不足が精算されます。
もし年の途中で複数回転職した場合は、その年に給与の支払いを受けた全ての会社から発行された源泉徴収票を、年末時点で在籍している会社に提出する必要があります。
源泉徴収票は「いつ」もらえる?発行タイミング
源泉徴収票が発行されるタイミングは、あなたが在職中か、あるいは退職するかによって異なります。
在職中の場合(毎年発行されるもの)
- 通常、会社は従業員のその年1年間の所得と所得税額を確定させる年末調整を行った後、源泉徴収票を発行します。
- 一般的には、その年の12月の給与計算が終わり、年末調整が完了した後に、12月の給与明細と一緒に、あるいは翌年の1月初旬頃に会社から交付されるのが通例です。
年の途中で退職する場合
- 所得税法第226条により、会社は退職者に対して、退職日から1ヶ月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。
- 多くの場合、最後の給与が支払われた後、または退職に関する事務手続きが完了した後に、自宅へ郵送されてくるのが一般的です。手渡しで受け取るケースもあります。
- 退職前に、いつ頃、どのような方法(郵送か手渡しなど)で源泉徴収票がもらえるのかを、会社の人事・経理担当者に確認しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
源泉徴収票に関する注意点と対処法
受け取ったら必ず内容を確認
源泉徴収票が手元に届いたら、以下の項目に誤りがないか必ず確認しましょう。
- 氏名、住所
- 支払金額(その年に支払われた給与・賞与の総額)
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除の額の合計額
- 源泉徴収税額
- (該当する場合)社会保険料等の金額、生命保険料の控除額など
- 支払者(会社)の名称、所在地
もし記載内容に誤りや不明な点があれば、速やかに発行元の会社に問い合わせて確認・訂正を依頼しましょう。
紛失してしまった場合
源泉徴収票を紛失してしまった場合は、退職した会社の人事部や経理部などの担当者に連絡し、再発行を依頼しましょう。 再発行は会社の義務ですので、基本的には応じてもらえます。
- 依頼方法: 電話やメールで、「源泉徴収票を紛失したため、再発行をお願いいたします」と伝えれば問題ありません。
- 再発行にかかる時間: 会社の対応スピードにもよりますが、通常は1週間~3週間程度で手元に届くことが多いようです。年末調整や確定申告の時期は依頼が集中することもあるため、紛失に気づいたら早めに依頼しましょう。
会社から源泉徴収票がもらえない・届かない場合
退職後1ヶ月を過ぎても源泉徴収票が送られてこない、あるいは会社に発行を依頼しても応じてもらえない場合は、以下の対応を検討しましょう。
- まずは会社に再度、丁寧に発行を依頼する: 単なる手続きの遅れや手違いである可能性もあります。
- 税務署に相談する: 会社に催促しても対応してもらえない場合は、所轄の税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することができます。この届出書を提出すると、税務署から会社に対して源泉徴収票を発行するよう指導が入ることがあります。この際、給与明細書など、給与の支払いを証明できる書類があると手続きがスムーズです。
転職先への提出が間に合わない場合は?
万が一、転職先の年末調整の期限までに前職の源泉徴収票の入手が間に合わない場合は、速やかに転職先の人事・経理担当者に相談しましょう。
その年の年末調整は転職先では行えず、あなた自身で確定申告を行う必要が生じることが一般的です。確定申告を行う場合でも、前職の源泉徴収票は必要になりますので、入手でき次第、大切に保管しておきましょう。
まとめ:源泉徴収票は「その年の分」を「退職後1ヶ月以内」に
転職時に新しい会社へ提出する源泉徴収票は、**「その年の1月1日から前職の退職日までに支払われた給与等に関するもの」**です。そして、この源泉徴収票は、所得税法により、会社が退職者に対して退職日から1ヶ月以内に交付することが義務付けられています。
源泉徴収票は、あなたの所得と納めた税金を証明する重要な書類であり、転職先での年末調整や、ご自身で行う確定申告に不可欠です。受け取ったら内容を確認し、紛失しないように大切に保管しましょう。そして、もし発行に関して何か問題が生じた場合は、早めに発行元の会社や関係機関に相談することが大切です。スムーズな税務手続きのためにも、源泉徴収票の取り扱いについて正しく理解しておきましょう。