転職「10月入社」のリアル：メリット・デメリットと成功のための準備

転職活動を進める中で、「入社時期」は重要な検討事項の一つです。特に「10月入社」は、4月入社と並んで、企業の採用活動が一つの区切りを迎えるタイミングであり、転職希望者にとっても魅力的な選択肢となることがあります。「10月入社って、どんなメリットがあるの？」「準備はどう進めればいい？」「年末調整やボーナスはどうなるんだろう？」など、具体的な疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、10月入社を目指す転職活動について、そのメリット・デメリット、適切な準備スケジュール、そして入社後の社会保険や税金、ボーナスといった待遇面でのポイントなどを分かりやすく解説します。

なぜ「10月入社」が転職の一つの選択肢となるのか？

企業が10月入社の中途採用を行う背景や、転職希望者がこの時期を選ぶ理由には、いくつかの要因があります。

• 企業の事業年度・組織体制の区切り: 多くの日本企業では、4月始まりの事業年度を採用していますが、10月を「下半期」のスタートと位置づけ、このタイミングで組織体制の見直しや新規プロジェクトの開始、人員増強を行うことがあります。
• 夏のボーナス支給後の退職者増加と、その補充ニーズ: 一般的に6月～7月に夏のボーナスが支給された後、退職を決意し、8月～9月頃に退職する人が増える傾向があります。企業側は、その欠員を補充するために、10月入社をターゲットとした採用活動を行います。
• 転職希望者側の事情:
  • ボーナスを受け取ってから転職したい: 夏のボーナスを受け取ってから、現在の会社を退職し、新しい会社へ移りたいと考える人にとって、10月入社はタイミングが良いと言えます。
  • じっくりと転職活動を進めたい: 春先の新年度採用のピークを避け、比較的落ち着いた環境で、時間をかけて企業選びや選考対策に取り組みたいと考える人。
  • 年度の途中でのキャリアチェンジを希望: 新卒一括採用の時期とは異なるタイミングで、キャリアの新しい一歩を踏み出したいと考える人。

10月入社を目指す転職：メリットとデメリット

10月入社には、他の時期の入社と比較していくつかのメリットとデメリットがあります。

メリット

• 企業によっては即戦力としての期待が高い: 下半期のスタートに合わせて即戦力となる人材を求める企業も多く、これまでの経験やスキルを高く評価され、早期に責任ある仕事を任される可能性があります。
• 職場に馴染みやすい場合がある（組織変更のタイミングなど）: 10月は、企業によっては下半期に向けた組織変更や人事異動が行われる時期でもあります。部署のメンバー構成が変わったり、新しいプロジェクトが始動したりするタイミングであれば、中途入社者も比較的スムーズに組織に溶け込みやすいと言われています。
• 夏のボーナスを受け取ってから退職できる可能性: 現在の勤務先の夏のボーナス支給条件（支給日在籍など）を満たしていれば、ボーナスを受け取ってから退職し、10月入社を目指すという計画が立てやすいです。
• 求職者の競争率が比較的低い場合がある（4月入社と比較して）： 新卒採用や4月入社を目指す転職活動のピークと比較すると、10月入社を目指す求職者の数はやや落ち着いている傾向があり、競争率が若干緩和される可能性があります。ただし、人気企業や好条件の求人は依然として競争が激しいです。
• 企業によっては研修制度が利用できることも: 下半期の始まりに合わせて、中途入社者向けの研修プログラムを用意している企業もあります。

デメリット

• 求人数が4月入社と比較して少ない可能性がある: 多くの企業にとって、依然として4月が採用のメインシーズンです。そのため、10月入社の求人数は、4月入社を目指す時期と比較すると、選択肢が限られる場合があります。特に大手企業や人気企業では、10月入社の求人が少ないこともあります。
• 同期入社の仲間が少ない場合がある: 4月入社のように多くの同期と一斉に入社するケースは少なく、同時期に入社する社員が少ない、あるいは自分一人だけということもあり得ます。そのため、同期の仲間を作りにくいと感じる人もいます。
• 入社時期が夏季休暇と重なることによる選考・準備の遅延: 転職活動の後半（8月～9月頃）が、企業の夏季休暇期間と重なる場合、選考プロセスが通常より長引いたり、入社準備の連絡が遅れたりする可能性があります。
• 昇進・昇給の査定タイミングで不利になることも（企業による）： 企業の昇給・昇格の査定期間が、例えば4月～9月といった上半期を対象としている場合、10月入社だと最初の査定期間を満たせず、昇進や昇給の機会が翌年度になるなど、4月入社組と比較してスタートが遅れる可能性もゼロではありません。これは企業の評価制度によります。

10月入社を目指す転職活動のスケジュールと準備

10月入社を目標とする場合、逆算して計画的に転職活動を進めることが重要です。

• 一般的な転職活動期間の目安: 応募から内定獲得までに1～2ヶ月、内定獲得から入社までに1ヶ月程度（退職交渉・引き継ぎ期間を含む）が一般的とされています。
• 10月入社を目指す場合の活動開始時期の目安:
  • 6月～7月頃: 自己分析、キャリアプランの明確化、情報収集、応募書類の準備などを本格的に開始する。夏のボーナス支給後であれば、より具体的に行動に移しやすくなります。
  • 7月～8月頃: 興味のある企業へ応募を開始し、書類選考、筆記試験、一次面接などを受ける。お盆休みなどを考慮し、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。
  • 8月～9月頃: 二次面接、最終面接などを受け、内定獲得を目指す。内定を得たら、速やかに現在の勤務先に退職の意思を伝え、退職交渉と業務の引き継ぎを行います。
  • 9月中: 有給休暇の消化（可能な場合）、新しい会社への入社準備（必要書類の提出など）を進めます。
  • 10月1日: 新しい会社へ入社。

重要なポイント:

• 早めの行動開始: 求人数が4月入社時期ほど多くない可能性も考慮し、できるだけ早めに情報収集や準備を始めることが、選択肢を広げ、余裕を持った活動に繋がります。
• 現在の職場の繁忙期やプロジェクトの状況を考慮する: 円満な退職のためには、現在の仕事への配慮も不可欠です。
• 転職エージェントの活用も検討: 10月入社向けの求人情報や、選考スケジュールに関するアドバイス、企業との日程調整代行など、専門的なサポートを受けることができます。

10月入社の場合の「年末調整」「ボーナス」「有給休暇」はどうなる？

年末調整

• 10月に入社し、年末（通常12月31日）までその会社に在籍している場合は、原則として新しい勤務先で年末調整が行われます。
• その際、その年の1月1日から前職の退職日までに支払われた給与等に関する「源泉徴収票」を、前職の会社から取り寄せて、新しい会社に提出する必要があります。 これにより、1年間の所得全体を合算して正しい所得税額が計算され、精算されます。
• もし、前職の源泉徴収票の提出が年末調整の期限に間に合わない場合は、自身で確定申告を行う必要が生じます。

ボーナス（賞与）

• 転職先の冬のボーナス: 多くの企業では、冬のボーナス（12月頃支給が一般的）の査定期間は、例えば4月～9月（上半期）といった形になっています。10月入社の場合、この査定期間に在籍していないため、入社初年度の冬のボーナスは支給されないか、あるいは寸志程度の支給となるのが一般的です。 ただし、企業によっては、入社時期や貢献度に応じて一定額を支給する規定を設けている場合もありますので、内定時の労働条件確認の際に確認しておくと良いでしょう。
• 翌年夏のボーナス: 翌年の夏のボーナスの査定期間（例えば、前年10月～当年3月など）には在籍していることになるため、こちらは規定通りに支給される可能性が高いです。

有給休暇

• 年次有給休暇の付与: 労働基準法では、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合に、原則として10労働日の有給休暇が付与されます。
• 10月1日に入社した場合: 上記の原則に基づけば、翌年の4月1日に最初の有給休暇が付与されることになります。
• 企業の「前倒し付与」や「一斉付与」の確認: 企業によっては、法律の基準よりも早く（例えば入社時に数日付与など）、あるいは全社員の基準日を統一して（例えば毎年4月1日など）有給休暇を付与する制度を設けている場合があります。これらの扱いは企業の就業規則によって異なりますので、入社前に確認しておくと良いでしょう。

まとめ：「10月入社」は計画性と情報収集が成功の鍵

「10月入社」を目指す転職活動は、夏のボーナスを受け取ってから行動したい方や、新年度の区切りとは異なるタイミングでキャリアチェンジをしたい方にとって、有効な選択肢の一つです。企業側も下半期の事業計画に合わせて採用活動を行うため、一定の求人需要が見込めます。

しかし、4月入社を目指す時期と比較すると求人数が少ない可能性や、選考スケジュールが夏季休暇の影響を受ける可能性なども考慮に入れる必要があります。

最も重要なのは、あなた自身のキャリアプランやライフプランと照らし合わせ、なぜ10月入社を目指すのか、その目的を明確にし、そこから逆算して計画的に準備を進めることです。そして、年末調整やボーナス、有給休暇といった待遇面についても、事前にしっかりと情報を収集し、理解しておくことが、入社後のミスマッチを防ぎ、安心して新しいキャリアをスタートさせるための鍵となります。

この記事が、あなたが「10月入社」という選択肢を賢く活用し、より良い未来へと繋がる転職を実現するための一助となれば幸いです。

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岩下隼人

ロイヤル合同会社　代表

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。