転職・退職時にもらえるお金とは?知っておきたい給付金・手当の種類と条件
転職や退職を考える際、気になることの一つが「お金」の問題ではないでしょうか。次の仕事が決まるまでの生活費や、スキルアップのための費用など、経済的なサポートがあれば心強いものです。実は、会社を辞めた後や転職活動中に、一定の条件を満たせば受け取れる可能性のあるお金(給付金や手当など)がいくつか存在します。
この記事では、転職や退職の際に知っておくと役立つ、国や会社から支給される可能性のあるお金の種類、それぞれの受給条件、手続きの概要などを分かりやすく解説します。ご自身の状況に合わせて、どのようなサポートが利用できるのかを確認してみましょう。
会社を辞めたらまず確認!「退職金」
長年勤めた会社を退職する場合、まず確認したいのが「退職金」です。
- 退職金制度の有無と種類: 退職金制度は法律で義務付けられているものではなく、企業によって制度の有無や内容(退職一時金制度、企業年金制度など)が異なります。まずは、ご自身が勤務している(または、していた)会社の就業規則や退職金規程を確認しましょう。
- 支給条件: 勤続年数や退職理由(自己都合か会社都合かなど)によって、支給額が変動したり、支給対象外となったりする場合があります。
- 手続き: 通常、退職時に会社から手続きに関する案内があります。必要な書類や手続きの期限などを確認しましょう。
- 税金: 退職金は所得税や住民税の課税対象となりますが、「退職所得控除」という税制上の優遇措置があり、一定額までは税金がかからない、または軽減される場合があります。
【雇用保険から】失業中の生活を支える「基本手当(失業保険)」
雇用保険に加入していた方が、働く意思と能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない場合に、生活を支援するために支給されるのが「基本手当(いわゆる失業保険)」です。
- 受給資格:
- 原則として、離職日以前2年間に被保険者期間(賃金支払基礎日数が11日以上ある月)が12ヶ月以上あること。
- 倒産・解雇など会社都合による離職の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給資格が得られる場合があります。
- 働く意思と能力があること。 *積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態であること。
- 手続き場所: お住まいの地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)。
- 主な必要書類: 雇用保険被保険者離職票(1および2)、マイナンバーカード(または通知カードと身元確認書類)、写真、印鑑、本人名義の預金通帳など。
- 支給額と支給日数: 離職時の年齢、雇用保険の被保険者であった期間、離職理由、離職日以前6ヶ月間の賃金などに基づいて計算されます。支給される日数は、90日~360日の間で個々の条件によって異なります。
- 注意点:
- 待期期間と給付制限: 手続き後、7日間の「待期期間」は支給されません。また、自己都合退職などの場合は、待期期間に加えて通常2ヶ月または3ヶ月の「給付制限期間」があります。
- 求職活動の実績: 定期的にハローワークで失業の認定を受ける必要があり、その際には求職活動の実績報告が求められます。
- アルバイト等の収入制限: 受給期間中にアルバイトなどで収入を得た場合は、その金額や日数によって手当が減額されたり支給されなかったりすることがあります。必ず事前にハローワークに報告・相談しましょう。
【雇用保険から】早期の再就職を応援する「再就職手当」
基本手当の受給資格がある方が、所定給付日数を一定以上残して安定した職業に早期に再就職した場合に支給されるお祝い金のような手当です。
- 主な支給条件:
- 基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められる職業に就いたこと。
- 離職前の事業主に再び雇用されたものではないこと(密接な関連のある事業主も含む)。
- 待期期間満了後に就職したこと。
- 過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと。
- (給付制限がある場合)待期期間満了後1ヶ月間は、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること。
- 支給額: 支給残日数や再就職日までの日数に応じて、基本手当日額に一定の給付率(60%または70%)を乗じた額が一括で支給されます。
- 手続き: 再就職先の会社から証明を受けた後、ハローワークに申請します。
【雇用保険から】スキルアップを支援する「教育訓練給付金」
働く方の主体的な能力開発の取り組みや中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的として、教育訓練を受講し修了した場合に、その費用の一部が支給される制度です。
- 種類:
- 一般教育訓練給付金: 幅広い職種で役立つスキルや資格取得のための講座が対象。受講費用の20%(上限10万円)。
- 特定一般教育訓練給付金: 速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する講座が対象。受講費用の40%(上限20万円)。
- 専門実践教育訓練給付金: 中長期的なキャリア形成を支援する専門的・実践的な訓練(専門学校の課程や大学院など)が対象。受講費用の最大70%(年間上限あり)。
- 対象者: 雇用保険の被保険者(または被保険者であった方)で、一定の支給要件を満たす方。
- 手続き: 受講開始前にハローワークで支給要件照会を行い、受講修了後に申請します。専門実践教育訓練の場合は、受講開始前の手続きがより重要になります。
【雇用保険から】その他の給付金・手当
状況に応じて、雇用保険からは上記以外にも以下のような給付が受けられる場合があります。
- 就業促進定着手当: 再就職手当を受給した方で、再就職先での賃金が離職前の賃金より低い場合に、その差額の一部が最長6ヶ月分支給されることがあります。
- 就業手当: 基本手当の受給資格がある方で、再就職手当の支給対象とならないような形態(パートタイムなど)で早期に就業した場合に支給されることがあります(※2025年4月1日以降に就職等をした方については廃止予定とされています)。
- 傷病手当(雇用保険): 基本手当の受給資格者が、離職後、ハローワークでの求職申込み後に病気やケガのために15日以上引き続き職業に就くことができなくなった場合に、基本手当の代わりに支給されます(健康保険の傷病手当金とは異なります)。
- 広域求職活動費・移転費: ハローワークの紹介により遠方の事業所を訪問して求人者と面接等をした場合の交通費や宿泊費(広域求職活動費)、またはハローワークの紹介した職業に就くため、もしくはハローワークの指示した公共職業訓練等を受けるために住所を変更する場合の移転費用(移転費)が支給されることがあります。
【健康保険から】病気やケガで働けない時の「傷病手当金」
健康保険の被保険者(会社員など)が、業務外の病気やケガのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あったうえで、4日目以降、休んだ日に対して支給される手当です(退職後も一定の条件を満たせば継続して受けられる場合があります)。
- 主な支給条件:
- 業務外の病気やケガで療養中であること。
- 働くことができない状態であること。
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと。
- 給与の支払いがないこと(ただし、給与が支払われても、傷病手当金の額より少ない場合はその差額が支給されます)。
- 支給額: おおよそ、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額。
- 支給期間: 同一の傷病について、支給を開始した日から通算して1年6ヶ月。
- 手続き: 加入している健康保険組合や協会けんぽに申請します。医師の証明が必要です。
【その他】会社が倒産した場合などの「未払賃金立替払制度」
企業の倒産などにより、賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を国が事業主に代わって立替払いする制度です。
- 対象者: 企業の倒産(法律上の倒産、事実上の倒産)の日の6ヶ月前の日から2年の間に退職した労働者で、未払賃金がある方。
- 立替払いの対象となる賃金: 定期賃金と退職手当のうち未払いのもの。
- 手続き: 独立行政法人労働者健康安全機構に請求します。
お金に関する手続きの注意点
これらの給付金や手当は、自動的に支給されるものではありません。ご自身で制度を理解し、必要な手続きを期限内に行う必要があります。
- 必ず最新情報を確認する: 制度の内容や支給条件は変更されることがあります。ハローワークのウェブサイトや窓口、加入している健康保険組合、年金事務所などで最新の情報を確認しましょう。
- 申請期限を守る: 多くの給付金には申請期限が設けられています。期限を過ぎると受給できなくなる場合があるので注意が必要です。
- 必要書類を準備する: 各手続きには、離職票やマイナンバーカード、医師の証明書など、様々な書類が必要になります。事前に確認し、漏れなく準備しましょう。
- 正直に申告する: 虚偽の申告は不正受給となり、ペナルティが科される場合があります。
まとめ
転職や退職の際には、様々な公的支援制度を利用できる可能性があります。これらの制度を上手に活用することで、経済的な不安を軽減し、安心して次のステップに進むことができるでしょう。
ご自身の状況をよく確認し、利用できる可能性のある制度について、まずはハローワークや関係機関に相談してみることをお勧めします。この記事が、あなたの新しいキャリアへの移行を少しでもサポートできれば幸いです。