転職時の「健康診断」どうなる?提出の必要性・タイミング・注意点まで徹底解説!
転職活動を進める中で、企業から「健康診断書」の提出を求められることがあります。「転職で健康診断って必要なの?」「いつ、どんなものを用意すればいいの?」「もし結果が悪かったら、選考に影響するの?」――そんな疑問や不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
健康診断は、あなた自身の健康状態を把握するだけでなく、企業が従業員の健康管理や安全配慮を行う上で重要な情報となります。しかし、その取り扱いや提出タイミング、選考への影響については、正しい知識を持っておくことが大切です。
この記事では、転職活動における健康診断の必要性から、提出を求められるタイミング、必要な書類の種類、費用負担、そして結果が選考に与える影響やプライバシーの保護に至るまで、あらゆる角度から分かりやすく解説します。健康診断に関する疑問を解消し、安心して転職活動を進めるための一助となれば幸いです。
(※重要:健康診断に関する企業の具体的な対応や指示は、応募する企業によって異なります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、必ず応募企業の指示に従い、不明な点は直接企業の人事・採用担当者にご確認ください。)
なぜ転職で健康診断?企業が求める理由と法的背景
まず、なぜ企業が転職希望者に対して健康診断書の提出を求めるのか、その理由と背景を理解しておきましょう。
企業が健康診断書を求める主な目的
企業が健康診断書の提出を求める主な目的は、以下の通りです。
- 入社後の健康管理のため: 新しく入社する社員の健康状態を把握し、入社後の健康管理や適切な業務配置に役立てる。
- 業務への適性の判断材料の一つとして: 募集している職務を安全かつ支障なく遂行できる健康状態であるかを確認する(ただし、健康状態のみを理由とした不採用は原則として不当です)。
- 企業側の安全配慮義務の履行: 企業には、従業員が安全で健康に働けるように配慮する「安全配慮義務」があります。その一環として、入社時の健康状態を把握することが求められる場合があります。
- 感染症予防など、他の従業員への配慮。
労働安全衛生法と雇入時の健康診断
労働安全衛生規則第43条では、事業者に対し、常時使用する労働者を雇い入れる際に、医師による健康診断を行うことを義務付けています。これを「雇入時の健康診断」と言います。そのため、多くの企業が内定後から入社前のタイミングで、この雇入時健康診断の受診、またはそれに代わる健康診断書の提出を求めています。
(重要)企業の指示を最優先に確認
繰り返しになりますが、健康診断に関する具体的な指示(提出の要否、タイミング、検査項目、有効期限など)は、応募する企業によって異なります。必ず企業の採用担当者からの指示をよく確認し、それに従うようにしてください。
転職活動中、健康診断書の提出はいつ求められる?
健康診断書の提出を求められるタイミングは、企業や選考状況によって異なります。
一般的には「内定後~入社前」が多い
最も一般的なのは、内定が出てから入社するまでの間に提出を求められるケースです。これは、前述の「雇入時の健康診断」の実施義務に基づいていることが多いためです。内定通知と共に、健康診断に関する案内があるか、入社手続きの書類に含まれていることが多いでしょう。
選考段階で求められるケースは稀
書類選考や面接といった選考の初期段階で、健康診断書の提出を求められることは稀です。応募者の健康状態はデリケートな個人情報であり、選考の初期段階で収集することは、職業安定法で定める「社会的差別に繋がるおそれのある個人情報」の収集に該当する可能性があるため、企業側も慎重に対応します。
企業によってタイミングは異なる
ただし、職種(例:食品関係、運輸関係、保育関係など、特定の健康状態が業務遂行に直接影響する可能性のある職種)や企業の規定によっては、選考の最終段階に近いタイミングで提出を求められることもあり得ます。
どんな健康診断結果を提出する?種類と有効期限
企業から健康診断書の提出を求められた場合、どのようなものを用意すれば良いのでしょうか。
一般的に認められる健康診断の種類
- 直近の定期健康診断の結果(会社で受けたものなど): 在職中の方であれば、会社で毎年受けている定期健康診断の結果のコピーを提出することで代用できる場合があります。
- 雇入時健康診断(新たに受診する場合): 企業が指定する検査項目を含んだ「雇入時の健康診断」を、入社前に新たに受診し、その結果を提出するよう指示されることもあります。この場合の検査項目は、労働安全衛生規則で定められた項目が基本となります。
- 人間ドックや個人で受けた健康診断の結果: これらの結果でも、企業が求める検査項目を満たしていれば認められることがあります。
どの種類の健康診断結果が有効かは、必ず応募企業に確認しましょう。
健康診断書の有効期限は?(一般的に3ヶ月~1年以内)
提出する健康診断書の有効期限について、法律で明確な定めはありませんが、多くの企業では**「受診日から3ヶ月以内」**のものを求める傾向にあります。長くても6ヶ月以内、場合によっては1年以内のものを認める企業もありますが、健康状態は変化するため、できるだけ直近の結果を提出するのが望ましいでしょう。企業から特に指定がない場合は、3ヶ月以内を目安に考えると良いでしょう。
企業が指定する検査項目がある場合も
企業によっては、労働安全衛生規則で定められた雇入時健康診断の必須項目に加え、業務の特性に応じて追加の検査項目を指定することがあります。その場合は、指定された項目を全て満たす健康診断結果を用意する必要があります。
健康診断を受ける場所と費用負担について
健康診断を新たに受ける必要がある場合、どこで受け、費用は誰が負担するのでしょうか。
自分で医療機関を手配する場合
企業から特に指定がなく、自分で医療機関を探して受診する場合は、近隣の病院やクリニック、健診センターなどに問い合わせて予約します。その際、「雇入時健康診断を受けたい」「〇〇という検査項目を含めてほしい」など、目的と必要な検査項目を明確に伝えましょう。
企業が医療機関を指定する場合
企業によっては、提携している医療機関や、特定のクリニックを指定されることがあります。その場合は、企業の指示に従って受診します。
費用は自己負担?企業負担?
雇入時の健康診断の費用負担については、法律で明確な定めはありません。そのため、企業によって対応が異なります。
- 企業が負担する場合: 企業が費用を全額または一部負担してくれるケースです。企業指定の医療機関で受診する場合や、後日領収書を提出して精算する形などがあります。
- 自己負担の場合: 応募者が費用を負担するケースです。
費用負担については、事前に必ず企業の採用担当者に確認しましょう。自己負担の場合、費用は医療機関や検査項目によって異なりますが、一般的に数千円から1万数千円程度かかることが多いようです。
健康診断の結果は選考や内定に影響する?
多くの方が最も気になるのが、健康診断の結果が選考や内定にどう影響するのかという点でしょう。
原則として健康状態のみを理由とした不採用は不当
職業安定法では、業務の遂行に必要不可欠な場合を除き、応募者の健康状態や既往歴などを理由に採用の可否を決定することは、就職差別につながるおそれがあるとして、慎重な取り扱いを求めています。そのため、原則として、健康診断の結果のみを理由に不採用としたり、内定を取り消したりすることは不当とされています。
業務遂行に重大な支障があると判断される場合
ただし、健康診断の結果、応募者の健康状態が募集している職務の遂行に客観的に見て重大な支障があると判断されたり、他の従業員や顧客の安全・健康に著しい影響を与える可能性があると合理的に判断されたりする場合には、採用が見送られたり、内定が取り消されたりする可能性もゼロではありません。
正直に申告することの重要性
もし持病がある場合や、健康面で不安な点がある場合は、隠さずに正直に企業に伝えることが大切です。その上で、業務に支障がないことや、必要な配慮事項などを相談し、企業側の理解を得る努力をしましょう。虚偽の申告は、後々より大きな問題に繋がる可能性があります。
企業側の安全配慮義務との関連
企業は従業員の安全と健康に配慮する義務があります。健康診断の結果は、その義務を果たすためにも活用されます。
健康診断結果のプライバシーは守られる?
健康診断結果は、非常にデリケートな個人情報です。その取り扱いについては、法律で厳しく定められています。
個人情報保護法の適用
健康診断結果は個人情報保護法の対象であり、企業は適切に取り扱い、本人の同意なく第三者に提供することはできません。
企業における取り扱いルール
企業は、健康診断結果の保管方法やアクセス権限などを社内規定で定め、厳重に管理する義務があります。また、健康情報を理由とした不当な差別を行わないことも求められています。
転職活動中の健康管理のすすめ
転職活動は、精神的にも体力的にもエネルギーを消耗するものです。自身の健康管理も、活動を成功させるための重要な要素です。
体調を整えて選考に臨む
十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、万全の体調で書類作成や面接に臨めるようにしましょう。体調が優れないと、集中力が低下したり、面接で本来の力を発揮できなかったりする可能性があります。
定期的な健康診断の受診の習慣
転職活動の有無に関わらず、定期的に健康診断を受け、自身の健康状態を把握しておくことは非常に大切です。もし企業から健康診断書の提出を求められた際に、直近の結果があればスムーズに対応できます。
転職時の健康診断に関するQ&A
最後に、転職時の健康診断に関するよくある質問をまとめました。
Q1: 健康診断書の提出を拒否できる?
A1: 企業が「雇入時の健康診断」として提出を求める場合、労働安全衛生法に基づくものであり、正当な理由なく提出を拒否することは難しいと考えられます。ただし、その目的や検査項目、プライバシーの取り扱いなどについて企業に説明を求め、納得した上で提出することが望ましいでしょう。不安な点があれば、正直に相談してみましょう。
Q2: 結果が悪かった場合、どうすればいい?
A2: まずは落ち着いて、医師の指示に従いましょう。もし再検査や治療が必要な場合は、速やかに対応します。企業に提出する際には、正直に結果を伝え、現在の状況や今後の見通し、業務への支障の有無などを具体的に説明することが大切です。必要であれば、医師の診断書や意見書を添付すると、企業側の理解を得やすくなります。
Q3: 以前の会社の健康診断結果を紛失してしまったら?
A3: まずは以前の会社の人事・総務担当者に問い合わせてみましょう。再発行してもらえる可能性があります。それが難しい場合は、応募企業にその旨を伝え、どのように対応すれば良いか指示を仰ぎましょう。場合によっては、新たに健康診断を受ける必要があるかもしれません。
Q4: 入社前に受ける「雇入時健康診断」とは?
A4: 労働安全衛生規則で事業者に義務付けられている、常時使用する労働者を雇い入れる際に行う健康診断です。検査項目は法律で定められており、既往歴や業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の有無、身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査、胸部エックス線検査、血圧測定、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査、心電図検査などが含まれます。
まとめ:健康診断の疑問を解消し、安心して転職活動を進めよう
転職活動における健康診断書の提出は、多くの企業で求められるプロセスの一つです。その目的やタイミング、必要な書類の種類などを正しく理解し、早めに準備しておくことで、スムーズに対応することができます。
健康診断の結果について過度に不安になる必要はありませんが、もし気になる点があれば、正直に企業に伝え、相談する姿勢が大切です。あなた自身の健康を守りつつ、企業との信頼関係を築きながら、安心して新しいキャリアへの一歩を踏み出せるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。