転職活動中の「つなぎバイト」どうする？賢い選び方と注意点

「次の仕事が決まるまでの生活費が心配…」「無職の期間を少しでも短くしたい」「社会との繋がりを保ちたい」――。転職活動中、特に退職してから次の仕事を探す場合に、収入や社会との接点を確保するために「つなぎのアルバイト」を考える方は少なくありません。

計画的に行えば、つなぎのアルバイトは経済的な安心感を得ながら、じっくりと希望の転職先を探すための有効な手段となり得ます。しかし、アルバイト選びや働き方を間違えると、本来の目的である転職活動に支障が出てしまう可能性も。この記事では、転職活動中につなぎのアルバイトをするメリット・デメリット、賢いアルバイトの選び方、そして社会保険や税金に関する注意点などを分かりやすく解説します。

なぜ転職活動中に「つなぎのバイト」を考えるのか？

転職活動中につなぎのアルバイトを検討する背景には、主に以下のような理由が挙げられます。

• 生活費の確保: これが最も大きな理由でしょう。退職後の収入がない期間の生活費（家賃、食費、光熱費など）や、転職活動にかかる費用（交通費、スーツ代など）を賄うため。
• 社会との接点の維持・孤独感の軽減: 一人で転職活動をしていると、社会から孤立したような感覚に陥ることがあります。アルバイトを通じて人と接することで、社会との繋がりを感じ、精神的な安定を得たいという思い。
• 仕事のブランク期間を短縮したいという心理: 職務経歴に空白期間ができることへの不安から、アルバイトでも何らかの形で働いている状態を維持したいと考える。
• 生活リズムの維持: 時間的な制約がなくなることで生活リズムが乱れがちになるのを防ぎ、規則正しい生活を送るため。
• 体力・気力の維持: 適度に体を動かしたり、人とコミュニケーションを取ったりすることが、心身の健康維持に繋がることも。
• 新しいスキルや経験の獲得（短期的な視点で）： 次の仕事に直接繋がらなくても、短期間で新しい業務に触れたり、異なる業界を経験したりする機会として捉える。
• 気分転換・ストレス解消: 転職活動のプレッシャーから一時的に解放され、気分転換を図りたい。

転職活動中の「つなぎバイト」：メリットとデメリット

つなぎのアルバイトには、良い側面と注意すべき側面の両方があります。

メリット

• 経済的な安定と精神的な余裕: 生活費の心配を軽減できるため、焦らずにじっくりと希望の転職先を選ぶことができます。「早く決めなければ」というプレッシャーが和らぎます。
• 社会との接点の維持: 人と関わることで孤独感を和らげ、社会との繋がりを保つことができます。
• 生活リズムの維持: 定期的に働くことで、規則正しい生活リズムを維持しやすくなります。
• 体力・気力の維持: 適度に体を動かすことは、心身の健康維持にも繋がります。
• 職務経歴の空白期間を短く見せられる（場合による）: アルバイトであっても、働いていた事実を伝えることで、空白期間に対する企業の懸念を和らげられる可能性があります。
• 新しい経験やスキルの獲得（場合による）: 短期間であっても、新しい業務に触れることで視野が広がったり、思わぬスキルが身についたりすることがあります。

デメリット

• 転職活動に充てる時間が制約される: これが最大のデメリットです。アルバイトに時間を取られることで、企業研究や応募書類の作成、面接対策といった本来の転職活動に十分な時間を割けなくなる可能性があります。
• 体力的な負担の増加: 転職活動とアルバイトを両立させるのは、体力的に大きな負担となることがあります。疲労が蓄積し、転職活動への集中力が低下する可能性も。
• 面接日程の調整が難しくなる: アルバイトのシフトによっては、平日の日中に行われることが多い企業の面接日程と調整がつきにくくなることがあります。急な面接依頼に対応できないことも。
• 企業側の印象（伝え方による）: 応募先の企業によっては、「アルバイトに時間を取られて、本気で転職活動をしていないのでは？」「長期的なキャリアプランがないのでは？」といった懸念を抱かれる可能性もゼロではありません。
• 「アルバイトで十分」という意識に繋がるリスク: アルバイトで一定の収入が得られるようになると、転職活動への意欲や危機感が薄れてしまう可能性も考慮が必要です。
• 社会保険や税金の手続きが煩雑になる場合がある: アルバイトの収入や働き方によっては、社会保険の加入や確定申告など、自分で行うべき手続きが増えることがあります。

「つなぎバイト」の賢い選び方：転職活動を最優先に

もしつなぎのアルバイトをすると決めた場合、どのような点に注意して仕事を選べば、転職活動への影響を最小限に抑えつつ、メリットを享受できるのでしょうか。

1. シフトの柔軟性が高いこと:
   • 最重要ポイントです。 急な面接日程にも対応できるよう、シフトの変更や欠勤が比較的容易なアルバイトを選びましょう。
   • 短期間・単発のアルバイトや、週1～3日程度の勤務、あるいは自分で働く時間をコントロールしやすい仕事（例：フリーランス型の業務委託など、ただしスキルが必要）も検討対象です。
2. 勤務時間・日数が無理のない範囲であること:
   • 転職活動に十分な時間を確保できるよう、アルバイトの時間は週に20時間未満に抑えるなど、無理のない範囲に留めましょう。
3. 勤務地が自宅から近い、または通勤の負担が少ないこと:
   • 通勤に時間がかかりすぎると、それだけで体力を消耗し、転職活動への時間を圧迫します。
4. 体力的な負担が少ない仕事を選ぶ:
   • 転職活動には体力も必要です。アルバイトで疲弊してしまわないよう、肉体的な負担が比較的少ない仕事を選ぶことも大切です。
5. 精神的なストレスが少ない仕事を選ぶ:
   • 人間関係が複雑だったり、クレーム対応が多かったりするような、精神的なストレスが大きいアルバイトは、転職活動へのモチベーション低下に繋がる可能性があるため、避けた方が無難です。
6. 可能であれば、次のキャリアに少しでも関連する経験が得られるもの:
   • 必須ではありませんが、もし次のキャリアで活かせるようなスキルや経験が少しでも得られるアルバイトであれば、一石二鳥です。例えば、IT業界を目指しているならIT関連の軽作業やデータ入力、事務職を目指しているなら書類整理や電話応対といった経験は、面接で話せる材料になるかもしれません。
7. 社会保険の加入条件を確認する:
   • アルバイトの勤務時間や日数によっては、社会保険（健康保険・厚生年金保険）の加入対象となる場合があります。その場合の手続きや保険料負担について、事前に確認しておきましょう。

転職活動中の「つなぎバイト」と社会保険・税金

つなぎのアルバイトの収入や働き方によっては、社会保険や税金の手続きが必要になります。

社会保険（健康保険・厚生年金保険）

• アルバイト先での加入義務: アルバイト先でも、一定の条件（一般的に、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上、2ヶ月を超える雇用見込みがある、学生ではないなど）を満たす場合は、社会保険への加入義務が発生します。
• 国民健康保険・国民年金との関係: 退職後に国民健康保険や国民年金に加入している場合、アルバイト先で社会保険に加入すると、そちらが優先されます。切り替えの手続きが必要になる場合があります。
• 扶養に入っている場合: 配偶者などの扶養に入っている場合、アルバイト収入が一定額を超えると扶養から外れ、自分で社会保険に加入する必要が出てきます。

雇用保険

• アルバイト先での加入条件: アルバイト先で「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込み」がある場合は、雇用保険の加入対象となります。
• 失業保険（基本手当）受給中の方の注意点: 失業保険を受給しながらアルバイトをする場合は、ハローワークへの申告が必須です。収入額や労働時間によっては、基本手当が減額されたり、支給されなかったりすることがあります。必ず事前にハローワークに確認し、ルールを守りましょう。

税金（所得税・住民税）

• アルバイト収入も課税対象: アルバイトで得た収入も所得となり、所得税や住民税の課税対象となります。
• 確定申告が必要な場合:
  • 年間の給与所得以外の所得（アルバイト収入など）が20万円を超える場合。
  • アルバイト先で源泉徴収がされていない、あるいは年末調整が行われない場合。
  • 複数の会社から給与を得ていて、年末調整を受けなかった給与がある場合。 このような場合は、翌年に自身で確定申告を行い、所得税を納付（または還付）する必要があります。
• 住民税: アルバイト収入によって所得が増えれば、翌年度の住民税額にも影響します。

面接で「つなぎバイトをしていたこと」を伝えるべき？

もし面接でブランク期間（無職期間）について尋ねられた際に、つなぎのアルバイトをしていたのであれば、正直に伝えて問題ありません。

• 伝え方のポイント:
  • 正直かつ簡潔に: 「生活費のため、また社会との接点を保つために、〇〇のアルバイトをしておりました」といった形で、簡潔に事実を伝えましょう。
  • 転職活動への影響がなかったことを強調: 「アルバイトは週に〇日、〇時間程度に留め、残りの時間は企業研究や応募書類の作成、面接対策など、転職活動に集中的に取り組んでおりました」というように、あくまで転職活動が優先であったことを明確に伝えます。
  • もしアルバイト経験が次の仕事に活かせるならアピール: 「〇〇のアルバイトを通じて、△△という新しいスキルを学ぶ機会があり、これは貴社での□□の業務にも活かせると考えております」といった形で、ポジティブな経験として語れると良いでしょう。
  • ネガティブな印象を与えないように: 「転職活動が長引いて生活に困ったので…」といった、追い詰められたような表現は避けましょう。

まとめ：「つなぎバイト」は計画的に、本命の転職活動を最優先に

転職活動中の「つなぎのアルバイト」は、経済的な安定を確保し、精神的な余裕を持って転職活動に取り組むための有効な手段となり得ます。しかし、それが本来の目的である「希望の会社への転職」を妨げるものであってはなりません。

最も大切なのは、なぜつなぎのアルバイトをするのか、その目的を明確にし、転職活動に支障が出ない範囲で、計画的に行うことです。シフトの柔軟性や体力的な負担、そして社会保険や税金の手続きなども考慮に入れ、自分にとって最適なバランスを見つけましょう。

この記事が、あなたが転職活動とアルバイトを賢く両立させ、後悔のない、そしてより良い未来へと繋がるキャリアチェンジを実現するための一助となれば幸いです。

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岩下隼人

ロイヤル合同会社　代表

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。