東京・御蔵島村で事務職へ転職？イルカと原生林の島、求人事情と究極の島暮らし

東京都心から南へ約200km、伊豆諸島の一つに浮かぶ御蔵島村。野生のミナミハンドウイルカが島の周囲に定住し、一緒に泳ぐことができる世界的にも稀有な場所として知られています。また、オオミズナギドリの繁殖地であり、島の大部分が豊かな原生林に覆われ、巨樹が生い茂るなど、手つかずの貴重な自然が残る島です。そんな唯一無二の自然環境に抱かれた御蔵島村で、事務職としてのキャリアを考えたり、都会の喧騒を完全に離れた暮らしを送りながら働きたいと願う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、まず最も重要な点として、御蔵島村で事務職の求人を見つけることは、他のどの地域と比較しても極めて、極めて困難であるという現実を深く理解しておく必要があります。島の人口は約300人程度と非常に少なく、産業構造も特殊であるため、事務専門の職の需要はほぼ皆無に近いと言っても過言ではありません。この記事では、東京・御蔵島村における事務職の求人の可能性や、この島で働くことの魅力と考慮すべき厳しい側面、そして万が一にも可能性があるとすれば、どのように情報を探すべきかについて、現実的な視点から詳しく解説します。

御蔵島村における事務職の求人の特徴

御蔵島村の主な産業は、野生のイルカウォッチング・スイムを中心としたエコツーリズム、そして伝統的な林業（特にツゲ材）、小規模な漁業です。企業の数自体がごくわずかで、そのほとんどが家族経営に近い小規模なものです。そのため、事務職という専門職の求人が出ることは、まずないと考えていただくのが現実的です。

もし、何らかの形で事務作業に関わる仕事の可能性を探るとすれば、以下のごくごく限られたケースが考えられる程度です。

• 求人がほぼ存在しない、あるいは全くない可能性が高いことを、再度強く認識してください。
• 村役場や公共施設での超短期・臨時・パート職員: 御蔵島村役場、診療所、保育園、小中学校といった公共性の高い施設で、急な欠員が出た場合や特定の繁忙期などに、ごく稀に数日から数週間程度の超短期的な臨時職員やパートタイムの事務補助の募集が出る可能性が、ゼロとは言い切れません。
• イルカウォッチング・スイムツアー催行事業者や民宿での兼務: 島には数軒のイルカウォッチング・スイムツアーを催行する事業者や民宿があります。これらの事業所では、オーナーや家族が事務作業も兼ねているのが通常ですが、繁忙期に限り、電話応対、予約管理、簡単な経理といった事務作業を、船の準備や清掃、接客、ガイド業務などと兼務する形での募集が、ごくごく稀に出るかもしれません。
• 森林組合や島の生活に必要なごく小規模な商店などでの事務補助: 島の基幹産業である林業に関わる森林組合や、島民の生活を支える数少ない商店などで、経理や書類作成といった事務作業を手伝う人材が必要とされる可能性も、理論上はありますが、求人として表に出ることはほとんどないでしょう。

もし仮に何らかの事務作業を伴う仕事に関わる場合に求められる資質：

• 島での生活への完全な適応力と、自然と共に生きる覚悟: 何よりもまず、御蔵島の厳しい自然環境、不便な生活、そして閉鎖的なコミュニティを受け入れ、そこで生活していくという強固な意志と覚悟が求められます。
• 自然保護への強い意識と理解: 御蔵島の自然は非常にデリケートであり、島のルールや自然保護への深い理解と実践が不可欠です。
• 地域コミュニティへの積極的な貢献意欲: 島の行事や共同作業への参加は当然のこととして、地域の一員として積極的に関わり、貢献する姿勢が強く求められます。
• 自律性と極めて高いマルチタスク能力: 少人数で全てを賄っているため、指示を待つのではなく自ら考えて行動できる自律性と、事務作業だけでなく、掃除、接客、力仕事など、あらゆる業務に対応できる柔軟性とマルチタスク能力が必須です。
• 「事務職」というこだわりを捨てる覚悟: 事務専門の仕事は期待できません。島の生活を支えるあらゆる仕事に関わる中で、一部事務作業がある、という程度の認識が必要です。

御蔵島村で事務職に転職するメリット（もし仕事が見つかり、かつ生活が成り立てば）

求人を見つけることが極めて困難であることを前提とした上で、もし御蔵島村で働き、生活する機会が得られたならば、それは他では決して得られない、究極とも言えるメリットを享受できるかもしれません。

• 野生のイルカと日常的に触れ合える可能性: イルカと泳ぐことを夢見る人にとっては、まさに楽園のような環境です。
• 手つかずの豊かな大自然の中での生活: 巨樹が生い茂る原生林、透明度の高い海、満天の星空など、日常的に圧倒的な大自然に抱かれて生活できます。
• 極めて小さなコミュニティならではの濃密な人間関係: 島民全員が顔見知りという非常に小さな社会で、家族のような温かい人間関係を築ける可能性があります（ただし、これはデメリットにもなり得ます）。
• 本当の意味でのスローライフ、都会の価値観からの解放: 時間に追われる都会の生活とは全く異なる、ゆったりとした時間の中で、自然のリズムに合わせたシンプルな暮らしを送ることができます。

御蔵島村で事務職に転職する際に考慮すべき点（デメリット）

御蔵島村での生活と仕事は、その比類なき自然環境と引き換えに、想像を絶するほどの厳しさや不便さが伴います。安易な憧れだけで移住・転職を考えることは絶対に避けるべきです。

• 求人がほぼない、見つけるのが極めて困難: これが最大の、そしてほぼ決定的なデメリットです。事務職という職種に限定すれば、その可能性は限りなくゼロに近いと認識してください。
• 給与水準は期待できず、生活を維持できるかどうかが課題: たとえ何らかの仕事が見つかったとしても、それで安定した収入を得て生活を維持していくことは非常に困難である可能性が高いです。
• キャリア形成という概念はほぼ通用しない: 事務スキルを磨いたり、キャリアアップを目指したりするという考え方は、御蔵島ではほぼ通用しません。
• 交通の便が極めて限られ、かつ不安定: 本土との主な交通手段は、ヘリコプター（東京愛らんどシャトル）と定期船（客船「橘丸」または「さるびあ丸」）のみです。どちらも便数が少なく、特に船は天候に大きく左右され、就航率は他の伊豆諸島と比較しても低いことで知られています。数日間、島に閉じ込められることも珍しくありません。島内の移動も、公共交通機関はなく、徒歩か自家用車、原付バイクが必須ですが、道は険しいです。
• 生活インフラ（商店、医療機関、娯楽施設、インターネット環境など）が極めて脆弱: 日常の食料品や日用品を購入できる商店はごくわずかで、品揃えも限られています。医療機関は診療所のみで、重篤な病気や怪我の場合は本土へのヘリ搬送となります。娯楽施設は皆無に等しく、インターネット環境も都心部と同レベルは期待できません。
• 物資の入手が非常に困難で、物価が非常に高い: ほとんどの物資を本土からの輸送に頼っているため、輸送コストが上乗せされ、物価は非常に高くなります。欲しいものがすぐに、そして安価に手に入るという都会の常識は通用しません。
• 極めて閉鎖的で濃密なコミュニティへの適応: 温かい人間関係が期待できる反面、島全体が一つの家族のような社会であり、プライバシーの確保はほぼ不可能です。移住者に対する視線も存在し、地域独特のルールや慣習、濃密な人間関係に馴染むための相当な努力と覚悟が必要です。
• 自然災害のリスク: 台風の通り道であり、高波による船の欠航で長期間孤立するリスクは常にあります。また、急峻な地形のため土砂災害のリスクも考慮しなければなりません。
• 「事務職」という専門性を活かせる場面はほぼない: たとえ事務経験が豊富でも、それを専門的に活かせる仕事は期待できません。

御蔵島村で（万が一にも）希望の事務職求人を見つけるためのポイント

御蔵島村での事務職の求人探しは、宝くじに当たるよりも難しいかもしれません。それでも可能性を探りたいという強い意志があるならば、以下の極めて限定的な方法を試みることになります。

• 村役場に直接問い合わせ、移住や仕事に関する情報を得るのが唯一に近い手段: 御蔵島村役場のウェブサイトを隅々まで確認し、職員募集（特に臨時やパート）の情報が出ていないか、移住相談窓口のようなものがないかを確認しましょう。そして、直接役場に電話やメールで問い合わせ、求人の可能性や島での生活について尋ねてみるのが、最も現実的な第一歩です。
• ハローワーク（本土の管轄ハローワーク）での求人は期待できないと考えた方が良い: 御蔵島村を管轄するハローワーク（通常は本土側）に事務職の求人が出ることは、まず考えられません。
• 御蔵島観光協会や島の事業者に直接コンタクトを取る: 御蔵島観光協会のウェブサイトなどを確認し、掲載されている宿泊施設やツアー催行事業者に、人手が必要かどうか、ボランティアや手伝いからでも関われないか、直接問い合わせてみるという方法も考えられます。ただし、相手方の迷惑にならないよう、節度を持った行動が不可欠です。
• 「事務職」にこだわらず、島で「できること」「求められること」に目を向ける: 事務という職種に固執していては、まず仕事は見つかりません。イルカのガイド、民宿での接客や調理補助、清掃、あるいは森林保全活動の手伝いなど、島で実際に人手が求められている可能性のある仕事に視野を広げ、その中で事務作業も一部手伝えるというスタンスが必要になるでしょう。
• 移住体験プログラムなどがあれば参加し、島の生活を深く理解する: もし村や関連団体が移住体験プログラムのようなものを実施していれば、それに参加して、観光では分からない島の生活の厳しさやコミュニティの実際を体験することが非常に重要です。
• 仕事を探すというより、「島で生きる方法」を模索する覚悟が必要: 御蔵島で暮らすということは、単に仕事を見つけるということではありません。自然と共に生き、地域コミュニティの一員として貢献し、不便さを受け入れ、自ら生活を切り拓いていくという、生き方そのものの選択です。
• 経済的な基盤（貯蓄など）をしっかり持った上で検討する: 島での仕事は不安定であり、収入も限られる可能性が高いため、当面の生活を支えられるだけの十分な貯蓄は必須です。

御蔵島村で考えられる事務職（ほぼ存在しないが、あえて挙げるなら）

繰り返しになりますが、事務専門の求人はほぼ期待できません。もし何らかの形で事務作業に関わる可能性があるとすれば、それは以下のような、極めて限定的で、かつ他の業務との兼務が前提となるようなケースでしょう。

• 村役場の臨時職員: ごく短期間の欠員補充や繁忙期の応援など、非常に稀なケース。
• 診療所の受付・事務補助: こちらも求人が出ることは極めて稀で、専門知識も必要。
• ごく小規模な民宿の予約管理・簡単な経理: ほとんどの場合、オーナーやその家族が全ての業務を兼務しています。

まとめ

東京・御蔵島村での事務職の求人は、現実的にほぼ皆無と言って差し支えありません。その手つかずの豊かな自然環境と、野生のイルカと触れ合えるという唯一無二の魅力は計り知れませんが、そこで生活し、働くということは、私たちが都市部で送る日常とは全く異なる、厳しい側面と隣り合わせです。

単なる「転職」という軽い気持ちで臨むべき場所ではなく、人生を賭けた「移住」と、島で「生きる」ということへの深い理解と覚悟が求められます。「事務職」という職種にこだわるのであれば、御蔵島は選択肢として非常に厳しいと言わざるを得ません。それでもなお、この島の自然と文化に強く惹かれ、地域の一員として貢献したいという揺るぎない意志をお持ちなのであれば、まずは観光で訪れ、島の現実を自分の目で見て、肌で感じ、そして村役場や島の人々と真摯に話し合うことから始めるべきでしょう。安易な憧れだけでは、決して成り立たない世界であることを、どうか心に留めておいてください。

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岩下隼人

ロイヤル合同会社　代表

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。