【事務職の転職面接】「苦労したこと」の質問にどう答える？好印象な回答例とNG例

転職面接でよく聞かれる質問の一つに、「これまでの仕事で苦労したことは何ですか？」というものがあります。事務職の面接でも、この質問は応募者の問題解決能力やストレス耐性、成長性などを見極めるために重要な役割を果たします。ネガティブな経験を語るようで戸惑うかもしれませんが、実はこれはあなたの強みや仕事への取り組み方をアピールできる絶好のチャンスです。この記事では、事務職の転職面接で「苦労したこと」について聞かれた際に、面接官に好印象を与えるための回答のポイントや具体的な例文、避けるべきNG例などを詳しく解説します。

なぜ面接で「苦労したこと（困難だったこと）」を聞かれるのか？質問の意図を理解しよう

まず、面接官がこの質問をする意図を理解することが、的確な回答を準備するための第一歩です。主な意図としては、以下のような点が挙げられます。

• 問題解決能力・課題発見能力の確認: 困難な状況に直面した際に、それをどのように捉え、解決するためにどのような行動を取ったのかを知りたい。
• ストレス耐性・精神的な強さの見極め: プレッシャーのかかる状況や予期せぬトラブルに対して、どのように対処し、精神的に乗り越えてきたのかを見たい。
• 仕事への取り組み方・価値観の把握: 困難に対して真摯に向き合う姿勢があるか、責任感を持って仕事に取り組むかなど、仕事に対する基本的なスタンスを知りたい。
• 経験から学ぶ姿勢・成長性の確認: 苦労した経験を通じて何を学び、それを次にどう活かそうとしているのか、成長のポテンシャルがあるかを見極めたい。
• 自社で同様の困難に直面した際の対応力の予測: 入社後、同様の困難な状況に陥った際に、どのように対処してくれるかを予測したい。

これらの意図を踏まえ、単に「大変だった」という感想ではなく、あなたの具体的な行動や学びを伝えることが重要です。

事務職の面接で「苦労したこと」を語る際の基本構成（STARメソッドなど）

「苦労したこと」を効果的に伝えるためには、話の構成が重要です。一般的に用いられるフレームワークとして「STARメソッド」があります。これに「学んだこと（Learned）」を加えると、より成長性をアピールできるでしょう。

• S (Situation): どのような状況だったのか いつ、どこで、どのような状況でその困難に直面したのか、背景を簡潔に説明します。
• T (Task): どのような課題・目標があったのか その状況において、あなたに課せられた課題や達成すべき目標は何だったのかを明確にします。
• A (Action): その課題に対して、あなたが具体的にどのような行動をとったのか 課題解決のために、あなたが主体的に考え、実行した行動を具体的に説明します。事務職であれば、PCスキルを駆使した、コミュニケーションを工夫した、業務フローを見直したなどが考えられます。
• R (Result): その行動の結果、どうなったのか あなたの行動によって、どのような結果が得られたのかを具体的に伝えます。数値化できる成果があれば、より説得力が増します。（例：業務時間が〇%削減できた、ミスが〇件減ったなど）
• L (Learned): その経験から何を学んだのか、今後にどう活かせるのか この経験を通じて得た教訓や学び、そしてそれを今後の仕事（特に応募先の企業で）にどのように活かしていきたいかを述べます。ここが最も重要なアピールポイントです。

この構成を意識することで、話が整理され、面接官に分かりやすく伝えることができます。

【事務職向け】「苦労したこと」の回答例文とポイント

ここでは、事務職の面接で想定される「苦労したこと」の具体的な回答例文と、アピールポイントを見ていきましょう。

ケース1：業務効率化・改善に関する苦労

• 例文: 「前職で、毎月末の請求書発行業務が手作業中心で非常に時間がかかり、残業が常態化していた時期に苦労いたしました（Situation）。このままでは担当者の負担が大きいだけでなく、ミスも発生しやすいと考え、業務効率化が課題だと感じました（Task）。そこで、まず既存の業務フローを詳細に洗い出し、Excelの関数やマクロを活用して自動化できる部分を特定しました。上司に改善案を提案し、承認を得て新しい請求書作成テンプレートとチェックリストを導入しました（Action）。結果として、請求書発行にかかる時間が約30%削減され、残業時間も大幅に減らすことができました。また、チェック体制を強化したことで、請求ミスも前年比で90%削減できました（Result）。この経験から、現状に疑問を持ち主体的に改善策を考え実行することの重要性と、PCスキルが業務効率化に大きく貢献することを学びました。貴社でも、常に業務改善の意識を持ち、効率的な事務業務に貢献したいと考えております（Learned）。」
• ポイント: 主体性、改善意欲、具体的なPCスキル、問題解決能力をアピールできます。具体的な数値で成果を示すと効果的です。

ケース2：複数業務の同時進行・納期管理に関する苦労

• 例文: 「以前、所属部署で複数のプロジェクトが同時に進行し、それぞれの資料作成や会議調整、データ入力といった事務作業が私に集中した時期が最も苦労いたしました（Situation）。各プロジェクトにはそれぞれ納期があり、いかに効率よく、かつ正確に業務を遂行するかが課題でした（Task）。そこで、まず全てのタスクをリストアップし、それぞれの緊急度と重要度から優先順位を明確にしました。そして、各担当者と密にコミュニケーションを取り、納期の再調整をお願いしたり、一部業務を他のメンバーに分担してもらえるよう交渉したりしました。また、隙間時間を活用して細切れの作業を進めるなど、時間管理を徹底しました（Action）。結果として、全ての業務を納期内に完了させることができ、プロジェクトの遅延を防ぐことができました（Result）。この経験から、困難な状況でも冷静に状況を分析し、計画的に業務を進めること、そして周囲と協力することの大切さを学びました。貴社でも、高い事務処理能力と調整力を活かして貢献したいです（Learned）。」
• ポイント: 計画性、マルチタスク能力、コミュニケーション能力、調整力、責任感をアピールできます。

ケース3：コミュニケーション・人間関係に関する苦労（伝え方に注意）

• 例文: 「前職で、営業部門と製造部門の間での情報伝達がうまくいかず、納期の遅延や仕様の誤解が生じることが頻繁にあり、その調整業務に苦労いたしました（Situation）。両部門の間に立ち、円滑なコミュニケーションを促進し、業務の滞りをなくすことが私の課題だと考えました（Task）。そこで、まず双方の担当者から個別にヒアリングを行い、誤解が生じやすいポイントや要望を把握しました。その上で、定期的な情報共有会議の開催を提案し、議事録を作成して双方に配布するようにしました。また、私自身が両部門の橋渡し役として、こまめに進捗状況を確認し、必要な情報を迅速に伝達するように努めました（Action）。結果として、部門間の誤解が減少し、納期遅延の件数も前月比で約20%削減することができました（Result）。この経験から、相手の立場を理解しようと努める傾聴力と、誤解を防ぐための明確な情報伝達の重要性を学びました。貴社でも、円滑なコミュニケーションを促進し、チームワークに貢献していきたいです（Learned）。」
• ポイント: 協調性、コミュニケーション能力、問題解決への積極性をアピールできます。重要なのは、特定の個人を非難したり、愚痴を言ったりするのではなく、あくまで「状況」や「仕組み」の問題として捉え、自分がどのように建設的に関わったかを伝えることです。

ケース4：新しい知識・スキルの習得に関する苦労

• 例文: 「現職で、会社が新しい会計システムを導入した際、短期間でその操作方法を習得し、全部署の経費精算フローを新システムに移行させる業務を担当した際に最も苦労しました（Situation）。旧システムからのデータ移行や、新しい操作方法の周知徹底、問い合わせ対応など、多岐にわたる業務を限られた時間で正確に行う必要がありました（Task）。まず、導入ベンダーが提供するマニュアルを熟読し、先行して操作研修に参加しました。そこで得た知識をもとに、社内向けの簡易マニュアルやFAQを作成し、各部署の代表者を集めた説明会を実施しました。また、導入初期は問い合わせが殺到することが予想されたため、ヘルプデスクの窓口を一時的に設置し、迅速に対応できる体制を整えました（Action）。結果として、大きな混乱もなく予定通り新システムへの移行を完了させることができ、移行後の問い合わせ件数も想定より少なく抑えることができました（Result）。この経験を通じて、新しい知識やスキルを積極的に学び、それを周囲に分かりやすく伝え、変化に柔軟に対応することの重要性を実感しました。貴社でも、新しい業務やシステムに対して前向きに取り組み、貢献していきたいです（Learned）。」
• ポイント: 学習意欲、向上心、適応力、周囲を巻き込む力をアピールできます。

ケース5：ルーティンワークの中でのモチベーション維持や改善の苦労

• 例文: 「以前担当していたデータ入力業務は、毎日同じ作業の繰り返しで、集中力を維持し、ミスなく続けることに苦労を感じた時期がありました（Situation）。単調な作業であっても、そのデータが会社の重要な意思決定に使われることを理解し、常に高い品質を保つことが私の役割だと考えました（Task）。そこで、作業中に小さな目標を設定したり、定期的に休憩を取って気分転換を図ったりすることで、集中力を維持する工夫をしました。また、入力ミスを防ぐために、入力パターンの分析やダブルチェックの仕組みを自身で考案し、実践しました。さらに、より効率的な入力方法はないかと考え、Excelのショートカットキーを覚えたり、入力フォームの改善提案を行ったりもしました（Action）。結果として、入力ミスを月平均で〇件以下に抑え、作業時間も以前より約10%短縮することができました（Result）。この経験から、どのような業務であっても目的意識を持ち、工夫次第で改善ややりがいを見いだせることを学びました。貴社でも、真摯に業務に取り組み、日々の業務改善にも貢献していきたいです（Learned）。」
• ポイント: 真面目さ、責任感、改善意欲、主体性をアピールできます。ルーティンワークが多い事務職だからこそ響くエピソードです。

「苦労したこと」の回答で事務職の面接官に響くアピールポイント

事務職の面接官に「この人を採用したい」と思わせるためには、以下の点を意識して回答に盛り込みましょう。

• 事務職に必要なスキルに繋げる: あなたの苦労話が、結果として事務職に求められる正確性、PCスキル、コミュニケーション能力、サポート力、段取り力といったスキルをどのように高めたのか、あるいは発揮したのかを明確に示しましょう。
• 具体的な行動と、そこから得た学びを明確に伝える: 単に「頑張った」ではなく、「何を」「どのように」行動し、その結果「何を学び」「次にどう活かせるのか」を具体的に語ることが重要です。
• ポジティブな姿勢で、成長に繋がったことを強調する: 苦労した経験をネガティブな出来事として捉えるのではなく、自己成長の糧になったという前向きな姿勢で語りましょう。
• 応募企業の求める人物像と関連付ける: 企業がどのような人材を求めているのかを事前に研究し、自分の経験や学びがその人物像と合致することをさりげなくアピールできると効果的です。

これは避けたい！「苦労したこと」のNGな回答例と注意点

一方で、以下のような回答は面接官にマイナスの印象を与えてしまう可能性があります。十分に注意しましょう。

• 愚痴や不平不満、他責にする内容: 「前の上司の指示が曖昧で苦労した」「同僚が協力的でなくて大変だった」など、他人や環境のせいにするような発言は避けましょう。問題解決能力がない、協調性がないと判断される可能性があります。
• 努力や工夫が見られない、単に「大変だった」というだけの話: 具体的な行動や学びが語られず、ただ辛かったという感想に終始してしまうと、アピールになりません。
• 事務職の適性を疑われるような内容: 「細かい作業が苦手で、データ入力に苦労しました」「電話応対が多くて精神的に辛かったです」など、事務職の基本的な業務に対する適性を疑われるような内容は避けるべきです。
• 嘘や作り話、誇張しすぎる話: 面接官は多くの応募者を見ているため、不自然な話や矛盾は見抜かれます。正直に、等身大の経験を語りましょう。
• 質問の意図を理解していない回答: 面接官が何を知りたいのかを考えず、的外れな話をしてしまうと、コミュニケーション能力が低いと見なされる可能性があります。
• 「特にありません」という回答: 仕事をしていれば何かしらの困難や課題に直面するはずです。「特にない」という回答は、仕事への主体性がない、あるいは面接の準備不足と捉えられかねません。

「苦労したこと」が思いつかない場合の対処法

「これといった大きな苦労話がない…」と悩む方もいるかもしれません。しかし、必ずしもドラマチックな出来事である必要はありません。

• 小さなことでも良いので、乗り越えた経験を掘り起こす: 日々の業務の中で、「ちょっと大変だったな」「どうすれば上手くいくだろう」と考え、工夫して乗り越えた経験はありませんか？些細なことでも、あなたの主体的な行動や学びがあれば立派なエピソードになります。
• 「苦労」を「課題」「挑戦」と捉え直してみる: 「苦労」という言葉に囚われず、これまであなたが「課題だと感じたこと」「新しいことに挑戦したこと」「目標達成のために努力したこと」などを振り返ってみましょう。
• 日常業務の中で工夫した点や改善した点を探す: 例えば、「資料のファイリング方法を改善して探しやすくした」「問い合わせ対応のマニュアルを作成して共有した」といった日常的な改善活動も、見方を変えれば課題解決の一環です。
• 失敗から学んだ経験も候補になる: 失敗経験そのものではなく、その失敗から何を学び、次にどう活かしたのかという点に焦点を当てれば、成長をアピールするエピソードになります。

まとめ：ピンチをチャンスに変えた経験を語り、成長力をアピールしよう！

事務職の転職面接における「苦労したこと」の質問は、あなたの問題解決能力や成長性、仕事への取り組み方をアピールできる絶好の機会です。ネガティブな経験を語るのではなく、それをどのように乗り越え、何を学んだのかという「プロセス」と「学び」に焦点を当て、前向きな姿勢で伝えることが重要です。

この記事で紹介したポイントや例文を参考に、あなた自身の言葉で、これまでの経験を効果的に伝えてください。事前の準備をしっかり行い、誠実な態度で面接に臨めば、きっと面接官にあなたの魅力が伝わるはずです。

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岩下隼人

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。