【事務から事務へ】ステップアップ転職を叶える！納得感のある「転職理由」の伝え方

日々の業務を通じて企業活動を円滑に支える事務職は、多くの組織にとって不可欠な存在です。事務職として経験を積んできた方が、さらなるスキルアップやキャリアアップ、あるいはより自分に合った労働環境や働きがいを求めて、同じ事務職のフィールドで新たな職場を探す「事務から事務への転職」は、決して珍しいことではありません。

これまでの経験やスキルを直接的に活かせるというメリットがある一方で、採用担当者に「なぜ今の（あるいは前の）事務の仕事ではダメだったのか？」「うちの会社でなければならない理由は何か？」という点を明確に、かつ前向きに伝える「転職理由」が、採用の可否を左右する重要なポイントとなります。この記事では、事務職から事務職への転職を目指す方に向けて、採用担当者に納得感を与え、あなたの魅力を最大限に引き出す転職理由の考え方、伝え方のポイント、そして具体的なケース別の例文を交えながら詳しく解説します。

「事務から事務」の転職で、企業は転職理由のどこを見ている？

同じ事務職への転職であっても、採用担当者はあなたの「転職理由」から様々なことを見極めようとしています。単に「事務経験があります」と伝えるだけでは、他の応募者との差別化は図れません。企業が注目している主なポイントは以下の通りです。

• 現職（前職）の退職理由と、新しい職場への期待の整合性: なぜ現在の（あるいは直近の）職場を離れようと思ったのか、その理由が今回の転職で実現したいことや、応募先企業への期待と矛盾なく繋がっているか。ネガティブな退職理由であったとしても、それをどのように反省し、次のステップでどう活かそうとしているかという前向きな姿勢が見られるか。
• なぜ「今の事務」ではなく「新しい事務（応募先の事務）」なのかという具体的な動機: 数ある企業や事務職の求人の中で、なぜ応募先の企業を選んだのか、その具体的な理由が明確か。企業の理念や事業内容、募集されている事務職の業務内容や役割への深い理解と共感が示されているか。
• これまでの事務経験・スキルをどう活かし、さらにどう成長したいか: これまで培ってきた事務スキル（PCスキル、コミュニケーション能力、資料作成能力、特定の業務知識など）や実績を、応募先の企業でどのように活かし、貢献できると考えているか。そして、その上で今後どのようにスキルアップし、成長していきたいというビジョンを持っているか。
• 企業文化やチームへの適応性、定着性: 新しい職場の文化や人間関係にスムーズに馴染み、チームの一員として円滑に業務に取り組めるか。そして、長期的に貢献してくれる人材か。
• 課題意識と、それをどう解決しようとしているか（転職を通じて）： 現状に満足せず、より良い働き方や貢献の仕方を模索し、それを転職という手段で実現しようとする主体的な姿勢があるか。

これらのポイントを踏まえ、あなたの経験と熱意、そして将来性が伝わる、一貫性のある転職理由を準備することが、採用を勝ち取るための重要な鍵となります。

「事務から事務」の転職理由を考える上での自己分析ポイント

説得力のある転職理由を語るためには、まず自分自身について深く理解することが不可欠です。以下の点を整理し、自己分析を行いましょう。

• 現職（前職）の事務業務で得られたスキル・実績の棚卸し: 具体的にどのような業務を担当し、どのようなスキル（PCスキル、語学力、専門知識など）が身についたのか、そしてどのような成果を上げたのか（業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上への貢献など）を具体的に書き出します。
• 現職（前職）の事務業務で感じていた課題や限界点: キャリアアップの機会の少なさ、スキルアップの頭打ち、業務範囲の狭さ、企業文化とのミスマッチ、労働条件への不満など、転職を考えるに至った具体的な課題や限界点を整理します。ただし、これをそのまま伝えるのではなく、ポジティブな動機に転換することが重要です。
• 新しい事務職に求めるもの: 次の職場でどのような業務内容に挑戦したいのか、どのような専門性を身につけたいのか、どのような企業文化や労働環境を望むのか、そしてどのような待遇を期待するのか、具体的にリストアップします。
• 自身のキャリアプランと、今回の転職の位置づけ: 将来的にどのような事務のプロフェッショナルになりたいのか、あるいは事務経験を活かしてどのようなキャリアを築きたいのか、長期的な視点でのキャリアプランを描き、今回の転職がその中でどのような意味を持つのかを明確にします。

これらの自己分析を通じて、あなたの転職の軸が明確になり、より具体的で説得力のある転職理由を構築することができます。

【ケース別】事務から事務への転職理由・伝え方と例文

転職理由は、あなたの状況や目指す方向性によって、伝え方のポイントが異なります。ここでは、いくつかの具体的なケース別に、転職理由の例文とそのポイントをご紹介します。

ケース1：より専門性の高い事務スキルを身につけたい（例：一般事務→経理・人事・法務事務など）

例文:

「これまで〇年間、一般事務として幅広い業務に携わってまいりました。その中で、特に請求書発行や経費精算といった経理関連の業務に触れる機会が多く、数字を扱い企業の財務活動を支えることの重要性と奥深さに強い関心を持つようになりました。より専門的な知識を深め、企業経営に数字の面から貢献できる人材になりたいという思いから、現在は日商簿記2級の資格取得に向けて勉強中です。貴社では、〇〇といった専門的な経理業務に携われると伺い、これまでの事務経験で培ったPCスキルや正確な処理能力を土台としながら、経理のプロフェッショナルとして成長し、貢献していきたいと考え、転職を決意いたしました。」

ポイント:

• これまでの一般事務経験の中で、なぜ特定の専門分野（この場合は経理）に興味を持ったのか、具体的なきっかけや経験を述べることが重要です。
• 専門分野への学習意欲（資格取得の勉強など）を具体的に示すことで、本気度とポテンシャルをアピールできます。
• 応募先の企業で、その専門性をどのように活かし、貢献したいのか、具体的なイメージを伝えることが大切です。「貴社で学ばせていただきたい」という受け身の姿勢ではなく、「貢献しながら成長したい」という主体的な姿勢を示しましょう。

ケース2：より大きな規模の組織で貢献したい、またはより裁量のある環境を求めて

（大規模な組織へ）例文:

「現職では、〇〇名の従業員を抱える中小企業において、総務・経理・人事といった幅広いバックオフィス業務を担当し、組織運営全体をサポートする貴重な経験を積ませていただきました。その中で、より大規模で組織体制の整った環境において、これまでの多岐にわたる事務経験で培った対応力とPCスキルを活かし、より専門分化された業務で貢献の幅を広げたいと考えるようになりました。貴社のような、業界をリードする企業の一員として、組織運営の円滑化に貢献できることに大きな魅力を感じております。」

（より裁量のある小規模な組織へ）例文:

「大手企業で〇〇部門の事務として〇年間、主に定型的な業務を担当し、効率化や業務改善にも取り組んでまいりました。その経験を通じて、より経営に近い立場で、自身のアイデアや工夫をダイレクトに業務に反映させ、組織全体の成長に貢献したいという思いが強くなりました。貴社のような、少数精鋭で風通しが良く、社員一人ひとりの裁量が大きいと伺う環境であれば、これまでの事務経験で培った問題解決能力や主体性を最大限に活かし、組織運営の効率化や新しい取り組みにも積極的に貢献できると確信しております。」

ポイント:

• 現職の企業の規模と応募先の企業の規模の違いを明確に意識し、なぜその規模の企業で働きたいのか、そこで何を実現したいのかを具体的に述べましょう。
• 大規模な組織であれば、これまでの経験を活かしてより専門性を高めたい、あるいはより広い視野で貢献したいといった点を、小規模な組織であれば、より裁量を持って幅広い業務に携わりたい、経営に近い立場で貢献したいといった点をアピールすると効果的です。

ケース3：異なる業界の事務職に挑戦したい（例：メーカー事務→IT業界事務）

例文:

「〇年間、メーカーの営業事務として、受発注管理や納期調整、顧客対応といった業務に携わってまいりました。その中で培った正確な事務処理能力や、お客様のニーズを的確に把握するコミュニケーション能力は、どのような業界においても活かせる普遍的なスキルであると確信しております。近年、急速な成長を遂げ、社会に大きな変革をもたらしているIT業界に強い関心を持つようになり、特に貴社の〇〇という革新的なサービスに将来性を感じ、その成長を事務の立場から力強くサポートしたいと考えるようになりました。新しい業界の知識も積極的に吸収し、これまでの事務経験とITへの関心を融合させ、貴社の発展に貢献していきたいと強く志望しております。」

ポイント:

• これまでの事務スキルが、異なる業界でも通用する汎用性の高いものであることを具体的にアピールしましょう。
• なぜその新しい業界に興味を持ったのか、その業界や応募先の企業についてどの程度理解しているのかを示すことが大切です。業界研究の深さが問われます。
• 新しい環境への適応力や、新しいことを積極的に学ぶ意欲を強調すると効果的です。

ケース4：労働条件や働く環境の改善を求めて（ポジティブな表現で）

例文:

「現職では〇〇業務にやりがいを感じ、〇年間真摯に取り組んでまいりました。その中で、自身のキャリアを長期的な視点で見つめ直した際に、より腰を据えて専門性を高め、質の高い業務を通じて企業に貢献できる環境で働きたいと強く思うようになりました。貴社の〇〇（企業の働きやすさに関する魅力、例えば、社員のスキルアップを支援する研修制度の充実や、チームワークを重視する企業文化など）という点に深く共感し、そのような環境であれば、自身の能力を最大限に発揮し、長期的に貴社の発展に貢献できると確信しております。これまでの事務経験で培った効率的な業務遂行能力を活かし、貴社の円滑な組織運営に貢献したいです。」

ポイント:

• 単に「残業が多いから」「給与が低いから」といったネガティブな理由だけを前面に出すのは避けましょう。
• 「より質の高い仕事がしたい」「長期的に貢献したい」といった前向きな目標と結びつけ、応募先の企業のどのような点（労働条件だけでなく、企業文化や制度など）が、その目標達成に適しているのかを具体的に説明することが重要です。
• 現職への不満ではなく、応募先企業への期待感を語るように心がけましょう。

志望動機と転職理由の一貫性が重要

面接や応募書類では、「転職理由（なぜ今の会社を辞めるのか）」と「志望動機（なぜこの会社で働きたいのか）」の両方が問われます。この二つは、表裏一体の関係にあり、矛盾なく一貫したストーリーとして語られることが非常に重要です。

例えば、「現職ではスキルアップの機会が少ないため転職を考えています（転職理由）。そのため、研修制度が充実しており、多様な業務に挑戦できる貴社で、事務のプロフェッショナルとして成長したいと考えています（志望動機）」といったように、転職理由が志望動機へと自然に繋がるように構成しましょう。

事務から事務への転職理由を伝える際のNG例と注意点

どんなに素晴らしいスキルや経験があっても、転職理由の伝え方一つでマイナスの印象を与えてしまうことがあります。以下の点に注意しましょう。

• 現職（前職）への不平不満、悪口が中心になっている: 他責的で、新しい職場でも同じように不満を持つのではないかと懸念されます。
• 「今の仕事がつまらないから」「人間関係が悪いから」といったネガティブな表現のみ: 問題解決能力やコミュニケーション能力を疑われる可能性があります。
• 待遇面（給与、休日、残業の少なさなど）だけが理由に聞こえる: 仕事内容や企業への貢献意欲が低いと見なされかねません。
• 成長意欲や貢献意欲が見られない: 「今のままでいい」「楽な仕事がしたい」といった印象を与えてしまうと、採用は難しいでしょう。
• 応募先の企業や仕事内容への理解不足: なぜその企業でなければならないのかが伝わらず、準備不足と判断されます。

まとめ

「事務から事務」への転職における「転職理由」は、あなたのこれまでの経験やスキルを土台として、新たな環境で何を実現し、どのように貢献していきたいのかという、未来への前向きな意志を示すための絶好の機会です。

自己分析と企業研究を徹底し、ネガティブな要素はポジティブな言葉に転換し、具体的なエピソードを交えながら、あなた自身の言葉で誠実かつ熱意のこもった理由を語ることが、採用担当者に良い印象を与え、転職成功の可能性を大きく高める鍵となります。この記事でご紹介したポイントや例文が、あなたが自信を持って転職活動に臨み、理想のキャリアを実現するための一助となれば幸いです。

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岩下隼人

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。