大学職員への転職は「やめとけ」は本当か？後悔しないための、リアルな実態と判断基準

「安定してそうだし、ワークライフバランスも良さそう」

「社会貢献性も高くて、やりがいがありそうだ」

そんな魅力的なイメージから、大学職員への転職を目指す人は後を絶ちません。しかしその一方で、インターネットで検索すると、「大学職員はやめとけ」「転職して後悔した」といった、厳しい声が目につくことも事実です。

一体、どちらが真実なのでしょうか？

この記事では、大学職員という仕事の「光」と「影」の両面に、客観的な視点から切り込み、なぜ「やめとけ」と言われることがあるのか、そのリアルな実態を解き明かします。そして、あなたが転職後に後悔しないための、正しい判断基準と心構えをお伝えします。

なぜ「大学職員への転職はやめとけ」と言われるのか？よくある5つの理由

まず、「やめとけ」と言われる背景にある、民間企業から転職した人が感じやすい、代表的な5つのギャップについて見ていきましょう。

理由1：「成長できない」という焦り

民間企業のような厳しい競争環境や、明確な成果主義が少ないため、「スキルアップのスピードが遅い」「自分の市場価値が高まっている実感がない」と感じてしまうことがあります。常に自己成長を求める、向上心の高い人ほど、この「ぬるま湯」とも言える環境に、焦りや物足りなさを感じる可能性があります。

理由2：「変化を嫌う」組織文化

大学という組織は、歴史と伝統を重んじます。それは、安定性という大きなメリットであると同時に、「前例踏襲」や「現状維持」を好む文化に繋がることも少なくありません。「業務改善を提案しても、多くの会議や稟議が必要で、なかなか前に進まない」といった、民間企業とのスピード感の違いに、戸惑いを覚える人もいます。

理由3：「独特の人間関係」と力学

大学は、事務職員だけでなく、自身の研究領域において高い専門性を持つ「教員」という、全く異なるカルチャーを持つ人々と協働する場所です。教員の意向を尊重しながら、大学全体のルールとの間で調整を行うなど、民間企業とは異なる、独特のコミュニケーションの作法や、人間関係の機微に、難しさを感じるケースがあります。

理由4：「給与が上がりにくい」という現実

安定した給与と手厚い福利厚生は大きな魅力ですが、その評価制度は、年功序列が基本です。個人の成果が、インセンティブや賞与といった形で、民間企業のようにダイレクトに、そして短期的に給与に大きく反映されることは稀です。「どれだけ頑張っても、給料は周りと変わらない」という事実に、モチベーションを維持するのが難しいと感じる人もいます。

理由5：「意外と多忙」で、精神的な負担も

「楽そう」というイメージとは裏腹に、入試やオープンキャンパス、卒業式、そして年度末・年度初めといった繁忙期は、長時間労働になることも珍しくありません。また、学生からのクレーム対応や、時にデリケートな相談に乗るなど、精神的な負担が大きい業務も、決して少なくないのです。

逆の視点：それでも大学職員が「最高の職場」になり得る人とは？

では、大学職員は、本当に「やめとけ」と言われるような仕事なのでしょうか。決してそんなことはありません。上記のような側面は、あくまで一面的な真実です。以下のような価値観を持つ人にとっては、大学職員は「最高の職場」となり得ます。

• 利益追求よりも「社会貢献」に、心からの喜びを感じる人:自分の仕事が、未来を担う学生の成長や、社会を発展させる研究に、直接繋がっている。その事実に、何物にも代えがたい、大きなやりがいと誇りを感じられる人。
• 安定した環境で「ワークライフバランス」を何よりも重視したい人:民間企業に比べて、休暇が取得しやすく、福利厚生も手厚い傾向にあります。仕事だけでなく、家族との時間や、趣味、自己啓発といった、人生全体の豊かさを大切にしたい人。
• チームで、じっくりと物事に取り組むのが好きな人:スピード感よりも、多様な関係者と丁寧に合意形成を図りながら、間違いのない仕事を、着実に進めていくことに長けている人。

後悔しないための、転職活動における「確認」と「覚悟」

あなたが後悔しないキャリア選択をするために、転職活動中に、ぜひ自分自身に問いかけてほしいことがあります。

確認すべきこと

• 「なぜ、自分は大学職員になりたいのか？」を徹底的に自問する:あなたの動機が、もし「安定」や「楽そう」といったイメージだけなら、危険信号です。その奥にある、**「教育への想い」や「社会への貢献意欲」**といった、本質的な動機を、あなた自身の言葉で語れるかどうかが、ミスマッチを防ぐ最大の鍵です。
• 応募先の「リアル」を調べる:「転職会議」などの口コミサイトの情報も参考にしつつ、その大学の「建学の精神」や、公表されている「中期計画」を読み込みましょう。その大学が、今、何を目指し、どんな課題を抱えているのかを理解することが重要です。

持つべき覚悟

• 民間企業の「常識」が、必ずしも通用しないことを受け入れる覚悟。
• 自身の成長は、組織に委ねるのではなく、自ら創り出すという覚悟。
• 主役はあくまで学生と教員。その輝きを支える「黒子」に徹する覚悟。

まとめ

「大学職員への転職はやめとけ」という言葉は、多くの場合、民間企業と同じような「成長」や「評価」の物差しを、そのまま大学という組織に当てはめてしまった時に生まれる、“ギャップ”の声です。

それは、仕事が「良い・悪い」の問題ではなく、単に**「価値観が違う」**ということなのです。

大切なのは、その「違い」を深く理解し、あなたの価値観や、あなたがこれから歩みたいキャリアプランと、大学職員という仕事が、本当に心からマッチしているのかを、真剣に見極めることです。

その上で、なお「この道に進みたい」と強く願うあなたにとって、大学職員は、何物にも代えがたい、誇り高く、そして人間的に豊かなキャリアとなるに違いありません。

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岩下隼人

ロイヤル合同会社　代表

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。