転職の選考で問われる英語テストとは?種類・目的・効果的な対策法を徹底解説
グローバル化が進む中、多くの企業が採用選考の過程で応募者の英語力を重視するようになりました。履歴書に書かれたTOEIC®スコアだけでなく、企業が独自に用意した「英語テスト」によって、より実践的な英語スキルを測るケースが増えています。
「面接の案内が来たら、Webでの英語テストも受けるように言われた」「どんなテストが出るのか分からず不安だ」といった経験を持つ方もいるかもしれません。
この記事では、転職活動の選考過程で実施される英語テストの種類や企業の目的、そして突然のテストに慌てないための効果的な対策法について、詳しく解説していきます。
なぜ企業は独自の英語テストを実施するのか?
企業が手間をかけてまで、TOEIC®の公開テストとは別に独自の英語テストを実施するのには、いくつかの明確な理由があります。
TOEIC®スコアだけでは測れない実践力の確認
TOEIC® Listening & Reading Testは、英語のインプット能力(聞く・読む)を測る優れた指標ですが、ビジネスの現場で不可欠なアウトプット能力(話す・書く)までは分かりません。そのため、企業はスピーキングテストやライティングテストを通じて、実際の業務で必要となる「使える英語力」を確認しようとしています。
応募者の「本当の」英語力を把握するため
履歴書に書かれたスコアが数年前に取得したものであったり、スコアと実際の会話力に乖離があったりするケースは少なくありません。選考の直近でテストを実施することで、企業は応募者の現時点での純粋な英語力を客観的に把握したいと考えています。
採用基準の統一と効率化
特に多数の応募者が集まる人気企業では、客観的な基準で効率的に候補者を絞り込む必要があります。オンラインで実施できるテストは、場所や時間を選ばずに多くの応募者の能力を均一に測れるため、企業にとって合理的な選考手法なのです。
転職の選考で出会う代表的な英語テストの種類
では、実際に転職の選考ではどのような英語テストが用いられるのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介します。
① TOEIC® IPテスト(オンライン版含む)
団体受験用のTOEIC®テストです。内容は公開テストとほぼ同じ形式で、リスニングとリーディングの能力を測ります。近年では、不正防止の仕組みを備えたオンライン版を導入し、自宅での受験を課す企業が増えています。
- 対策: 基本的には公開テストの対策がそのまま通用します。公式問題集などで形式に慣れておくことが最も効果的です。
② CASEC(キャセック)
オンラインで約40~50分という短時間で受験できるテストです。最大の特徴は、受験者の解答の正誤によって、次に出題される問題の難易度が変化する「CAT(Computer Adaptive Test)」方式を採用している点です。TOEIC®や英検®の目安スコアも算出されるため、多くの企業で導入されています。
- 対策: 問題形式が次々と変わるため特化した対策は難しいですが、中学・高校で習うレベルの基礎的な語彙や文法が土台となります。語彙力を強化しておくことが有効です。
③ Versant®(ヴァーサント)
スピーキング能力の測定に特化したテストとして、近年急速に導入が進んでいます。電話の自動音声やPCに向かって、表示・発声された英文を音読したり、質問に答えたりする形式です。AIが発音、流暢さ、構文、語彙などを数十秒で自動採点します。
- 対策: 考え込む時間がないため、英語を素早く口に出す瞬発力が求められます。シャドーイングやリピーティングなど、英語を聞いて即座に復唱するトレーニングが効果的です。
④ GTEC(ビジネス版など)
ベネッセコーポレーションが開発した、4技能(読む・聞く・書く・話す)を測定できるテストです。ビジネスシーンを想定したリアルな課題(Eメールの作成、会議内容の要約など)が出題されるのが特徴です。
- 対策: ライティングやスピーキングの対策が重要になります。公式サイトのサンプル問題などを確認し、どのようなタスクが求められるかを事前に把握しておきましょう。
⑤ 企業オリジナルのテスト(筆記・面接)
上記のような外部の標準テストだけでなく、企業が独自に作成したテストを課す場合もあります。
- 筆記テスト: 特定のテーマに関する和文英訳や英文和訳、ビジネスメールの作成など、より実務に近いライティング能力が問われます。
- 英語面接: 採用担当者や配属予定先のネイティブ社員と、英語で質疑応答を行います。「自己紹介」や「志望動機」「これまでのキャリア」といった定番の質問は、英語でスムーズに答えられるように準備しておく必要があります。
英語テストの効果的な対策法
どのテストが出題されるか分からない状況で、どのように準備を進めればよいのでしょうか。
1. 基礎(語彙・文法)を徹底的に固める
どんなテストであれ、土台となるのは基礎的な語彙力と文法力です。特にビジネスで頻出する単語やイディオムを中心に、改めて復習しておきましょう。複雑な構文を使いこなすよりも、簡単な文法でもミスなく正確に使えることの方が重要です。
2. アウトプットの練習を習慣にする
スピーキングやライティングの能力は、一朝一夕には身につきません。オンライン英会話やAI英会話アプリなどを活用して、日常的に英語を「使う」機会を作りましょう。英語で簡単な日記をつけてみる、といった手軽な方法も有効です。
3. 応募企業の情報をリサーチする
転職口コミサイトやエージェントからの情報で、応募先企業が過去にどのような英語テストを実施したか、ヒントが得られる場合があります。「外資系のマーケティング職だからスピーキングが重視されそうだ」など、業界や職種からテスト内容をある程度推測し、的を絞って対策することも大切です。
テスト本番で慌てないための心構え
万全な準備をしても、本番では緊張するものです。最後に、落ち着いて実力を発揮するための心構えをお伝えします。
- 完璧を目指しすぎない: 特にスピーキングでは、多少言葉に詰まったり、文法的なミスがあったりしても問題ありません。完璧な英語よりも、積極的に伝えようとする姿勢が評価されます。
- オンラインテストの環境を整える: 自宅で受験する場合は、雑音の入らない静かな環境を確保し、インターネット接続が安定していることを確認しましょう。マイクやイヤホンの事前テストも必須です。
- 指示をよく読む: テストが始まったら、まずは問題形式や時間配分などの指示を落ち着いて読みましょう。焦って見切り発車すると、思わぬ失敗に繋がります。
まとめ
転職活動における英語テストは、単なる選考の関門ではなく、あなたの実践的な英語力をアピールできる絶好の機会です。事前にテストの種類や企業の目的を理解し、日頃から基礎固めとアウトプットの練習を積み重ねておけば、自信を持って本番に臨むことができます。
付け焼き刃の対策に頼るのではなく、これを機に自身の英語力と向き合い、着実にスキルアップさせていくことが、結果的にキャリアアップへの一番の近道となるでしょう。