転職時の「前々職」バレる?職歴の正しい伝え方と注意点
転職活動を進める中で、履歴書や職務経歴書の作成は避けて通れません。その際、「過去の職歴はどこまで書けば良いのだろう?」「短期間で辞めた会社や、あまりアピールにならない前々職の経歴は省略してもバレないかな?」といった疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、転職活動における職歴の正しい伝え方、特に「前々職」の扱いについて、なぜ正直に記載すべきなのか、そして万が一省略した場合にどのようなリスクがあるのか、さらには職歴が多い場合の書き方の工夫などを分かりやすく解説します。
なぜ企業は職歴を気にするのか?
企業が採用選考において応募者の職歴を確認する主な目的は、以下の通りです。
- 経験・スキルの確認: これまでどのような業務に携わり、どのようなスキルや経験を積み重ねてきたのかを把握し、募集しているポジションで活かせるかどうかを見極めます。
- 定着性・継続性の確認: 短期間での離職が繰り返されていないか、一つの仕事に真摯に取り組む姿勢があるかなど、入社後に長く活躍してくれる人材かどうかを判断します。
- キャリアの一貫性・志向性の確認: これまでのキャリアの歩みから、応募者のキャリアプランや仕事に対する価値観、志向性を理解しようとします。
- 信頼性の確認: 申告された情報に虚偽がないか、誠実な人物であるかを見極めます。
「前々職」の職歴、省略してもバレない?
結論から言うと、たとえ前々職であっても、職歴を意図的に省略したり、事実と異なる内容を記載したりすることは「職歴詐称」にあたり、発覚するリスクが非常に高いです。そして、それが発覚した場合、応募者にとって大きな不利益となる可能性があります。
「古い職歴だからバレないだろう」「短期間だったから書かなくても大丈夫だろう」といった安易な考えは禁物です。
前々職の職歴が「バレる」主なケース
では、具体的にどのような場面で、省略した前々職の職歴が発覚する可能性があるのでしょうか。
- 社会保険(雇用保険・厚生年金保険)の加入履歴:
- 新しい会社に入社する際、雇用保険被保険者証や年金手帳(または基礎年金番号通知書)の提出を求められます。これらの書類には、これまでの加入履歴が記録されており、人事担当者が手続きを進める中で、履歴書に記載のない職歴が判明することがあります。
- 特に雇用保険被保険者証には、前職の会社名が記載されているため、そこから芋づる式に過去の職歴が明らかになる可能性があります。
- 源泉徴収票の提出:
- 年の途中で転職した場合、新しい会社での年末調整のために、その年に給与の支払いを受けた全ての会社から発行された源泉徴収票の提出を求められます。これにより、直近の職歴は確実に把握されます。前々職であっても、その年のうちに複数の会社に在籍していた場合は、源泉徴収票から判明することがあります。
- リファレンスチェック・前職調査:
- 企業によっては、応募者の同意を得た上で、前職(場合によっては前々職も含む)の上司や同僚に、応募者の勤務状況や実績、人柄などについて問い合わせる「リファレンスチェック」を行うことがあります。
- また、専門の調査会社に依頼して、より詳細な経歴調査を行う企業も稀に存在します。
- 面接での会話の矛盾:
- 職歴を省略したり、内容を偽ったりしていると、面接での会話の中で、話の辻褄が合わなくなったり、不自然な点が生じたりして、面接官に疑念を抱かせる可能性があります。採用のプロである面接官は、そのような矛盾に気づきやすいものです。
- 業界内のネットワークや共通の知人:
- 特に同じ業界内での転職の場合、思いがけないところで前職や前々職の関係者と繋がっていたり、共通の知人がいたりして、情報が伝わることがあります。
- SNSなどのオンライン情報:
- 公開設定にしているSNSのプロフィールや過去の投稿などから、職歴に関する情報が明らかになることもあり得ます。
これらのように、職歴を隠し通すことは非常に困難であり、リスクが高い行為と言えます。
職歴詐称が発覚した場合のリスク
もし職歴詐称が発覚した場合、以下のような重大なリスクが生じる可能性があります。
- 内定取り消し: 採用選考中や内定後に発覚した場合、内定が取り消される可能性が非常に高いです。
- 懲戒解雇: 入社後に発覚した場合、就業規則違反として懲戒解 goûの対象となることがあります。これは、その後の転職活動にも大きな影響を与えます。
- 損害賠償請求(稀なケース): 職歴詐称によって企業が重大な損害を被った場合、損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。
- 信頼関係の失墜: たとえ法的な措置に至らなかったとしても、企業や同僚からの信頼を完全に失い、社内で働き続けることが困難になるでしょう。
職歴は正直に、そして前向きに伝えることが基本
たとえ短期間で辞めた職歴や、自分にとってあまりアピールにならないと感じる職歴であっても、原則として全ての職歴を正直に記載することが、転職活動における基本的なマナーであり、信頼関係を築く上で不可欠です。
大切なのは、過去の職歴を隠すことではなく、それぞれの経験から何を学び、それが次のキャリアにどう繋がっているのか、そして応募先の企業でどのように貢献できるのかを、前向きな言葉で伝えることです。
短期間での離職がある場合の伝え方
- 正直に理由を説明する: なぜ短期間で離職に至ったのか、その理由を正直かつ客観的に説明しましょう。ただし、前職の悪口や不平不満に終始するのは避け、そこから何を学び、次にどう活かそうとしているのかという建設的な視点を加えることが重要です。
- 反省点と改善意欲を示す: もし自分自身に至らない点があったのであれば、それを素直に認め、改善に向けて努力している姿勢を示すことで、誠実さをアピールできます。
- キャリアプランとの一貫性を強調する: たとえ短期間の職歴であっても、それが自身のキャリアプランの中でどのような意味を持ち、今回の転職にどう繋がっているのかを説明できれば、採用担当者の理解を得やすくなります。
職歴が多い場合の書き方の工夫
職歴が多く、履歴書の職歴欄に書ききれない場合は、以下の方法を検討しましょう。
- 詳細は職務経歴書に譲る: 履歴書の職歴欄には、会社名、在籍期間、主な業務内容などを簡潔に記載し、「詳細は職務経歴書をご参照ください」と一言添えます。
- 入社と退職を1行にまとめる: スペースが限られている場合、1つの会社について入社と退職を1行にまとめて記載することも可能です。
- 職務経歴書を充実させる: 職務経歴書で、それぞれの職務内容や実績、習得したスキルなどを詳細に記述し、アピールします。
まとめ:「正直さ」と「前向きな姿勢」が信頼を築く
転職活動において、「前々職がバレるのではないか…」と不安に思う気持ちは理解できます。しかし、職歴を偽ったり省略したりすることは、発覚した際のリスクが非常に大きく、あなた自身の信頼を損なう行為です。
大切なのは、これまでの全てのキャリアを正直に受け止め、それぞれの経験から得た学びや成長を、次のステップへの前向きなエネルギーに変えていくことです。そして、応募先の企業に対して、誠実な姿勢で、自分の言葉でこれまでの経験と将来への熱意を伝えることが、採用担当者との信頼関係を築き、結果的に転職成功へと繋がる最も確実な道と言えるでしょう。