転職活動の「平均応募数」は?データと実態から見る、成功への適切なアプローチ
転職活動を始めると、「一体、他の人は何社くらい応募しているのだろう?」「自分の応募数は少ないのだろうか、それとも多すぎるのだろうか?」と、応募企業数について気になる方は少なくないでしょう。「平均応募数」という言葉は、自分の活動状況を客観視するための一つの目安となるかもしれません。
しかし、本当に大切なのは平均値に合わせることなのでしょうか。この記事では、転職における応募数の実態に関するデータや一般的な傾向を紹介しつつ、「平均応募数」という数字にどう向き合い、自分にとって最適な応募戦略をどのように考えていけば良いのか、そのヒントを探っていきます。
転職における「平均応募数」の実態:データから見える傾向
まず、転職活動における「平均応募数」について、様々な調査データから見える一般的な傾向を見てみましょう。
民間の大手転職サービス会社などが定期的に行っている調査によると、転職活動における1人あたりの平均応募社数は、おおむね10社~30社程度の範囲に収まることが多いようです。例えば、リクルートエージェントの調査(2023年4月~2024年3月の利用者データ)では、転職決定者の平均応募社数は約20社というデータもあれば、dodaの調査(2022年7月)では、転職活動開始から内定までに平均19.6社に応募しているという結果もあります。
ただし、これらの数値はあくまで全体の平均値であり、実際には個人差が非常に大きいのが実情です。
- 年代による違い: 一般的に、20代の若手層はポテンシャル採用も期待できるため、比較的少ない応募数で内定を得るケースもあれば、キャリアの方向性を探るために多くの企業に応募する人もいます。30代、40代と年齢が上がるにつれて、求められる専門性や経験が高まるため、ターゲットを絞った応募になる傾向や、逆に選択肢を広げるために応募数が増える傾向など、戦略によって変わってきます。
- 経験職種や希望業界による違い: 専門性の高い職種やニッチな業界を目指す場合は、応募できる企業数自体が限られるため、平均応募数は少なくなることがあります。一方、未経験の職種に挑戦する場合や、求人数の多い業界では、多くの企業に応募する傾向が見られます。
- 景気や求人市場の動向: 景気が良く求人が多い「売り手市場」の時期は、比較的少ない応募数で決まることもありますが、逆に「買い手市場」では、内定獲得のハードルが上がり、応募数が増える傾向があります。
重要なのは、「平均応募数」はあくまで参考値として捉え、ご自身の状況や転職の目的に合わせて柔軟に考えることです。
なぜ「平均応募数」が気になるのか?その心理
多くの方が「平均応募数」を気にする背景には、以下のような心理が働いていると考えられます。
- 自分の活動が一般的かどうかを知りたい: 他の人がどの程度応募しているのかを知ることで、自分の活動ペースや戦略が妥当なのかを確認したいという気持ち。
- 効率的な進め方の目安が欲しい: あまりに少ない応募数で機会を逃したくない、かといって多すぎて疲弊したくないという思いから、適切な応募数の目安を知りたい。
- 選考に落ちた場合の不安: 書類選考や面接で不採用が続くと、「応募数が足りないのではないか」「もっと多くの企業にアプローチすべきではないか」と不安になる。
このような気持ちは自然なものですが、「平均」にこだわりすぎると、かえって自分自身の転職活動の本質を見失ってしまう可能性もあります。
応募社数が多い場合のメリット・デメリット(再確認)
複数企業への応募は一般的ですが、その数によってメリット・デメリットも変わってきます。
- メリット:
- 選択肢の増加: より多くの企業と比較検討でき、自分に本当に合った企業を見つけやすくなります。
- 内定獲得率の向上: 応募数が増えれば、それだけ内定を得られるチャンスも増えます。
- 面接経験の蓄積: 多くの面接を経験することで、場慣れし、受け答えも洗練されていきます。
- 自身の市場価値の把握: 複数の企業からの評価を得ることで、自分の強みや改善点が見えやすくなります。
- デメリット:
- 1社への対策の質の低下: 応募数が増えすぎると、企業研究や志望動機の作成、面接対策などが疎かになりがちです。
- スケジュール管理の煩雑化: 応募書類の提出期限、面接日程、企業との連絡などが重なると、管理が非常に大変になります。
- 精神的・体力的負担の増加: 多くの選考結果に一喜一憂したり、面接が続いたりすることで疲弊しやすくなります。
応募社数が少ない場合のメリット・デメリット(再確認)
一方、応募社数を絞ることにもメリット・デメリットがあります。
- メリット:
- 1社に集中できる: 企業研究や応募書類の作成、面接対策などにじっくりと時間をかけることができます。
- 深い企業理解に基づいたアピールが可能: 熱意が伝わりやすく、質の高いコミュニケーションが期待できます。
- デメリット:
- 選択肢が限定される: 比較検討の機会が失われ、その企業が本当に最適なのか判断しにくいことがあります。
- 不採用だった場合のリスクが大きい: 活動期間が長期化したり、精神的なダメージが大きくなったりする可能性があります。
「平均応募数」よりも重要な、自分に合った応募社数の考え方
「平均応募数」という数字に振り回されるのではなく、自分自身の状況や目標に合わせて、最適な応募社数を見極めることが大切です。以下のポイントを考慮してみましょう。
- 転職の目的と優先順位を明確にする: 「何のために転職するのか」「今回の転職で最も重視する条件は何か(年収、仕事内容、働き方、企業文化など)」を明確にすることで、応募すべき企業のターゲットが絞られ、適切な応募数も見えてきます。
- 自身のスキル・経験と市場価値を客観的に把握する: 自分のスキルや経験が、転職市場でどの程度評価されるのかを冷静に分析しましょう。高い専門性や希少なスキルを持っていれば、比較的少ない応募数でも内定を得られる可能性があります。逆に、未経験分野への挑戦であれば、ある程度の応募数が必要になるかもしれません。
- 転職活動に割ける時間とエネルギーを考慮する: 在職しながら転職活動を行う場合は、時間に限りがあります。1社1社に丁寧に対応できる範囲で応募数を調整する必要があります。離職して活動に専念できる場合でも、体力面や精神面の限界を考慮し、無理のない計画を立てましょう。
- 書類選考の通過率を予測する(一般的な目安として): 一般的に、書類選考の通過率は20%~30%程度と言われることもあります(もちろん企業や職種、個人のスキルによって大きく異なります)。例えば、面接に進みたい企業数を5社と設定した場合、逆算すると15社~25社程度の応募が必要になるかもしれない、といった大まかな目安を立てることもできます。
- 応募する企業の「質」を重視する: 単に応募数を増やすだけでなく、自分自身のキャリアプランや価値観に本当にマッチする可能性の高い企業を厳選して応募しているかどうかが重要です。質の低い応募をいくら重ねても、良い結果には繋がりにくいでしょう。
応募数を増やすべきか、絞るべきか?判断のタイミングとポイント
転職活動を進める中で、応募数について見直しが必要になることもあります。
- 書類選考の通過率が著しく低い場合: 応募書類(履歴書、職務経歴書)の内容に改善の余地がないか、自己PRや志望動機が応募企業の求める人物像と合致しているかを見直しましょう。その上で、応募先の業界や職種の幅を少し広げてみることも検討します。
- 面接でなかなかうまくいかない場合: 単に応募数を増やすのではなく、面接対策に時間をかける方が効果的です。模擬面接を行ったり、転職エージェントからフィードバックをもらったりして、受け答えやアピール方法を改善しましょう。
- 複数の内定が出始めた場合: この段階では、新規の応募は一旦控え、内定をいただいた企業との条件交渉や、どの企業に入社するかという意思決定に集中する時期です。
- 精神的に疲弊してきた場合: 無理に応募数を維持しようとせず、一時的に活動のペースを落としたり、休息期間を設けたりすることも大切です。心身の健康を保つことが、長期的な視点での成功に繋がります。
転職エージェントと相談しながら応募数を調整する
自分一人で適切な応募数を判断するのが難しいと感じる場合は、転職エージェントに相談するのも有効な手段です。
- 客観的なアドバイス: キャリアアドバイザーは、あなたのスキルや経験、希望条件、そして最新の市場動向などを踏まえ、適切な応募戦略や応募社数の目安について客観的なアドバイスをしてくれます。
- 非公開求人の紹介: 一般には公開されていない求人を紹介してもらえるため、応募先の選択肢が広がり、質の高い応募が可能になることがあります。
- 効率的な活動支援: 応募書類の添削や面接対策、企業との日程調整などをサポートしてくれるため、効率的に転職活動を進めることができます。
まとめ:「平均応募数」は一つの目安に過ぎない。数に囚われず、自身の状況と目標に合わせて質の高い応募を心がけ、納得のいく転職活動を進めよう。
転職活動における「平均応募数」は、あくまで社会全体の傾向を示す一つのデータであり、あなた自身の活動の成否を直接左右するものではありません。大切なのは、応募数という「量」に一喜一憂するのではなく、1社1社への応募の「質」を高め、自分自身のキャリアプランと真摯に向き合い、納得のいく企業を見つけることです。
周りの状況や平均値に惑わされず、ご自身のペースと戦略で、計画的かつ前向きに転職活動を進めていきましょう。あなたの新しいキャリアへの挑戦が実りあるものとなることを心から応援しています。