転職の平均回数ってどれくらい？年代別データと回数が選考に与える影響

キャリア形成の手段として「転職」が一般的になった現代、「自分は転職回数が多いのではないだろうか？」「周りの人は平均で何回くらい転職しているのだろう？」と、自身のキャリアパスを振り返り、ふと気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。転職回数が選考に不利に働くのではないか、といった不安を感じることもあるかもしれません。

この記事では、転職の平均回数に関する一般的なデータや傾向、そして転職回数が採用選考にどのような影響を与えるのか、また、回数を気にせず前向きなキャリアを築くための考え方について解説していきます。

転職の「平均回数」：実際のところは？

まず、転職の「平均回数」についてですが、これを一概に示すのは非常に難しいのが現状です。なぜなら、個人のキャリアプラン、働く業界や職種、年齢、そして時代背景によって、転職に対する考え方や実際の行動は大きく異なるからです。

かつての日本では終身雇用が一般的で、一つの会社に長く勤めることが美徳とされる風潮がありましたが、近年では働き方の多様化や個人のキャリア意識の変化に伴い、転職はよりポジティブな選択肢として捉えられるようになってきました。

公的な統計データ（例えば、厚生労働省の「雇用動向調査」や総務省統計局の「労働力調査」など）や、民間の調査会社が発表するデータを見ると、年代別の転職経験者の割合や、これまでの転職回数に関する傾向を知ることができます。これらの調査によると、日本人全体の生涯での平均転職回数は2～3回程度と言われることがあります。しかし、これはあくまで平均値であり、一度も転職を経験しない人もいれば、5回以上転職する人もいます。

大切なのは、「平均」という数字に一喜一憂するのではなく、自身のキャリアにとってその転職がどのような意味を持つのかを考えることです。

年代別に見る転職回数の傾向と背景

一般的に、年代によって転職回数の傾向や、転職に至る背景には違いが見られます。

20代の転職

• 傾向: キャリアの初期段階であり、転職回数は0回～1回という人が多い傾向にあります。しかし、第二新卒としての転職や、入社後数年でのキャリアチェンジも珍しくありません。
• 背景:
  • キャリアの模索: 実際に社会に出て働く中で、本当にやりたいことや自分に合った仕事、職場環境を見つけようとする時期です。
  • 未経験分野への挑戦: 若さを武器に、ポテンシャルを評価されて未経験の業界や職種にチャレンジしやすい時期でもあります。
  • 職場環境への不適合: 新卒で入社した会社が、必ずしも自分に合うとは限りません。

30代の転職

• 傾向: 1回～3回程度の転職経験を持つ人が増えてくる年代です。スキルや経験を活かしたキャリアアップを目指す動きが活発になります。
• 背景:
  • キャリアアップ・専門性の追求: これまで培ってきたスキルや経験を土台に、より専門性を深められる仕事や、責任のあるポジション、待遇の良い企業を目指すケースが増えます。
  • ライフイベントの変化: 結婚、出産、育児といったライフステージの変化に伴い、働き方を見直したり、勤務地を変更したりするために転職を選択することもあります。
  • 現状への不満や将来への展望: 現在の仕事内容や評価、将来性などに疑問を感じ、新たな可能性を求めて行動を起こす人もいます。

40代以降の転職

• 傾向: これまでのキャリアの積み重ねにより、転職回数には個人差が大きくなります。1社で長く勤めてきた人が初めての転職を考えるケースもあれば、複数回の転職を経てキャリアを築いてきた人もいます。管理職や専門職としての経験が豊富な層です。
• 背景:
  • より上位のポジションや経営層への挑戦: マネジメント経験や高度な専門性を活かし、さらに責任のある役割や経営に近いポジションを目指す。
  • 専門性を活かしたキャリアの継続・深化: 特定の分野での専門性を追求し、その道のプロフェッショナルとして活躍できる場を求める。
  • セカンドキャリアの模索: 早期退職制度の利用や、これまでの経験とは異なる分野への挑戦など、新たなキャリアを考える人もいます。
  • ワークライフバランスの見直し: 体力的なことや家族との時間を考え、働き方を変えたいと考えるケースも。

転職回数が多い（少ない）ことは、採用選考にどう影響するのか？

転職回数が採用選考にどのような影響を与えるのかは、多くの方が気にするところでしょう。

企業が転職回数を見る視点

企業が応募者の転職回数を見る際、単に「回数が多いか少ないか」という表面的な数字だけで判断することは稀です。それ以上に重視するのは、以下の点です。

• それぞれの転職理由: なぜ前の会社を辞め、次の会社を選んだのか。その理由に一貫性や正当性があるか。
• 各職務経験から得たもの: 短期間の在籍であっても、そこで何を学び、どのようなスキルを習得し、どのような実績を上げたのか。
• キャリアプランの一貫性: これまでの転職が、場当たり的なものではなく、明確なキャリアプランに基づいたステップアップや目標達成のためのものだったのか。
• 定着性への懸念: 新しい会社で長く腰を据えて働いてくれる人材か、またすぐに辞めてしまうのではないか。

転職回数が多い場合の懸念点（企業側から見た）

一般的に、転職回数があまりにも多い場合、企業側は以下のような懸念を抱くことがあります。

• 「忍耐力がないのでは？」「人間関係を構築するのが苦手なのでは？」といった定着性への不安。
• 一つの会社でじっくりとスキルや経験を積み上げていないため、専門性が低いのではないかという懸念。
• すぐに辞めてしまうリスクが高いと判断され、採用コストや教育コストが無駄になることを恐れる。

年代別に見ると、例えば20代で3回以上、30代で4回以上といった回数になると、「多い」と感じる採用担当者もいるようです。しかし、これはあくまで一般的な目安であり、転職理由やこれまでの経験内容によって評価は大きく変わります。

転職回数が多い場合のポジティブな捉え方・アピールポイント

転職回数が多いことが、必ずしもネガティブに働くとは限りません。以下のような点を効果的にアピールできれば、むしろプラスの評価に繋がることもあります。

• 多様な経験と幅広いスキル: 複数の企業や業界で働いた経験は、多様な業務への対応能力や、幅広い視野、柔軟な思考力を養っていると捉えられます。
• 高い適応能力: 新しい環境や人間関係にスムーズに順応してきた実績は、高い適応能力の証明となります。
• 前向きなキャリアアップのための転職であること: 各転職が、明確な目的意識に基づいたスキルアップやキャリア形成のためのステップであったことを具体的に説明できれば、向上心や行動力が高く評価されます。

転職回数が少ない（または初めての転職）場合

• 1社での勤続年数が長い場合: 企業への忠誠心、継続力、忍耐力などが高く評価される傾向にあります。
• 一方で懸念される点: 新しい環境への適応力や柔軟性、変化に対する許容度などを慎重に見られることがあります。また、1社の文化に染まりすぎているのではないか、という見方をされることもあります。

結局のところ、転職回数そのものよりも、「それぞれの転職を通じて何を得て、次にどう活かそうとしているのか」という「中身」が最も重要なのです。

転職回数が気になる場合の面接対策

もし自身の転職回数が気になっているのであれば、面接でその点をしっかりと説明できるように準備しておくことが大切です。

1. 転職理由を明確かつポジティブに説明する: 各転職の理由を、単なる不満やネガティブなものではなく、「〇〇というスキルを身につけたかった」「△△という目標を達成するためには、□□という環境が必要だった」など、前向きな動機やキャリアプランとの関連性を示しながら説明しましょう。
2. これまでの経験から得たスキルや実績を具体的に示す: たとえ在籍期間が短かったとしても、その会社で何を学び、どのようなスキルを習得し、どのような実績を上げたのかを具体的に語れるように準備します。それが次の職場でどのように活かせるのかを明確に伝えましょう。
3. 企業への貢献意欲と長期的な就業意思を伝える: 「これまでの多様な経験を活かして、貴社で長く貢献していきたい」という強い意志を、具体的な言葉で伝えましょう。企業が持つ「またすぐに辞めてしまうのではないか」という懸念を払拭することが重要です。
4. 企業が持つ懸念を先回りして説明する: 面接官が疑問に思いそうな点を予測し、それに対する答えをあらかじめ用意しておくことで、スムーズで説得力のある説明ができます。

「ジョブホッパー」と「キャリアビルダー」の違い

転職回数が多い場合でも、それが単に「職を転々としている（ジョブホッパー）」と見られるか、「明確な目的を持ってキャリアを積み重ねている（キャリアビルダー）」と見られるかで、評価は大きく変わります。

大切なのは、これまでのキャリアに一貫したストーリーがあり、それぞれの転職が計画的なものであったことを、説得力を持って伝えられるかどうかです。

まとめ：転職の平均回数に一喜一憂する必要はない。大切なのは、これまでの経験をどう語り、これからどう貢献できるかを具体的に示すこと。回数よりも「質」を意識したキャリア形成を。

転職の平均回数という数字は、あくまで社会全体の傾向を示す一つのデータに過ぎません。その数字に一喜一憂したり、過度に気に病んだりする必要はありません。

企業が本当に知りたいのは、あなたの転職回数の多寡ではなく、あなたがこれまでのキャリアで何を学び、どのような成長を遂げ、そしてこれから自社でどのように活躍し貢献してくれるのか、ということです。

一つ一つの転職経験を無駄にせず、そこから得た学びやスキルを自信を持って語り、将来への明確なビジョンを示すことができれば、転職回数に関わらず、あなたの市場価値は正当に評価されるはずです。回数に囚われることなく、「質」の高いキャリア形成を意識し、前向きに転職活動に取り組んでいきましょう。

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岩下隼人

ロイヤル合同会社　代表

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。