転職時の健康保険、マイナンバーカードはどう使う?手続き・メリット・注意点完全ガイド
転職はキャリアにおける大きな一歩ですが、それに伴う健康保険の手続きは少し複雑で、特に近年普及が進む「マイナンバーカードの健康保険証利用」について、「どうなるの?」「何かしなければいけないの?」と疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
退職して次の会社に入社するまでの間に空白期間がある場合、あるいは新しい会社で健康保険に加入する際、マイナンバーカードがどのように関わってくるのか、そして従来の健康保険証との違いは何なのか。これらの点を正しく理解しておくことは、スムーズな転職と、切れ目のない医療アクセスを確保するために非常に重要です。
この記事では、転職時における健康保険の手続きと、マイナンバーカードの健康保険証利用について、その基本から具体的な準備、各場面での対応、メリット・注意点に至るまで、分かりやすく徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたの疑問が解消され、安心して新しい生活の準備を進めることができるはずです。
(※重要:健康保険制度やマイナンバーカードの運用は、法改正などにより変更されることがあります。また、お住まいの市区町村や加入する健康保険組合、医療機関によって詳細が異なる場合があります。本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新かつ正確な情報、個別のケースについては、必ずマイナポータル、厚生労働省のウェブサイト、市区町村役場、健康保険組合、または医療機関などでご確認ください。)
転職と健康保険の基本:なぜ手続きが必要?
まず、なぜ転職によって健康保険の手続きが必要になるのか、そしてマイナンバーカードがどう関わってくるのか、その基本を理解しておきましょう。
退職に伴う健康保険資格の変更
会社員として働いている間は、通常、勤務先の健康保険に加入しています。しかし、会社を退職すると、その翌日には健康保険の被保険者資格を原則として喪失します。そのため、次の会社の健康保険に加入するまでの間、何らかの公的医療保険に加入し直す手続きが必要になります。この「切れ目」を作らないことが、日本の国民皆保険制度の根幹です。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化の流れ
近年、政府はマイナンバーカードの普及と利便性向上を進めており、その一環としてマイナンバーカードを健康保険証として利用できる仕組みが導入・拡大されています。これにより、従来のカード型の健康保険証がなくても、マイナンバーカードと顔認証または暗証番号で医療機関や薬局の窓口で保険資格を確認できるようになりました。
転職時には、このマイナンバーカードに紐づけられる健康保険情報も、退職や新しい会社への入社に伴って更新されていくことになります。
(重要)常に最新情報を確認!制度は変化する可能性も
マイナンバーカードの保険証利用に関する運用や、関連する制度は、今後も変更・改善されていく可能性があります。本記事の情報は一般的なものとして捉え、手続きの際には必ず最新の公式情報を確認するようにしてください。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するための準備
マイナンバーカードを健康保険証として利用するためには、いくつかの準備が必要です。
マイナンバーカードは持っていますか?未取得の場合の申請方法
まず大前提として、マイナンバーカードそのものを持っている必要があります。まだ取得していない場合は、お住まいの市区町村の窓口や、郵送、スマートフォン、パソコンなどから交付申請を行うことができます。申請から交付までには一定の期間(通常1ヶ月程度)がかかるため、早めに手続きを済ませておきましょう。
健康保険証としての利用申込手続き(マイナポータル等)
マイナンバーカードを取得したら、次に「健康保険証としての利用申込」を行う必要があります。この申込みは、以下の方法で行うことができます。
- マイナポータル: スマートフォンやパソコンからマイナポータルにアクセスし、手続きを行います。
- セブン銀行ATM: 全国のセブン銀行ATMでも簡単に申込みが可能です。
- 医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダー: 一部の医療機関や薬局に設置されている顔認証付きカードリーダーでも、受診時にその場で利用申込みができる場合があります。
利用申込みを行うことで、あなたのマイナンバーカードに健康保険証の情報が紐づけられ、保険証として利用できるようになります。
【退職時】健康保険証の返却とマイナンバーカードの扱い
会社を退職する際の健康保険証とマイナンバーカードの取り扱いです。
従来の健康保険証は会社へ返却
これまで会社から交付されていたカード型の健康保険証は、退職日に会社へ返却するのが基本です。扶養している家族の分の保険証も同様に返却します。
退職後のマイナンバーカードでの医療機関受診について(資格喪失後の注意)
マイナンバーカードを保険証として利用登録していても、会社の健康保険資格を喪失した後は、その保険情報での受診はできません。 退職日の翌日以降は、後述する空白期間中のいずれかの健康保険に加入し、その情報がマイナンバーカードに正しく紐づけられてから利用することになります。
【空白期間】の健康保険とマイナンバーカード
退職してから次の会社に入社するまでの空白期間が生じる場合、健康保険の選択肢は主に以下の3つです。それぞれの選択肢とマイナンバーカードの関連について見ていきましょう。
- 国民健康保険への加入
- 任意継続被保険者制度の利用(元の会社の健康保険を継続)
- 家族の健康保険の扶養に入る
各選択肢におけるマイナンバーカードの保険証利用と情報紐づけのタイミング
- 国民健康保険加入とマイナンバーカード: 市区町村役場で国民健康保険の加入手続きを行うと、その情報がマイナンバーカードに紐づけられます。紐づけが完了すれば、マイナンバーカードを国民健康保険の保険証として利用できるようになります。反映までにかかる時間は市区町村によって異なる場合があるため、手続き時に確認しましょう。
- 任意継続制度利用とマイナンバーカード: 任意継続の手続きを健康保険組合などで行うと、その保険情報がマイナンバーカードに紐づけられます。手続き完了後、マイナンバーカードで保険資格が確認できるようになります。
- 家族の扶養に入るときのマイナンバーカード: 家族の勤務先を通じて被扶養者としての手続きを行うと、その情報がマイナンバーカードに紐づけられます。
いずれの場合も、手続き完了後、新しい保険情報がマイナンバーカードのシステムに反映されるまでには一定の時間がかかることがあります。
新しい保険情報がマイナンバーカードに反映されるまでの注意点
新しい健康保険への加入手続きをしても、その情報がマイナンバーカードのシステムに即座に反映されるとは限りません。反映されるまでの間に医療機関を受診する場合は、
- 従来のカード型保険証が発行されていればそれを使用する。
- マイナンバーカードで資格確認ができない場合は、一時的に全額自己負担となる可能性も考慮し、後日精算の手続き(療養費の請求)ができるよう、領収書や診療明細書を必ず保管しておきましょう。
- 医療機関の窓口で、保険情報の確認に時間がかかる場合があることも念頭に置いておくと良いでしょう。
【入社時】新しい会社の健康保険とマイナンバーカード
転職先の新しい会社に入社した際の健康保険とマイナンバーカードの扱いです。
新しい会社での健康保険加入手続き
入社日に、新しい会社の健康保険に加入する手続きが行われます。通常は会社の人事・総務担当者の指示に従い、必要な情報(マイナンバーなど)を提供します。
マイナンバーカードへの新しい保険情報の紐づけ
新しい会社の健康保険に加入すると、その保険情報がマイナンバーカードに紐づけられます。これにより、マイナンバーカードを新しい会社の健康保険証として利用できるようになります。
新しい保険証(カード型またはマイナンバーカード)が使えるようになるまで
前述の通り、新しい保険情報がマイナンバーカードに反映されるまでには時間がかかることがあります。その間の医療機関受診については、会社から「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらうか、一時的に全額自己負担し後日精算するなどの対応が必要になります。会社の人事担当者に対応方法を確認しておきましょう。
マイナンバーカードを健康保険証として使うメリット
マイナンバーカードを健康保険証として利用することには、いくつかのメリットがあります。
医療機関での受付がスムーズに(対応医療機関の場合)
対応している医療機関や薬局では、顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをかざすだけで保険資格の確認ができ、受付がスムーズになります。
限度額適用認定証の持参が原則不要に
高額な医療費がかかる場合に、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えるための「限度額適用認定証」の事前申請と持参が、マイナンバーカードを利用すれば原則として不要になります(本人が同意し、医療機関が対応している場合)。
医療費通知情報や薬剤情報、特定健診情報をマイナポータルで確認可能
マイナポータルを通じて、自身の医療費通知情報、処方された薬剤の情報、特定健診の結果などを閲覧できるようになり、健康管理に役立ちます。
医療費控除の確定申告がより簡単に
マイナポータルとe-Taxを連携させることで、医療費控除の確定申告に必要な医療費情報を自動入力できるようになり、手続きが簡便になる可能性があります。
就職・転職・引越し後も継続して利用可能
就職や転職、引越しなどで加入する健康保険が変わった場合でも、新しい保険者での手続きが完了すれば、同じマイナンバーカードを引き続き健康保険証として利用できます(その都度、新しい保険者への利用申込は不要ですが、保険者変更の届出は必要です)。
マイナンバーカードの保険証利用に関する注意点とデメリット
便利なマイナンバーカードの保険証利用ですが、いくつかの注意点や潜在的なデメリットも理解しておく必要があります。
全ての医療機関・薬局が対応しているわけではない(普及状況)
マイナンバーカードの保険証利用に対応するための顔認証付きカードリーダーの導入は進んでいますが、まだ全ての医療機関や薬局で利用できるわけではありません。受診前に、その医療機関が対応しているか確認しておくと安心です。
カードリーダーの不具合やシステムトラブルの可能性
稀に、カードリーダーの不具合やシステムメンテナンスなどで、マイナンバーカードによる資格確認がスムーズに行えない可能性もゼロではありません。
マイナンバーカードの紛失・盗難時のリスクと対処法
マイナンバーカードには多くの個人情報が含まれているため、紛失や盗難には十分注意が必要です。万が一紛失した場合は、速やかにマイナンバー総合フリーダイヤルに連絡し、カードの一時利用停止手続きを行い、警察に遺失届を提出し、市区町村窓口で再発行の手続きを行います。
プライバシーや情報漏洩への懸念と国の対策
マイナンバーカードに紐づく医療情報などのプライバシーや情報漏洩を懸念する声もあります。国は、情報連携を安全に行うためのセキュリティ対策や、本人の同意に基づかない情報利用の禁止など、厳格なルールを設けています。
従来の健康保険証との併用期間や今後の見通し
当面の間は、従来のカード型の健康保険証も引き続き発行・利用できる見込みですが、将来的にはマイナンバーカードへの一本化を目指す方針が示されています。今後の動向については、政府からの情報を注視する必要があります。
転職時の社会保険手続きにおける「マイナンバー」の役割
転職時には、健康保険だけでなく、雇用保険や年金の手続きにおいてもマイナンバー(個人番号)が必要となります。
雇用保険の手続き(離職票など)
離職時に会社から受け取る離職票には、マイナンバーを記載する欄があります。また、ハローワークでの失業保険の給付手続きの際にもマイナンバーの提示が求められます。
年金手帳の代わりに基礎年金番号とマイナンバーの連携
年金の手続きにおいても、マイナンバーと基礎年金番号が紐づけられていることで、手続きがスムーズに進むようになっています。
転職と健康保険・マイナンバーカードに関するQ&A
最後に、転職時の健康保険とマイナンバーカードに関するよくある質問をまとめました。
Q1: マイナンバーカードを持っていないと転職で不利になる?
A1: 現時点(2025年5月)で、マイナンバーカードの保有自体が転職の選考で有利・不利に働くことは基本的にありません。ただし、入社時の社会保険手続きなどでマイナンバーの提出は必須ですので、スムーズな手続きのためには取得しておくことが推奨されます。
Q2: マイナンバーカードの保険証利用登録はどこでできる?
A2: 前述の通り、マイナポータル(スマートフォンやPCから)、セブン銀行ATM、一部医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーなどで利用申込が可能です。
Q3: 転職後、マイナンバーカードの保険情報が更新されるまでどのくらいかかる?
A3: 新しい会社での健康保険加入手続きが完了し、その情報が健康保険組合や協会けんぽから審査支払機関を通じてマイナンバーカードのシステムに連携されるまでには、一定の時間がかかります。一般的には数日~数週間程度と言われていますが、状況によって異なります。具体的な期間については、新しい会社の人事担当者や加入する健康保険組合にご確認ください。
まとめ:マイナンバーカードを賢く活用し、転職時の健康保険手続きをスムーズに
転職時の健康保険手続きは、切れ目のない医療アクセスを確保し、安心して新しい生活をスタートさせるために非常に重要です。マイナンバーカードの保険証利用は、その手続きを簡便化し、様々なメリットをもたらす可能性がありますが、その仕組みや注意点を正しく理解しておくことが大切です。
退職が決まったら、まずはご自身のマイナンバーカードの状況(取得済みか、保険証利用申込済みか)を確認し、今後の手続きについて早めに情報収集を始めましょう。分からないことは、関係機関に積極的に問い合わせ、計画的に対応することで、スムーズな移行が可能になります。
あなたの転職が、健康面でも安心して進められるよう、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。