転職後に「税金が高くなった」と感じる?その理由と対処法
「転職したら、なんだか手取りが減った気がする…」「住民税の通知書を見て、思ったより金額が高くて驚いた…」。転職はキャリアの大きな転換期ですが、それに伴い税金の支払い方法や金額が変わることで、戸惑いを感じる方も少なくありません。
この記事では、転職後に「税金が高くなった」と感じる主な理由や、住民税・所得税の基本的な仕組み、そしてそのような状況にどう対処すれば良いのかについて、分かりやすく解説します。
なぜ転職後に「税金が高くなった」と感じることがあるのか?
転職後に税金の負担が増えたように感じる背景には、いくつかの一般的な理由が考えられます。
- 住民税の支払い方法の変更(特別徴収から普通徴収へ):
- 住民税の仕組み: 住民税は、前年の1月1日から12月31日までの所得に基づいて計算され、翌年の6月から翌々年の5月にかけて納付します。
- 会社員の場合(特別徴収): 在職中は、会社が毎月の給与から住民税を天引きし、代わりに納付してくれます(特別徴収)。
- 退職後の変化: 年の途中で退職し、すぐに次の会社で特別徴収の手続きが引き継がれない場合(または無職期間がある場合)、残りの住民税は「普通徴収」に切り替わり、自宅に納税通知書が送られてきて自分で納付する必要が生じます。
- 「高く感じる」理由: これまで毎月分割で天引きされていたものが、普通徴収では年4回(または一括)でまとめて納付するため、1回あたりの支払額が大きく感じられることがあります。また、退職して収入が減ったにもかかわらず、前年の所得に基づいて計算された住民税を支払うため、負担感が大きくなることがあります。
- 所得が増加した場合:
- 転職によって年収がアップした場合、当然ながら翌年度の住民税や、その年の所得税も増加します。これは喜ばしいことですが、手取り額の計算において税金の増加分を考慮しておく必要があります。
- 各種控除額の変動:
- 扶養控除の変更: 配偶者の収入が増えて扶養から外れたり、子どもが扶養の対象年齢を過ぎたりすると、扶養控除額が減り、結果として所得税や住民税が増えることがあります。
- 生命保険料控除や医療費控除など: 年末調整や確定申告で適用される各種所得控除の額が変わると、課税所得が増減し、税額も変動します。
- 年末調整が適切に行われていない可能性:
- 年の途中で転職した場合、前職の源泉徴収票を新しい会社に提出し、年末調整で1年間の所得を合算して税金の精算を行う必要があります。この手続きが適切に行われないと、正しい税額が計算されず、後で追加徴収されたり、逆に還付を受けられなかったりすることがあります。
- 所得税の源泉徴収区分の変更(稀なケース):
- 非常に稀なケースですが、何らかの理由で給与から源泉徴収される所得税の区分(甲欄、乙欄など)が変更され、一時的に天引きされる所得税額が増えることも考えられます。
【住民税】転職・退職時の支払いと注意点
住民税は、転職時に特に「高くなった」と感じやすい税金の一つです。
住民税の納付方法の変更
- 在職中: 毎月の給与から天引き(特別徴収)。
- 退職後(次の会社で特別徴収がすぐに始まらない場合):
- 1月1日~4月30日に退職: 原則として、最後の給与や退職金から5月分までの住民税が一括で天引きされます。
- 5月1日~5月31日に退職: 最後の給与から5月分が天引きされ、6月以降の新しい年度の住民税は普通徴収(自分で納付)となります。
- 6月1日~12月31日に退職: 退職月までは給与天引き、翌年5月までの残額は普通徴収となります(退職時に会社に申し出れば一括徴収も可能)。
- 普通徴収の場合: 市区町村から送られてくる納税通知書に従い、年4回(通常6月、8月、10月、翌年1月)または一括で納付します。
「高くなった」と感じる理由と対処法
- 前年の所得が基準: 住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、転職して収入が減ったとしても、翌年の5月までは前年の高い所得に基づいた税額を支払う必要があります。これが「高くなった」と感じる大きな理由です。
- 納付方法の変更による一時的な負担感: 毎月分割で支払っていたものが、年4回や一括になると、1回あたりの支払額が大きく感じられます。
- 対処法:
- 事前に納税資金を準備しておく: 退職前に、翌年の住民税額をある程度予測し、納税のための資金を準備しておきましょう。
- 市区町村役場への相談: どうしても納付が困難な場合は、お住まいの市区町村役場の税務課に相談し、分割納付や減免制度(該当する場合)について確認してみましょう。
【所得税】年末調整と確定申告での精算
所得税は、毎月の給与から源泉徴収されていますが、年間の正しい税額は年末調整または確定申告で精算されます。
年末調整
- 年の途中で転職し、年末時点で新しい会社に在籍している場合: 原則として、新しい勤務先で年末調整を行います。その際、**前職の会社から発行された「源泉徴収票」**を提出する必要があります。これにより、その年の1月1日から12月31日までの全ての給与所得を合算し、正しい所得税額が計算され、過不足が精算されます。
- 源泉徴収票の提出が間に合わない場合: 新しい会社の年末調整に間に合わない場合は、自身で確定申告を行う必要があります。
確定申告
以下のような場合は、自身で確定申告を行う必要があります。
- 年の途中で退職し、年内に再就職しなかった場合。
- 転職先に前職の源泉徴収票を提出できなかった場合。
- 給与所得以外の所得(副業など)が年間20万円を超える場合。
- 医療費控除や寄付金控除、住宅ローン控除(1年目など)を受けたい場合。
確定申告を行うことで、払いすぎた所得税が還付されたり、不足分を納付したりします。この際も、給与所得があった全ての会社から発行された源泉徴収票が必要になります。
税金の負担感を軽減するためにできること(一般的な対策)
転職後に税金が高くなったと感じる場合、直接的に税額を減らすことは難しいですが、以下のような点を意識することで、将来的な負担感を軽減できる可能性があります。
- 各種所得控除の活用: 生命保険料控除、医療費控除、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金控除、ふるさと納税の寄付金控除など、利用できる所得控除を最大限に活用することで、課税所得を減らし、結果として所得税や住民税を軽減できる場合があります。これらの多くは年末調整または確定申告で手続きが必要です。
- 計画的な貯蓄と家計管理: 転職による収入の変動や、住民税の支払い方法の変更などに備え、日頃から計画的に貯蓄を行い、家計管理をしっかりと行うことが大切です。
- キャリアプランと収入の見通し: 長期的なキャリアプランを考え、スキルアップや経験を積むことで、将来的な収入増を目指すことも、結果的に税金の負担感を相対的に下げることに繋がります。
まとめ:転職時の税金は、仕組みを理解し、計画的な対応を
転職後に「税金が高くなった」と感じる主な理由は、住民税の支払い方法の変更や、前年の所得に基づいて課税される仕組みによるものです。また、所得の増加や控除額の変動も影響します。
大切なのは、これらの税金の基本的な仕組みを理解し、転職のタイミングや自身の状況に合わせて、必要な手続き(年末調整のための源泉徴収票の提出、確定申告など)を適切に行うことです。そして、住民税の支払いなど、事前に予測できる支出に対しては、計画的に資金を準備しておくことが、家計への負担感を和らげる上で重要となります。
不明な点や不安なことがあれば、遠慮なく勤務先の人事・経理担当者、お住まいの市区町村役場、あるいは税務署や税理士といった専門家に相談しましょう。正しい知識と計画的な対応で、転職後の税金に関する不安を解消し、新しいキャリアに集中できる環境を整えましょう。