転職する人の「割合」は?データから見る最新動向とキャリア選択のヒント
「周りで転職する人が増えてきたけど、実際どのくらいの人が転職しているんだろう?」「自分も転職を考えているけれど、一般的な傾向はどうなのかな?」――キャリアを考える上で、他の人がどのような動きをしているのか、転職市場全体の「割合」や「傾向」が気になる方は少なくないでしょう。
この記事では、公的な統計データや民間の調査結果などを参考に、転職する人の割合が近年どのように推移しているのか、年齢別や産業別ではどのような特徴が見られるのか、そしてどのような理由で転職を決意する人が多いのかといった点を、分かりやすく解説します。これらの情報を知ることは、ご自身の転職活動を客観的に見つめ直し、より良いキャリア選択をするための一助となるかもしれません。
日本の転職者数の「割合」:近年の動向
まず、日本全体でどのくらいの人が転職しているのか、その割合(転職者比率)を見てみましょう。
総務省統計局が実施している「労働力調査」は、日本の就業・不就業の実態を把握するための基幹統計調査であり、転職者数や転職者比率に関する詳細なデータを提供しています。
近年の傾向として、転職者数および転職者比率は増加傾向にあります。
例えば、総務省統計局の「労働力調査(詳細集計)2023年(令和5年)平均結果」によると、2023年の転職者数は328万人となり、前年に比べ25万人増加し、2019年以来4年ぶりに増加しました。就業者に占める転職者の割合である転職者比率も4.8%と、前年に比べ0.3ポイント上昇しています。
また、転職等希望者(現在の仕事を続けながら、転職や追加の仕事を希望している人)の数も増加傾向にあり、2023年には1000万人を超えるなど、過去最多を更新する動きが見られます。これは、働き方の多様化やキャリアに対する意識の変化などを背景に、より多くの人が積極的にキャリアを見直したり、新しい可能性を模索したりしていることの表れと言えるでしょう。
コロナ禍で一時的に転職市場が冷え込んだ時期もありましたが、経済活動の再開とともに、再び人材の流動化が進んでいる様子がうかがえます。
【年齢別】転職する人の割合:どの年代が多い?
転職する人の割合は、年齢によっても特徴が見られます。
一般的に、20代の転職者比率が他の年代と比較して高い傾向にあります。これは、新卒で入社した会社で数年間経験を積んだ後、より自分に合った仕事やキャリアを求めて、あるいはキャリアアップを目指して転職活動を行う人が多いためと考えられます。
例えば、リクルートエージェントの調査(2023年7月~12月)によると、転職決定者の平均年齢は35歳で、年齢別の割合では25~29歳が最も多く(35.00%)、次いで30~34歳(23.45%)となっています。
一方で、近年では30代~50代のミドル世代の転職も活発化しているというデータも見られます。マイナビキャリアリサーチLabの「転職動向調査2024年版(2023年実績)」によると、2023年の正社員転職率は7.5%と高水準で推移しており、転職者のうち約半数が30~50代のミドル世代男性であったと報告されています。これは、専門性やマネジメント経験を持つミドル人材への企業の期待が高まっていることや、人生100年時代を見据えてミドル世代自身がキャリアを見直す動きが広がっていることなどが背景にあると考えられます。
つまり、どの年代においても転職は一般的なキャリア選択の一つとなっており、それぞれの年代で異なる動機や目的を持って、多くの人が新しいキャリアに挑戦していると言えるでしょう。
【産業別】転職する人の割合:どの分野で動きが活発?
転職者の動きは、産業によっても差が見られます。
- 転職者比率が高い傾向にある産業: 一般的に、「宿泊業、飲食サービス業」や「生活関連サービス業、娯楽業」などは、人の入れ替わりが比較的多く、転職者比率が高い傾向にあります。これは、非正規雇用の割合が高いことや、キャリアパスの多様性などが影響していると考えられます。
- 近年、転職者数が増加している産業: 「情報通信業」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などを背景に、就業者数自体が増加しているとともに、転職者数も大きく増加しており、転職者比率も上昇傾向にあります。専門スキルを持つ人材の需要が高く、より良い条件や新しい技術を求めて転職する人が多いと考えられます。 また、「医療、福祉」分野も、高齢化社会の進展に伴い人材需要が高く、転職者数が増加している産業の一つです。
このように、産業構造の変化や社会的なニーズによって、転職市場の活発さや求められる人材像も変化しています。
なぜ転職するのか?主な理由の割合
人々が転職を決意する理由も様々です。複数の調査で上位に挙がることが多い転職理由としては、以下のようなものがあります。
- 給与・待遇への不満: 「給与が低い・昇給が見込めない」「労働時間・休日などの労働条件が悪い」といった、現在の待遇に対する不満は、常に転職理由の上位に挙げられます。
- 人間関係・職場の雰囲気: 「社内の雰囲気が悪い」「人間関係がうまくいかない」「上司や経営者の仕事の仕方が気に入らない」といった、職場環境や人間関係に関する悩みも、大きな転職動機となります。
- 仕事内容・やりがい: 「仕事内容が合わない」「もっとやりがいのある仕事がしたい」「キャリアアップ・スキルアップが望めない」といった、仕事そのものに対する不満や成長意欲も、転職を考えるきっかけとなります。
- 会社の将来性への不安: 「業界や会社の先行きが不安」「会社の評価方法に不満がある」といった、組織全体に対する不信感や将来への懸念も、転職を後押しする要因です。
dodaの「転職理由ランキング」(2024年版)によると、総合1位は「給与が低い・昇給が見込めない」(33.6%)、2位は「人間関係が悪い/うまくいかない」(22.7%)、3位は「社内の雰囲気が悪い」(21.1%)となっています。
これらのデータは、多くの人が現在の職場に何らかの課題を感じ、より良い労働条件や職場環境、そして自己成長の機会を求めて転職という選択をしていることを示唆しています。
「割合」のデータから見えてくることと、転職活動への活かし方
これらの「割合」に関するデータは、あくまでマクロな視点での傾向を示すものです。しかし、以下のような点で、ご自身の転職活動を考える上でのヒントになるかもしれません。
- 転職は特別なことではないという認識: 多くの人が転職を経験し、キャリアを見直しているという事実は、転職に対する心理的なハードルを下げる一助となるでしょう。
- 自身の年齢や状況を客観的に捉える: 同年代の転職者の動きや、自身が属する(あるいは目指す)業界の動向を知ることで、転職市場における自分の立ち位置を客観的に考えるきっかけになります。
- 企業選びの参考情報として: 特定の業界で転職が活発であるということは、それだけ人材の需要が高い、あるいは新しいスキルが求められているといった背景があるかもしれません。
- 面接対策のヒントとして: 多くの人がどのような理由で転職しているのかを知ることは、自身の転職理由をより説得力のある形で伝えるための参考になるかもしれません。
ただし、最も重要なのは「あなた自身の状況と目的」です。
全体の割合や傾向に一喜一憂するのではなく、あくまで参考情報の一つとして捉え、あなた自身のキャリアプランや価値観に基づいて、転職の是非やタイミング、そして目指すべき方向性をじっくりと考えることが何よりも大切です。
まとめ:データは参考に、自分の「軸」で判断を
転職する人の割合は年々変化し、年齢や業界によってもその傾向は異なります。これらのデータは、転職市場全体の動きを把握し、ご自身のキャリアを客観的に見つめ直す上での一つの手がかりとなります。
しかし、最終的に転職するかどうか、そしてどのような道を選ぶのかは、あなた自身の判断です。全体の「割合」に流されることなく、なぜ自分は転職したいのか、転職によって何を実現したいのかという「自分自身の軸」をしっかりと持ち、情報収集と自己分析を丁寧に行うことが、後悔のない、そしてより満足度の高いキャリアを築くための最も確実な道と言えるでしょう。