今の会社に留まるリスクとは？「転職しない」ことの意外なデメリット

終身雇用制度が過去のものとなり、働き方やキャリアに対する価値観が多様化する現代において、「転職」はキャリアアップや自己実現のための一般的な選択肢の一つとなりました。その一方で、慣れ親しんだ環境で働き続ける「転職しない」という選択もまた、一つのキャリア戦略と言えるでしょう。しかし、安定や安心感と引き換えに、見過ごしてはならないデメリットが潜んでいる可能性も否定できません。

この記事では、現在の職場に留まり続けること、つまり「転職しない」という選択によって生じる可能性のある意外なデメリットについて、多角的に考察していきます。

「転職しない」ことで生じる可能性のある主なデメリット

「石の上にも三年」という言葉がありますが、変化の激しい現代においては、必ずしも一つの場所に長く留まることだけが正解とは限りません。転職しないことによって、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

スキルアップ・キャリアアップの停滞

同じ環境に長くい続けることは、安心感がある反面、自身の成長機会を制限してしまうことがあります。

• 業務のマンネリ化と成長鈍化: 長年同じ業務に携わっていると、仕事がルーティン化し、新たな挑戦や刺激が少なくなることがあります。これにより、新しいスキルや知識を習得する意欲が低下し、成長が停滞してしまう可能性があります。
• 昇進・昇格の限界: 企業の規模や組織構造によっては、昇進や昇格のポストが限られている場合があります。どれだけ努力しても、ポジションの空きがなければキャリアが頭打ちになってしまうことも考えられます。
• 市場価値の相対的低下: 外部の労働市場は常に変化しており、求められるスキルも進化しています。社内で通用するスキルだけを磨いていると、知らず知らずのうちに自身の市場価値が相対的に低下してしまうリスクがあります。

年収アップの機会損失

収入面においても、転職しないことが必ずしも最善とは限りません。

• 内部昇給の限界: 多くの企業では定期昇給がありますが、その幅は限定的であることが少なくありません。業界や職種によっては、転職によって大幅な年収アップを実現できるケースと比較すると、見劣りしてしまうことがあります。
• 企業の成長性への依存: 自身の給与水準は、所属する企業の業績や業界全体の成長性に大きく左右されます。もし企業や業界が停滞期に入れば、個人の努力だけでは給与アップが難しくなることもあります。
• 年功序列型賃金の課題: 未だに年功序列型の賃金体系を採用している企業の場合、個人の成果が給与に反映されにくく、モチベーションの維持が難しいと感じるかもしれません。

視野の狭まり・価値観の固定化

長期間同じ組織文化や人間関係の中に身を置くことで、無意識のうちに視野が狭まり、考え方が固定化してしまう可能性があります。

• 外部情報の遮断: 新しいビジネスモデルや技術、異なる価値観に触れる機会が減少し、自社のやり方や考え方が「当たり前」となりがちです。
• 柔軟な思考の阻害: 多様な視点や変化を受け入れる柔軟性が失われ、新しいアイデアや改善提案が出にくくなることも考えられます。

環境変化への対応力の低下

安定した環境に慣れ親しむことは、変化に対する耐性や適応力を弱めてしまう可能性があります。

• 変化への抵抗感: 組織再編や事業方針の転換、あるいは予期せぬ業績悪化といった変化に直面した際に、迅速に対応したり、新しい状況に適応したりすることが難しくなるかもしれません。
• 新たな挑戦へのためらい: 未知の環境へ飛び込むことへの不安が大きくなり、新しいことへの挑戦をためらってしまう傾向が強まることがあります。

社内での人間関係の固定化・悪化リスク

人間関係は働く上で重要な要素ですが、同じ環境に長くいることで、良くも悪くも関係性が固定化されます。

• 関係性のマンネリ化: 長年同じメンバーで仕事をしていると、刺激が少なくなり、関係性がマンネリ化することがあります。
• トラブルの深刻化: もし合わない上司や同僚がいる場合、異動などの機会がなければ、その関係性が改善されず、ストレスが長期化・深刻化するリスクがあります。

企業の将来性リスクへの依存

自身のキャリアや生活を、一つの企業の将来性に大きく委ねることになります。

• 業界の衰退や企業の業績悪化の影響: もし所属する業界が斜陽化したり、企業の業績が大幅に悪化したりした場合、自身の雇用や待遇もその影響を直接受けることになります。
• 「共倒れ」のリスク: 企業が倒産するような事態になれば、長年貢献してきたとしても、職を失ってしまうリスクがあります。

本当にやりたいことへの挑戦機会の逸失

現状維持を優先するあまり、心の中で本当に挑戦したいと思っている仕事や、興味のある分野への一歩を踏み出せずにいる可能性があります。

• タイミングの逸失: 「いつかは挑戦したい」と思いながらも日々の業務に追われ、気づいた時には年齢やスキルの面で挑戦が難しくなっていた、ということもあり得ます。
• 後悔の念: キャリアの終盤になって、「あの時、挑戦しておけばよかった」と後悔する可能性も否定できません。

現状への不満の慢性化

職場に対して何らかの不満（仕事内容、人間関係、待遇など）を抱えながらも、「転職は大変だから」「今のままでいいか」と諦めてしまうと、その不満が解消されないまま慢性化し、日々のモチベーション低下や精神的なストレスに繋がることがあります。

外部の労働市場からの乖離

長く同じ会社に勤めていると、自分自身のスキルや経験が、社外の労働市場でどの程度評価されるのか、客観的に把握することが難しくなります。いざ転職を考え始めた時に、自身の市場価値と外部の評価との間に大きなギャップがあることに気づき、戸惑うことも少なくありません。

「転職しない」デメリットを最小限にするために考えるべきこと

「転職しない」という選択をする場合でも、これらのデメリットを意識し、主体的にキャリアを築いていく姿勢が重要です。

• 定期的な自己分析とキャリアプランの見直し: 今の会社で何を成し遂げたいのか、3年後、5年後、どのような自分になっていたいのかを定期的に見つめ直し、キャリアプランをアップデートしましょう。
• 社内でのキャリアアップ・スキルアップの模索: 現状に満足せず、社内での異動希望を出す、新しいプロジェクトに積極的に参加する、資格取得に挑戦するなど、自身の成長に繋がる行動を意識しましょう。
• 社外での学習・ネットワーキング: 業界セミナーへの参加、副業、プロボノ活動などを通じて、社外の新しい情報や人脈に触れ、視野を広げ、自身のスキルを客観的に評価する機会を持ちましょう。
• 現状に満足せず、常に危機感を持つ: 所属する業界の動向や自社の経営状況について常にアンテナを張り、将来的なリスクに対する意識を持っておくことが大切です。
• いつでも転職できる準備をしておく意識: 自身の市場価値を定期的に把握し、必要に応じてスキルをアップデートするなど、「いつでも動ける」という状態を維持しておくことは、精神的な余裕にも繋がります。

まとめ

「転職しない」という選択は、安定や慣れ親しんだ環境で腰を据えて貢献できるという大きなメリットがある一方で、本記事で見てきたような成長機会の損失や将来的なリスクも伴う可能性があります。重要なのは、現状に安住するのではなく、常に自身のキャリアと真摯に向き合い、主体的にキャリアをデザインしていくという意識を持つことです。

どのような選択をするにしても、その選択に責任を持ち、常に自己成長を心がけることが、変化の激しい時代を生き抜く上で不可欠と言えるでしょう。

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岩下隼人

ロイヤル合同会社　代表

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ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。