転職と源泉徴収票:1月入社の場合、いつの分をどうする?
転職活動を経て、新しい会社への入社が決まると、様々な手続きが必要になります。その中でも、特に入社時期が年の途中である場合、多くの人が「源泉徴収票」の扱いで疑問を持つのではないでしょうか。「1月に入社する場合、前の会社の源泉徴収票は必要なの?」「いつもらえるもの?」「なぜ提出するの?」など、具体的な対応に迷うこともあるでしょう。
この記事では、特に「1月入社」というケースを念頭に、転職時に必要となる源泉徴収票について、いつの時点のものが、いつ発行され、なぜ新しい勤務先に提出する必要があるのか、その基本的なルールや注意点を分かりやすく解説します。スムーズな年末調整や、場合によっては確定申告のために、ぜひ参考にしてください。
源泉徴収票とは?その役割を再確認
まず、源泉徴収票がどのような書類で、どんな役割を持つのかを簡単に押さえておきましょう。
源泉徴収票は、1年間に会社から支払われた給与・賞与の総額(支払金額)、給与所得控除後の金額、所得控除の額の合計額、そしてその年に源泉徴収された所得税の額などが記載された書類です。
つまり、「あなたがその年の1月1日から12月31日までの間に、その会社からいくら給料をもらい、いくら所得税をあらかじめ納めたか」を証明する公式な書類です。これは、会社が従業員に代わって所得税を計算し、毎月の給与から天引きして国に納める「源泉徴収制度」に基づいています。
1月入社の場合、転職先に提出する源泉徴収票は必要?
転職先の会社から「前職の源泉徴収票を提出してください」と言われた場合、それは**「その年の1月1日から、前職の退職日までに支払いを受けた給与等に関する源泉徴収票」**を指します。
1月入社のケースで具体的に見てみましょう:
あなたが2024年12月末でA社を退職し、2025年1月1日にB社へ入社したとします。
この場合、B社が2025年の年末に行う年末調整では、あなたが2025年中にB社から受け取る給与のみが対象となります。2025年中にA社からの給与支払いがないため、原則として、B社にA社発行の源泉徴収票(この場合は2024年分のもの)を提出する必要はありません。
なぜなら、年末調整は「その年(1月1日から12月31日まで)の所得」について行われるからです。 1月入社であれば、その年の所得は新しい会社B社から支払われるものだけになります(他に副業などの所得がない限り)。
ただし、例外的なケースや注意点があります。
- 前職の最終給与の支払いが1月以降になる場合: 例えば、A社の給与の締め日が月末で、支払日が翌月25日だったとします。2024年12月末で退職しても、2024年12月分の給与が2025年1月25日に支払われる場合、この給与は「2025年の所得」となります。この場合は、A社から「2025年分の給与(1月支払い分のみ)に関する源泉徴収票」が発行されるため、これをB社に提出する必要があります。
- 企業からの指示を確認する: 会社によっては、年末調整の目的以外(例えば、過去の収入状況の確認のためなど、稀なケースですが)で前年分の源泉徴収票の提出を求めることもあり得ます。まずは転職先の人事・経理担当者の指示をよく確認しましょう。
前年(2024年分)の源泉徴収票の使い道は?
A社から発行される「2024年分の源泉徴収票」は、B社での2025年の年末調整には通常使用しません。しかし、あなたが2024年中にA社を退職し、その後年内に再就職しなかった場合や、医療費控除などで2024年分の確定申告を行う場合には、この2024年分の源泉徴収票が必要になります。大切に保管しておきましょう。
源泉徴収票は「いつ」もらえる?発行タイミング
源泉徴収票が発行されるタイミングは、あなたが在職中か、あるいは退職するかによって異なります。
在職中の場合(毎年発行されるもの)
- 通常、会社は従業員のその年1年間の所得と所得税額を確定させる年末調整を行った後、源泉徴収票を発行します。
- 一般的には、その年の12月の給与計算が終わり、年末調整が完了した後に、12月の給与明細と一緒に、あるいは翌年の1月初旬頃に会社から交付されるのが通例です。
年の途中で退職する場合
- 所得税法第226条により、会社は退職者に対して、退職日から1ヶ月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。
- 多くの場合、最後の給与が支払われた後、または退職に関する事務手続きが完了した後に、自宅へ郵送されてくるのが一般的です。手渡しで受け取るケースもあります。
- 1月入社のために前年12月末で退職した場合:
- 前年分の源泉徴収票(例:2024年分): 通常、12月の給与明細と同時か、退職後1ヶ月以内(つまり2025年1月末頃まで)に発行されます。
- 当年分の源泉徴収票(例:2025年分、もし1月に前職からの給与支払いがある場合): 2025年1月以降に支払われる給与があれば、その支払い後に発行されます。これも退職(またはその年の最後の給与支払い)から1ヶ月以内が目安です。
- 退職前に、いつ頃、どのような方法(郵送か手渡しなど)で源泉徴収票がもらえるのかを、会社の人事・経理担当者に確認しておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
源泉徴収票に関する注意点と対処法
受け取ったら必ず内容を確認
源泉徴収票が手元に届いたら、以下の項目に誤りがないか必ず確認しましょう。
- 氏名、住所
- 支払金額(その年に支払われた給与・賞与の総額)
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除の額の合計額
- 源泉徴収税額
- (該当する場合)社会保険料等の金額、生命保険料の控除額など
- 支払者(会社)の名称、所在地
もし記載内容に誤りや不明な点があれば、速やかに発行元の会社に問い合わせて確認・訂正を依頼しましょう。
紛失してしまった場合
源泉徴収票を紛失してしまった場合は、発行元の会社の人事部や経理部などの担当者に連絡し、再発行を依頼しましょう。 再発行は会社の義務ですので、基本的には応じてもらえます。
- 依頼方法: 電話やメールで、「〇〇年分の源泉徴収票を紛失したため、再発行をお願いいたします」と伝えれば問題ありません。
- 再発行にかかる時間: 会社の対応スピードにもよりますが、通常は1週間~3週間程度で手元に届くことが多いようです。
会社から源泉徴収票がもらえない・届かない場合
退職後1ヶ月を過ぎても源泉徴収票が送られてこない、あるいは会社に発行を依頼しても応じてもらえない場合は、以下の対応を検討しましょう。
- まずは会社に再度、丁寧に発行を依頼する: 単なる手続きの遅れや手違いである可能性もあります。
- 税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する: 会社に催促しても対応してもらえない場合は、所轄の税務署にこの届出書を提出することができます。税務署から会社に対して発行を指導してくれることがあります。この際、給与明細書など、給与の支払いを証明できる書類があると手続きがスムーズです。
新しい会社への提出について最終確認を
1月入社の場合、基本的には「前年分の源泉徴収票」の提出は不要なケースが多いですが、最終的には転職先の会社の人事・経理担当者の指示に従うことが最も重要です。
入社手続きの際に、どのような書類が必要か、いつまでに提出すれば良いかなどをしっかりと確認し、不明な点があれば早めに質問するようにしましょう。
まとめ:1月入社の場合、年末調整の対象は「新しい会社での所得のみ」が基本
1月に新しい会社へ入社する場合、その年の年末調整は、原則として新しい会社で受け取る給与のみが対象となります。そのため、前職の「前年分の」源泉徴収票を新しい会社に提出する必要は通常ありません。
ただし、前職の最終給与の支払いが年をまたいで1月以降になる場合は、その「当年分の」源泉徴収票が必要になることがあります。
源泉徴収票は、あなたの所得と納めた税金を証明する重要な書類です。発行のタイミングや提出の要否について正しく理解し、必要な場合は確実に手続きを行いましょう。不明な点は、遠慮なく発行元の会社や転職先の人事・経理担当者、あるいは税務署に確認することが大切です。