月途中での転職、知っておきたいデメリットとは?給与や保険、手続きの注意点
転職活動が実を結び、新しい職場への期待に胸を膨らませる一方、退職日や入社日のタイミングについて悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。一般的には、キリの良い月初や月末に入退社するケースが多いですが、プロジェクトの都合や企業側の要望などにより、やむを得ず月の途中で転職することもあるでしょう。
こうした月途中での転職には、給与計算や社会保険の手続きなどで、事前に知っておきたいデメリットや注意点が存在します。この記事では、月途中での転職によって生じる可能性のある一般的なデメリットと、その影響を最小限に抑えるためのポイントについて詳しく解説します。
月途中での転職で考えられる主なデメリット
月の途中で退職したり、新しい会社に入社したりする場合、以下のような点で不利益が生じる可能性があります。
給与計算に関するデメリット
毎月の給与は、日々の生活に直結する重要な要素です。月途中での入退社は、給与額に影響を与えることがあります。
- 退職月の給与が日割り計算になる可能性: 多くの企業では、月の途中で退職した場合、その月の給与は在籍日数に応じた日割り計算となることが一般的です。つまり、満額支給されない可能性があるため、退職月の収入が通常よりも少なくなることを念頭に置く必要があります。ただし、企業の給与規定によっては「欠勤控除」という形で満額から欠勤分を差し引くケースや、稀に満額支給されるケースもありますので、就業規則を確認することが大切です。
- 入社月の給与が日割り計算になる可能性: 同様に、月の途中で新しい会社に入社した場合も、最初の給与は勤務日数に応じた日割り計算となるのが一般的です。初月の収入が想定より少なくなることを理解しておきましょう。
- 賞与(ボーナス)の査定期間への影響: 賞与は、通常、特定の査定期間中の在籍や貢献度に基づいて支給額が決定されます。月の途中で退職したり入社したりすると、この査定期間を満たせない、あるいは一部しか含まれないことになり、賞与額が減額されたり、支給対象外となったりする可能性があります。
社会保険料に関するデメリット
健康保険や厚生年金といった社会保険料の取り扱いも、月途中での転職において注意が必要な点です。
- 社会保険料は月単位で発生(日割りなし): 社会保険料は、月末に在籍している会社でその月分が徴収されるのが原則です(資格取得月に資格喪失した場合は除く)。そのため、月の途中で入社した場合でも、入社日から月末までが1日でもあれば、その月の1ヶ月分の保険料が翌月の給与から天引きされます。日割り計算はありません。
- 退職月の社会保険料の取り扱い:
- 月末退職の場合: その月の社会保険料は退職する会社で徴収されます。
- 月末より前に退職した場合: 退職する会社ではその月の社会保険料は徴収されません(前月分までが徴収対象)。この場合、転職先への入社が翌月以降になる場合は、国民健康保険と国民年金に自身で加入し、保険料を納付する必要が生じます。もし同月内に新しい会社に入社すれば、新しい会社でその月の保険料が徴収されます。
- いわゆる「二重払い」と誤解されるケースがありますが、これは制度上、それぞれの加入期間に対して保険料を納めているためであり、重複して支払っているわけではありません。しかし、タイミングによっては一時的に手取り額が減ったように感じる場合があります。
税金(住民税)に関するデメリット
住民税の支払い方法にも変更が生じることがあります。
- 退職後の住民税の支払い方法の変更: 会社員の場合、住民税は毎月の給与から天引きされる「特別徴収」が一般的です。しかし、退職すると特別徴収ができなくなるため、残りの住民税は自身で納付する「普通徴収」に切り替わります。この場合、市区町村から送られてくる納付書を使って、一括または分割(通常4期)で納付する必要があり、一時的にまとまった金額の支払いが発生することがあります。退職時に会社に依頼すれば、最後の給与や退職金から残額を一括で天引きしてもらえる場合もあります。
有給休暇に関するデメリット
有給休暇の付与や消化においても、影響が出る可能性があります。
- 入社時の有給休暇付与のタイミング: 新しい会社での有給休暇は、労働基準法に基づき、原則として入社日から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に付与されます。月の途中で入社した場合でも、この起算日は入社日となります。入社後すぐに有給休暇を使えるわけではないことを理解しておく必要があります。
- 退職時に有給休暇を消化しきれない可能性: 退職日までの期間が短い場合や、引き継ぎ業務に追われるなどして、残っている有給休暇を計画的に消化しきれないまま退職日を迎えてしまう可能性があります。
職場への馴染みやすさ・研修に関するデメリット
業務の区切りや社内のイベントなどが月単位で行われることもあり、月途中での参加は若干の戸惑いを生むかもしれません。
- 中途半端なタイミングでの参加感: 新入社員向けの研修や部署の定例ミーティングなどが月初からスタートしている場合、途中からの参加となることで、情報共有がスムーズにいかなかったり、周囲に馴染むのに時間がかかったりする可能性があります。
- 同期入社がいないことによる疎外感: 新しい環境に同時にスタートする仲間がいない場合、人によっては心細さや疎外感を感じることがあるかもしれません。
- 業務の引き継ぎ: 退職する側も入社する側も、月途中での引き継ぎは業務の区切りがつけにくく、通常よりも丁寧なコミュニケーションや調整が必要になることがあります。
年末調整に関するデメリット
年末調整の手続きにも影響が出ることがあります。
- 自分で確定申告が必要になるケース: 年の途中で退職し、その年内に再就職しなかった場合は、自身で確定申告を行い、所得税の精算をする必要があります。
- 転職先での年末調整手続き: 年内に再就職した場合、新しい会社で年末調整を受けることになりますが、その際には前職の源泉徴収票が必要です。源泉徴収票の入手が遅れると、年末調整の手続きがスムーズに進まないことがあります。
退職金に関するデメリット
企業の退職金規定が勤続期間を基に算定される場合、月の途中の退職が、ごくわずかですが算定期間に影響し、結果的に退職金額に影響する可能性もゼロではありません。これは企業の規定によります。
月途中での転職デメリットを最小限にするためのポイント
これらのデメリットを完全に回避することは難しいかもしれませんが、以下の点を意識することで、その影響を最小限に抑えることができます。
- 入社日・退職日の調整を可能な範囲で行う: 給与や社会保険料の観点からは、一般的に「月末退職・月初入社」が有利とされています。必ずしも希望通りになるとは限りませんが、企業側と相談し、双方にとって無理のない、かつデメリットの少ない日程を検討しましょう。
- 雇用契約書・就業規則の確認: 入社前には雇用契約書を、退職前には現職の就業規則をしっかりと確認しましょう。給与の日割り計算の有無、賞与の査定期間や支給条件、退職金の規定などを事前に把握しておくことが重要です。
- 社会保険・税金の手続きを事前に把握する: 不明な点があれば、退職する会社の人事担当者や、新しい会社の人事担当者、あるいは年金事務所や市区町村の役所の窓口に事前に確認し、必要な手続きを漏れなく行うようにしましょう。
- 有給休暇の計画的な消化(退職時): 退職が決まったら、残りの有給休暇日数を確認し、上司と相談の上、計画的に消化するようにしましょう。
- 新しい職場へのキャッチアップを意識する: 月途中の入社で多少の戸惑いがあったとしても、不明な点は積極的に質問し、周囲とのコミュニケーションを大切にすることで、早期に新しい環境に馴染む努力をしましょう。
まとめ
月途中での転職は、給与計算や社会保険、税金の手続きなど、細かな点でデメリットが生じる可能性があります。しかし、事前にこれらの点を理解し、企業側としっかりとコミュニケーションを取りながら準備を進めることで、その影響を最小限に抑えることは十分に可能です。
ご自身の状況や転職先の企業の規定などをよく確認し、後悔のないスムーズな転職を実現してください。