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Twitter(X)のポイズンピルとは?イーロン・マスク氏の買収劇を分かりやすく解説

岩下隼人
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2022年、世界中の注目が一点に集まった、実業家イーロン・マスク氏によるSNS大手・Twitter社(現X社)の買収劇。この巨大M&Aの序盤、Twitter社がマスク氏の猛攻に対抗すべく打ち出した「切り札」が、買収防衛策の代名詞ともいえる**「ポイズンピル」**でした。

「なぜ巨大企業のTwitterがポイズンピルを導入したの?」

「その後の歴史的な買収劇に、どう影響したんだろう?」

この記事では、世界が固唾をのんで見守ったこの買収劇の裏側と、そこで重要な役割を果たしたポイズンピルについて、時系列に沿って初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

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発端:イーロン・マスク氏による突然の買収提案

全ての始まりは、2022年4月。テスラやスペースXを率いるイーロン・マスク氏が、Twitter社の筆頭株主になったことが明らかになった直後、さらに世界を驚かせる行動に出ます。

総額約440億ドル(当時のレートで約5兆円以上)で、Twitter社を丸ごと買収するという、破格の提案を電撃的に突きつけたのです。

これは、Twitter社の経営陣の合意を得ないまま進められた、いわば「敵対的」なアプローチでした。突然の提案に対し、Twitter社の取締役会は「提示された金額は、会社の真の価値を反映していない」などとして、すぐには賛同しませんでした。

そして、マスク氏による強引な株式の買い増しを防ぎ、他の選択肢(他の買い手を探すなど)を検討する時間を確保するため、対抗策としてポイズンピルの導入を決定したのです。

Twitterが導入したポイズンピル(ライツプラン)の仕組み

Twitter社が導入したポイズンピルは、正式には「期間限定の株主権利プラン(Limited Duration Shareholder Rights Plan)」と呼ばれるもので、その仕組みは典型的なものでした。

  • 発動条件(トリガー)「特定の株主(=イーロン・マスク氏)が、取締役会の承認なしに株式の保有率を**15%**以上に高めようとした場合」に発動する。
  • 仕組みもしトリガーが引かれた場合、マスク氏**”以外”**のすべての株主は、市場価格の半額という非常に有利な価格で、追加のTwitter株を購入できる権利が与えられる。

この仕組みが発動すれば、市場に出回る株式数が一気に増加し、マスク氏の持株比率は大幅に薄められ(希薄化)、買収を完了させるためには天文学的な追加資金が必要となります。これにより、マスク氏の買収意欲を削ぎ、計画を困難にさせるのが狙いでした。

意外な展開:交渉、そして買収合意へ

ポイズンピルを導入し、徹底抗戦の構えを見せたTwitter社。しかし、その後の展開は非常にスピーディーでした。

ポイズンピルの真の役割

ポイズンピルを導入したことで、Twitter社はマスク氏による一方的な株式買い増しを一時的にブロックし、冷静に交渉するための**「時間」と「交渉の場」**を確保することに成功しました。防衛策は、ただ買収を拒否するためだけでなく、相手を交渉のテーブルに着かせるための強力なカードにもなるのです。

交渉と合意

マスク氏が、買収に必要な資金を金融機関などから確保した具体的な計画を提示したことなどを受け、Twitter社の取締役会は態度を軟化させます。ポイズンピル導入の発表から、わずか10日後の2022年4月25日、取締役会は一転してマスク氏の買収提案を受け入れることを決定しました。

これにより、Twitter社が用意したポイズンピルは、実際に一度も発動されることなく、その役目を終えたのです。

(その後、マスク氏が一度は買収の撤回を表明するなど紆余曲折がありましたが、最終的には2022年10月に買収は完了し、Twitter社はマスク氏の所有となりました。)

なぜこの事例は世界的に注目されたのか?

この一件は、数あるポイズンピルの事例の中でも、特に世界史に残るものとなりました。

  1. 桁違いのスケール買収対象が世界的な巨大プラットフォーム企業であり、仕掛けたのが世界一の富豪とも言われるイーロン・マスク氏だったという、その規模と話題性が他のM&Aとは比較になりませんでした。
  2. ポイズンピルの「教科書的な使い方」敵対的なアプローチに対し、まずはポイズンピルで時間的猶予を作り、交渉のテーブルに着く。そして最終的に、会社(と株主)にとって受け入れ可能な条件を引き出して合意に至る。この一連の流れは、ポイズンピルの古典的かつ効果的な活用事例として、経営学や法学の世界でも注目されました。
  3. 驚異的なスピード感ポイズンピルの導入決定から、買収合意の発表までがわずか10日ほどという、非常にスピーディーな展開も、変化の速いテック業界のM&Aを象徴する出来事でした。

まとめ

  • Twitter社(現X社)は、2022年にイーロン・マスク氏による敵対的な買収提案に対抗するため、ポイズンピルを導入しました。
  • その仕組みは、マスク氏の持株比率が**15%**を超えた場合に発動するという、一般的なものでした。
  • ポイズンピルは「交渉の時間稼ぎ」として機能し、実際に発動されることなく、Twitter社は最終的にマスク氏の買収案を受け入れました。
  • この一件は、巨大テック企業と世界的な著名人が繰り広げた、ポイズンピルの「教科書的な活用事例」として世界中から注目を集めました。

現代のM&Aが、いかにダイナミックで戦略的なものであるか、この事例を通して感じ取ることができるでしょう。

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岩下隼人
岩下隼人
ロイヤル合同会社 代表
ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。
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