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村上ファンドと「敵対的買収」|株価を揺るがす究極のM&A、その仕組みと事例を解説

岩下隼人
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株式市場では、時に企業の運命を根底から揺るがす、ドラマチックな出来事が起こります。その最たるものが、ある企業が他の企業の経営陣の意に反して、強引に買収を仕掛ける「敵対的買収」です。

そして、日本の株式市場において、「敵対的買収」という言葉を語る上で、決して欠かすことのできない存在が、”物言う株主”として一世を風靡した「村上ファンド」です。

この記事では、株式投資を始めたばかりの初心者の方にも分かりやすく、「敵対的買収」とは一体何なのか、そして村上ファンドが関わった歴史的な事例を通じて、その仕組みと株価への影響を解説していきます。

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そもそも「敵対的買収」とは?友好的買収との違い

企業の買収(M&A)には、大きく分けて2つの種類があります。

  • 友好的買収買収する側の企業と、買収される側の企業の経営陣が、お互いに合意の上で進める買収のこと。日本のM&Aのほとんどが、この友好的買収です。
  • 敵対的買収買収される側の企業の経営陣が「NO!(反対)」と言っているにもかかわらず、買収する側が「経営陣の意見は関係ない。会社の本当の所有者である株主から、直接株式を買い取らせてもらう!」と、強引に買収を進めようとすることです。

敵対的買収の主な武器:「TOB(株式公開買付け)」

敵対的買収で使われる最大の武器が「TOB(株式公開買付け)」です。これは、買収する側が「〇月〇日までに、1株〇〇円で、あなたの持っている株を買い取ります」と、市場の株主全員に対して公に宣言し、株式を買い集める手法です。TOB価格は、通常、現在の株価よりも高い値段(プレミアム)が設定されるため、株主にとっては魅力的な提案となります。

村上ファンドが関わった、歴史に残る「敵対的買収」3つのケース

村上ファンドは、この敵対的買収という究極のM&Aにおいて、様々な立場で重要な役割を果たしてきました。その代表的な3つのケースを見ていきましょう。

ケース①:王子製紙 vs 北越製紙(2006年)- 大株主として「買収側」を支持

日本の大企業同士による、初の本格的な敵対的TOBと言われたこの戦い。当時、村上ファンドは買収の”ターゲット”であった北越製紙の大株主でした。しかし彼らは、北越製紙の経営陣ではなく、敵対的買収を仕掛けた王子製紙側を支持しました。

「王子製紙の傘下に入る方が、株主全体の利益は最大化される」という合理的な判断のもと、保有する北越製紙株を王子製紙のTOBに応募すると表明したのです。これは、物言う株主の忠誠の対象は、経営陣ではなく、あくまで「株主価値」であることを鮮やかに示した事例です。

ケース②:黒田電気(2015年)- 自らが「買収者」となる

電子部品商社の黒田電気に対して、株主還元の強化を求めていた旧村上ファンド系。しかし、経営陣がその要求に応じなかったため、彼らは次の手に打って出ます。なんと、自らが「買収者」となり、黒田電気に対して敵対的TOBを開始したのです。

これは、「説得してダメなら、経営権を握ってでも自分たちの要求を実現させる」という、物言う株主が取りうる最も攻撃的な戦術でした。

ケース③:中国塗料(2025年)- 拒否権を狙う「部分的」敵対的TOB

船舶塗料大手の中国塗料に対して、旧村上ファンド系は2025年5月、敵対的TOBを開始しました。しかしこのTOBの目的は、会社全体を支配することではありませんでした。持株比率を3分の1超まで引き上げ、株主総会での重要議案に対する「拒否権」を手に入れることが狙いでした。

これは、会社の経営権を完全に握らなくとも、重要な意思決定に強力な影響力を行使するための、より現代的で戦略的な敵対的買収の手法と言えます。

敵対的買収が起きると、株価はどうなる?個人投資家の選択肢

では、もしあなたが保有する株式に、敵対的買収が仕掛けられたらどうなるのでしょうか。

株価の反応

TOBが発表されると、買収される側の企業の株価は、通常、TOB価格を目指して急騰します。これは、現在の株価よりも高い価格で買い取ってもらえるという期待が市場に広がるためです。

個人投資家の3つの選択肢

その時、あなたには主に3つの選択肢があります。

  1. TOBに応募する:証券会社を通じて手続きを行い、決められたTOB価格で株を売却する。
  2. 市場で売却する:TOBのニュースで上昇した株価を見て、市場で売却する。すぐに現金化できるメリットがあります。
  3. 保有し続ける:経営陣を支持する場合や、「もっと高い価格で買い取ってくれる別の会社(ホワイトナイト)が現れるかも」と期待する場合の選択肢。ただし、TOBが不成立に終わり株価が元に戻るリスクや、成立後に上場廃止となるリスクも伴います。

まとめ

村上ファンドの歴史は、日本の「敵対的買収」の歴史と深く結びついています。彼らは時に買収の支持者として、時に買収者本人として、数々のドラマの主役を演じてきました。

私たち個人投資家にとって、敵対的買収は、保有する企業の株価を大きく動かす、非常にダイナミックなイベントです。それは大きなリスクを伴う一方で、大きな投資のチャンスにもなり得ます。

こうした過去の事例を学ぶことは、M&Aの仕組みや、その裏で各プレイヤーがどのような戦略で動いているのかを理解する上で、最高の教科書となります。ニュースの裏側にある「戦いの構図」を読み解く力は、あなたをより賢い投資家へと導いてくれるでしょう。

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岩下隼人
岩下隼人
ロイヤル合同会社 代表
ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。
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