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村上ファンドと三信電気の攻防、そしてTOBでの決着―「物言う株主」が株価を動かす仕組みとは

岩下隼人
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「物言う株主(アクティビスト)」と企業の関係は、必ずしも長期にわたる泥沼の対立に発展するわけではありません。時に、彼らの登場がきっかけとなり、誰もが予想しなかった第三者が現れ、物語がスピーディーに決着することもあります。

2024年から2025年にかけて繰り広げられた、旧村上ファンド系の投資家たちと、電子部品商社「三信電気」の事例は、まさにその象徴です。この攻防は、最終的に海外の巨大企業による「TOB(株式公開買付け)」という形で幕を閉じました。

この記事では、株式投資を始めたばかりの初心者の方にも分かりやすく、この一連の物語を紐解きながら、アクティビストの活動がTOBにどう繋がるのか、そしてTOBが発表された時、私たち個人投資家はどうすればよいのかを解説していきます。

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なぜターゲットに?村上ファンドが三信電気に見た「価値」

まず、なぜ旧村上ファンド系の投資家たちは、独立系の電子部品商社である三信電気に注目したのでしょうか。その理由は、彼らの投資戦略の王道にありました。

  • 安定した事業と財務基盤:三信電気は、特定のメーカーに属さない独立系の商社として、堅実な事業基盤と健全な財務体質を持っていました。
  • PBR1倍割れの「割安感」:しかし、その実力とは裏腹に、株式市場ではPBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込むなど、株価は割安な水準で放置されていました。

アクティビストは、この「実力と市場評価のギャップ」に目を付けます。「経営陣が株主価値を意識した経営を行えば、もっと株価は上がるはずだ」と考え、株主還元の強化(増配や自社株買い)などを求めて、経営陣との対話を始めたのです。

意外な展開!「ホワイトナイト」登場と友好的TOB

村上ファンド側と三信電気の経営陣との間で、水面下での交渉が続く中、物語は誰もが予想しなかった方向に動き出します。2024年11月、台湾に本拠を置く世界最大の半導体商社「WPGホールディングス」が、三信電気に対してTOB(株式公開買付け)を実施すると発表したのです。

このWPGホールディングスは、三信電気の経営陣と事前に合意した上での買収提案であり、敵対的な村上ファンド側から会社を守る「ホワイトナイト(白馬の騎士)」のような存在でした。

TOB(株式公開買付け)とは?

TOBとは、ある企業が、他の企業の経営権取得などを目的に、期間や価格、買い付ける株数を公表して、不特定多数の株主から株式を買い集めることです。通常、TOB価格は現在の市場価格よりも高い値段(プレミアム)が設定されます。

このTOBは、関係者全員にとって「Win-Win-Win」の解決策となりました。

  • 三信電気の経営陣:村上ファンドとの長い対立を避け、グローバル企業の傘下に入ることで、企業の成長を目指せる。
  • 村上ファンド側:保有する株式を、TOB価格という高値で売却でき、短期間で大きな利益を確定できる。
  • 一般の個人株主:同じく、保有する株式を市場価格より高い値段で売却できるチャンスを得られる。

この提案に対し、村上ファンド側も早々にTOBに応募することを表明。TOBは成功裏に終わり、2025年2月に三信電気は上場廃止となりました。

TOB発表、その時個人株主はどうする?3つの選択肢

では、もしあなたが保有する株式に、三信電気のケースのようなTOBが発表されたら、どうすればよいのでしょうか。個人株主には、主に3つの選択肢があります。

選択肢①:TOBに応募して売却する

最も一般的な選択肢です。証券会社を通じて、指定された期間内にTOBへの応募手続きを行います。期間が終了すれば、あなたの保有株は決められたTOB価格で買い取られます。

選択肢②:市場で売却する

TOBが発表されると、通常、株価はTOB価格に近い水準まで上昇します。TOBの期間終了を待たずに、すぐに現金化したい場合は、市場で売却するという選択も可能です。ただし、価格はTOB価格よりわずかに低くなることがほとんどです。

選択肢③:そのまま保有し続ける

TOBに応募もせず、市場でも売却しないという選択肢です。しかし、TOBが成功し、会社が上場廃止になると、あなたの保有株は証券取引所で売買できなくなります。その後、金銭を交付される形で強制的に買い取られることもありますが、手続きが煩雑になったり、すぐに現金化できなかったりするリスクがあるため、あまりお勧めできません。

この事例から個人投資家が学ぶべきこと

この三信電気の物語は、私たち個人投資家に多くの重要な教訓を与えてくれます。

教訓①:アクティビストは「変化の触媒」

物言う株主の存在は、時に企業の「身売り」を促すきっかけになることがあります。彼らが経営陣に圧力をかけることで、会社が「TOBを受け入れて株主に報いる」という選択をしやすくなるのです。これは、株主にとって大きなプラスとなる可能性があります。

教訓②:TOBは重要な投資イベント

TOBの発表は、株価を大きく動かす重要なイベントです。自分が保有する銘柄や、注目している銘柄に関するTOBのニュースには、常にアンテナを張っておきましょう。それは、あなたの資産を大きく増やすチャンスかもしれません。

教訓③:「出口戦略」の重要性

村上ファンドは、三信電気の株を買うだけでなく、TOBという最高の形で「売却する(利益を確定する)」ことにも成功しました。投資は、いつ買うかだけでなく、いつ、どのように売るかという「出口戦略」も同じくらい重要であることを、この事例は教えてくれます。

まとめ

村上ファンドと三信電気の物語は、物言う株主の登場が、最終的に友好的なTOBによる全株主への利益還元という、ハッピーエンドに近い形で決着した象徴的な事例です。

この事例を通じて、TOBやホワイトナイトといったM&Aの仕組みを理解することは、現代の株式市場を生き抜く上で非常に重要です。こうした企業のダイナミックな動きを正しく理解し、自らの投資判断に活かしていくこと。それこそが、賢い投資家への確かな一歩となるでしょう。

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岩下隼人
岩下隼人
ロイヤル合同会社 代表
ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。
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