「事務所」の事務職へ転職!仕事内容・求められるスキル・成功のポイント
「法律事務所で専門家をサポートしたい」「会計事務所で専門知識を活かせる事務の仕事がしたい」そんな思いから、弁護士事務所、税理士事務所、特許事務所といった、いわゆる「士業」や専門家が運営する「事務所」の事務職への転職を考えている方もいらっしゃるでしょう。これらの事務所で働く事務職は、一般的な企業の事務職とは異なる専門性や役割が求められ、大きなやりがいを感じられる仕事です。
この記事では、「事務所」の事務職への転職を目指す方に向けて、その具体的な仕事内容、求められるスキルや経験、求人の探し方、そして選考を成功させるためのポイントまで、詳しく解説していきます。
「事務所」で働く事務職とは?その特徴と魅力
まず、「事務所」と呼ばれる職場の事務職は、どのような特徴を持ち、どんな魅力があるのでしょうか。
- 事務所の定義: ここでいう「事務所」とは、主に弁護士、税理士、公認会計士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、弁理士といった「士業」と呼ばれる国家資格を持つ専門家や、建築家、デザイナーなどが開設・運営する専門性の高い事業所を指します。これらの事務所では、専門家が本来の専門業務に集中できるよう、事務スタッフが様々なサポート業務を担います。
- 一般的な企業との違い:
- 専門性の高さ: 取り扱う業務が特定の専門分野に特化しているため、事務職にもその分野に関する一定の知識や理解が求められることがあります。
- 所長・代表者の影響力: 事務所の規模にもよりますが、所長や代表の弁護士・会計士などの意向や方針が、事務所全体の雰囲気や運営に大きく影響する傾向があります。
- 組織規模: 大規模な法律事務所や会計ファームも存在しますが、個人経営や数名の専門家で運営されている比較的小規模な事務所も多くあります。
- 事務所で働く魅力:
- 専門知識が身につく: 日々の業務を通じて、法律、会計、税務、特許、労務といった専門分野の知識や実務に触れることができ、スキルアップに繋がります。
- 専門家をサポートするやりがい: 専門家がスムーズに業務を遂行できるようサポートすることで、間接的にクライアントの課題解決や社会貢献に携わっているという実感を得られます。
- 比較的落ち着いた環境の場合も: 業務内容や時期にもよりますが、一般的な企業と比較して、比較的落ち着いた環境で仕事に取り組める事務所もあります。
- 貢献度が目に見えやすい: 小規模な事務所の場合、自分の仕事が事務所全体の運営にどう影響しているかが見えやすく、貢献を実感しやすいことがあります。
- 事務所の仕事の厳しさ: 専門性の高い情報を扱うため、常に高い正確性や緻密さが求められます。専門用語の理解や、関連法規の改正などに対応するための継続的な学習も必要となる場合があります。また、繁忙期(例:税理士事務所の確定申告時期)には業務量が増加することもあります。守秘義務の遵守も極めて重要です。
「事務所」の事務職の主な仕事内容
事務所の事務職が担当する業務は、その事務所の専門分野や規模によって大きく異なりますが、共通する一般的な事務業務と、各事務所特有の専門的なサポート業務があります。
共通する一般的な事務業務
- 書類作成・管理: 契約書、申請書類、報告書、会議資料、議事録、顧客リストなど、各事務所特有の専門書類を含む様々なビジネス文書の作成、ファイリング、データベース管理。
- データ入力・管理: 顧客情報、案件情報、会計データなどの入力・更新・管理。
- 電話・メール・来客対応: 外部からの問い合わせ対応、クライアントからの連絡対応、来客時の受付・案内、お茶出しなど、事務所の窓口としての役割。
- スケジュール管理: 弁護士、会計士、税理士といった専門家の会議やアポイントメント、裁判期日などのスケジュール調整・管理。
- 経費精算、請求書発行などの簡単な経理補助: 小口現金の管理、経費の精算処理、クライアントへの請求書作成・発行、入金確認など(専任の経理担当者がいない場合に担当)。
- 備品管理、オフィス環境整備: 事務用品の発注・在庫管理、オフィス機器のメンテナンス手配、事務所内の整理整頓など。
各事務所特有の専門的な事務サポート業務
- 法律事務所の事務(パラリーガル業務を含む場合も):
- 裁判所へ提出する訴状や準備書面などの書類作成補助、誤字脱字チェック。
- 判例や法令のリサーチ補助。
- 戸籍謄本や住民票、登記事項証明書などの公的書類の取寄せ手続き。
- 顧客や相手方弁護士、裁判所との連絡調整。
- 証拠書類の整理・管理。
- 会計事務所・税理士事務所の事務:
- クライアント企業の試算表作成補助、月次・年次決算書類作成のサポート。
- 法人税・所得税・消費税などの税務申告書類作成の補助。
- 会計ソフトへの記帳代行、給与計算業務。
- 年末調整業務のサポート。
- 特許事務所の事務:
- 特許・実用新案・意匠・商標などの出願に関する書類作成補助。
- 特許庁へのオンライン手続きのサポート、期限管理。
- 国内外のクライアントや現地代理人とのコレポン(英文メール含む場合も)補助。
- 年金管理業務。
- 社会保険労務士事務所の事務:
- 労働保険(労災保険・雇用保険)や社会保険(健康保険・厚生年金)の各種手続き書類の作成・提出。
- 給与計算業務、就業規則作成の補助。
- 助成金申請書類の作成サポート。
- 設計事務所の事務:
- 見積書・請求書の作成、契約書の管理。
- 図面や設計関連資料のファイリング・管理。
- 官公庁への建築確認申請などの申請書類作成補助。
- 関係業者との連絡調整。
「事務所」の事務職へ転職する際に求められるスキルや経験
事務所の事務職として活躍するためには、どのようなスキルや経験が求められるのでしょうか。
必須・歓迎されるスキル
- 高いコミュニケーション能力: 所長や専門家、クライアント、そして場合によっては裁判所や官公庁の担当者など、多様な立場の人々と円滑に意思疎通を図り、良好な関係を築き、時には複雑な内容を分かりやすく伝える能力。
- 基本的なPCスキル: Word(専門的な書式設定を含む文書作成)、Excel(データ集計、表計算、関数)、PowerPoint(簡単な資料作成)、メールソフトの操作は必須です。事務所によっては、専用の業務システムやデータベースソフトの使用経験も重視されます。
- 事務処理能力の正確性・緻密さ: 法律文書や会計書類、特許関連書類など、誤りが許されない重要な書類を扱うため、細部まで注意を払い、ミスなく丁寧に業務を処理する能力が極めて重要です。
- 高い情報管理能力・守秘義務の遵守: クライアントの機密情報や個人情報を日常的に取り扱うため、情報管理の重要性を深く理解し、守秘義務を徹底して遵守する高い倫理観が求められます。
- マルチタスク能力・段取り力: 多岐にわたる業務や複数の案件を同時並行で、かつ優先順位をつけて効率的に進める能力。
- ビジネスマナー: 社会人としての基本的な言葉遣い、電話応対マナー、来客対応マナーなどが高いレベルで身についていることが求められます。
あると有利な経験・知識・資格
- 各事務所の専門分野に関する知識や実務経験: 例えば、法律事務所であれば法学部卒業や法律事務の経験、会計事務所であれば経理経験や簿記の知識など、応募する事務所の専門分野に関連するバックグラウンドは大きな強みとなります。
- 関連資格:
- 秘書技能検定: 高度なビジネスマナーや秘書業務スキルを証明できます。
- 日商簿記検定: 会計事務所や税理士事務所はもちろん、他の事務所でも経理補助業務がある場合に役立ちます。
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト): PCスキルを客観的に証明できます。
- TOEIC® L&R Testなどの語学力: 国際案件を扱う法律事務所や特許事務所などでは、英語力が必須または歓迎されることがあります。 (※弁護士、税理士といった士業資格そのものは必須ではありませんが、その分野の基礎知識として評価されることがあります)
- 専門用語への理解力: 各専門分野特有の用語をスムーズに理解し、使用できる能力。
「事務所」の事務職求人の探し方と選び方のポイント
専門性の高い「事務所」の事務職求人は、一般的な企業の事務職求人とは探し方や選び方のポイントが少し異なる場合があります。
求人サイトの活用法
- 一般的な転職サイト: 「法律事務所 事務」「会計事務所 未経験 事務」「特許事務 正社員」のように、「〇〇事務所 事務」というキーワードに加え、雇用形態や経験の有無、勤務地などを組み合わせて検索します。
- 士業や専門分野に特化した求人サイト: 法律、会計、特許といった各分野専門の求人サイトや、士業事務所の求人を多く扱うサイトも存在します。より専門性の高い求人が見つかる可能性があります。
転職エージェントの利用
- 士業や管理部門に強い転職エージェント: これらの分野に特化したキャリアアドバイザーは、業界の動向や各事務所の特色を熟知しており、あなたに合った求人を紹介してくれるだけでなく、応募書類の添削や面接対策など、専門的なサポートが期待できます。
各士業団体のホームページや求人情報
弁護士会、税理士会、弁理士会といった各士業団体が、会員事務所の求人情報を掲載している場合があります。
ハローワーク
地元の小規模な事務所の求人が見つかることがあります。
事務所のホームページを直接確認
興味のある事務所のホームページには、直接採用情報が掲載されていることがあります。事務所の理念や専門分野、所属する専門家のプロフィールなどを深く理解した上で応募できます。
求人選びのポイント
- 事務所の専門分野や規模、雰囲気: 自分がどのような専門分野に興味があり、どのような規模の事務所で働きたいのか、そして事務所全体の雰囲気(例:所長のリーダーシップが強い、チームワークを重視する、アットホームな雰囲気など)が自分に合っているかを見極めましょう。
- 業務内容と自身のスキル・経験のマッチング: 求人情報に記載されている具体的な業務内容と、自身のこれまでの経験やスキルがどの程度合致しているか、そしてその事務所で自分の能力を最大限に活かせるかを検討します。
- 所長や先輩スタッフの人柄(可能であれば面接などで確認): 特に小規模な事務所の場合、所長や一緒に働くスタッフとの相性は非常に重要です。面接の機会などを通じて、できるだけ職場の雰囲気や人柄を感じ取るようにしましょう。
- 教育体制、キャリアパス: 未経験から挑戦する場合や、スキルアップを目指したい場合は、入社後の教育体制や研修制度、将来的なキャリアパスがどのようになっているかを確認することも大切です。
応募書類(履歴書・職務経歴書)作成のコツ:「事務所」向け
事務所の事務職に応募する際の書類では、専門性への関心と事務処理能力の高さを効果的にアピールすることが重要です。
- 志望動機:なぜその専門分野の事務所で働きたいのか、事務所の理念や専門家のサポートへの共感を具体的に。社会貢献への思いも。 「貴事務所の〇〇という専門分野における高い実績と、△△という理念に深く共感し、事務の立場から専門家の皆様をサポートすることで、□□といった社会貢献に携わりたいと考え、志望いたしました」など、具体的な理由と熱意を自分の言葉で記述しましょう。
- 自己PR:これまでの経験で培ったスキルが、事務所の事務業務にどう活かせるかをアピール。特に正確性、コミュニケーション能力、PCスキルを強調。 「前職では、〇〇業務において、常に細心の注意を払い、ミスなく正確に情報を処理することを徹底してまいりました。また、多様な関係者との円滑なコミュニケーションを通じて、業務をスムーズに進める調整力を培いました。これらの経験は、貴事務所における専門的な書類作成やクライアント対応、そしてチーム内連携において必ず活かせると確信しております」というように、具体的なスキルと業務を結びつけて説明します。
- 職務経歴:具体的な業務内容、役割、実績を分かりやすく記述。専門知識や関連業務の経験があれば特に詳細に。 担当した業務内容、期間、そして具体的な実績(例:〇〇業務の効率化に貢献、顧客満足度の向上に貢献など)を、数値などを交えながら分かりやすく記載します。法律関連、会計関連、特許関連といった専門知識や関連業務の経験があれば、特に詳細に記述し、専門性をアピールしましょう。
- 保有資格は漏れなく記載。 宅建士、簿記、MOS、秘書検定、語学関連資格など、応募する事務所の業務に関連する可能性のある資格は、取得年月日とともに正確に記載します。
面接対策:「事務所」の事務職採用を勝ち取るために
面接では、あなたのスキルや経験、人柄に加え、事務所という特殊な環境への適性や、専門家をサポートする役割への理解度が見られます。
- よく聞かれる質問への準備: 自己PR、志望動機、これまでの職務経験、長所・短所、ストレス耐性、チームで働く上で大切にしていることなどに加え、「なぜ当事務所の専門分野に興味を持ったのですか?」「専門家をサポートする上で何が重要だと思いますか?」「守秘義務についてどう考えていますか?」といった、事務所特有の質問にも答えられるように準備しておきましょう。
- 事務所の専門分野や業務内容への深い理解を示す。 事前に事務所のホームページや関連情報を徹底的に調べ、その専門分野や具体的な業務内容、そして業界の動向などについて、自分なりの理解を示せると、関心の高さと学習意欲をアピールできます。
- コミュニケーション能力、協調性、正確性、責任感をアピール。 面接官の質問の意図を的確に理解し、簡潔かつ分かりやすく回答することを心がけます。また、専門家や他のスタッフと協力して業務を進めるための協調性、重要な情報を正確に扱う責任感、そして誠実な人柄を伝えましょう。
- 専門家をサポートする役割への理解と意欲を示す。 「先生方(弁護士、会計士など)が専門業務に集中できるよう、質の高い事務サポートを提供することで貢献したい」という、サポート役としての明確な意識と意欲を示すことが重要です。
- 守秘義務の重要性を理解していることを伝える。 事務所では多くの機密情報や個人情報を取り扱います。守秘義務の重要性を十分に理解し、それを遵守する高い倫理観を持っていることを明確に伝えましょう。
- 逆質問で事務所への関心と貢献意ytoを伝える。 面接の最後に質問の機会があれば、「特にありません」という回答は避け、事前に準備しておいた質問をしましょう。事務所の今後の展望や、事務スタッフに期待する役割、入社後の研修制度、職場の雰囲気などについて質問することで、入社意欲の高さと事務所への深い関心を示すことができます。
未経験から「事務所」の事務職へ挑戦する場合
事務職の経験がない、あるいは応募する事務所の専門分野が未経験であっても、挑戦の道はあります。
- ポータブルスキルのアピール: 前職で培ったコミュニケーション能力、基本的なPCスキル、企画力、問題解決能力、スケジュール管理能力といった、どの業界・職種でも通用するポータブルスキルは、事務所の仕事でも十分に活かせます。
- ボランティア活動やプロボノでの経験(あれば): もし、NPOや地域活動などでボランティアとして関わった経験や、専門スキルを活かして非営利団体を支援するプロボノ活動の経験があれば、社会貢献への意識の高さや主体性を示す上で有効なアピールポイントになります。
- 事務所の専門分野への強い関心と学習意欲: なぜその専門分野に興味を持ったのか、その分野についてどのようなことを学んできたのか(独学でも可)、そして入社後にどのように知識やスキルを習得していきたいのか、という強い関心と学習意欲を伝えましょう。
- 関連資格の取得: 例えば、会計事務所を目指すなら日商簿記、法律事務所であれば秘書検定やビジネス実務法務検定といった、関連する資格を取得することで、基礎知識と意欲を示すことができます。
- まずはアシスタント業務や小規模な事務所から経験を積むことも検討: 最初から大規模な事務所や責任のあるポジションを目指すのが難しい場合でも、まずはアシスタント的な業務からスタートしたり、比較的未経験者を受け入れやすい小規模な事務所で実務経験を積んだりすることから始めるのも一つの有効な方法です。
まとめ:「専門家を支えるプロ」事務所の事務職で、やりがいあるキャリアを
「事務所」の事務職は、専門家を間近でサポートし、その専門分野の知識や実務に深く関わることができる、非常にやりがいのある仕事です。一般的な企業の事務職とは異なる専門性や責任感が求められますが、そこで得られる経験やスキルは、あなたのキャリアにとって大きな財産となるでしょう。
大切なのは、その事務所の理念や専門分野に心から共感し、自身のスキルや経験を活かして貢献したいという強い意志を持つことです。この記事で紹介した情報を参考に、しっかりと準備を進め、あなたに合った「事務所」の事務職との出会いを実現してください。