「事務局」の仕事へ転職!その役割・仕事内容と成功のポイントを解説
「社会貢献性の高い仕事がしたい」「多様な業務に携わりながら組織を支えたい」そんな思いから、NPO法人、社団法人、学会、各種団体といった「事務局」の仕事への転職を考える方が増えています。一般的な企業の事務職とは異なる魅力や役割を持つ事務局の仕事は、大きなやりがいを感じられる一方で、特有のスキルや心構えも求められます。
この記事では、「事務局」の仕事への転職を目指す方に向けて、その具体的な役割や仕事内容、求められるスキル、求人の探し方、そして選考を成功させるためのポイントまで、詳しく解説していきます。
「事務局」とはどんな組織?一般的な企業との違いと働く魅力
まず、「事務局」とはどのような組織を指すのでしょうか。
- 事務局の定義: 事務局とは、特定の目的を持って活動する団体や組織の運営実務を担う部門・組織のことを指します。具体的には、NPO法人、公益社団法人・財団法人、学術団体(学会)、業界団体、協同組合、労働組合、同窓会、イベント実行委員会など、多種多様な形態があります。
- 一般的な企業との違い: 最も大きな違いは、営利を主目的とするか、非営利的な目的(社会貢献、会員へのサービス提供、特定分野の振興など)を主とするかという点です。そのため、利益追求のプレッシャーは民間企業ほどではない場合が多いですが、活動資金の確保や効率的な運営といった課題は常に存在します。また、組織規模が比較的小さいことが多く、意思決定プロセスがフラットであったり、一人ひとりの裁量が大きかったりする傾向も見られます。
- 事務局で働く魅力:
- 社会貢献性の高さ: 団体の理念や目的に共感し、その実現に向けて直接的に貢献できるため、大きなやりがいを感じやすいです。
- 専門性の追求: 特定の分野(例:環境保護、国際協力、学術研究支援など)に関する専門知識やスキルを深めることができます。
- 幅広い業務経験: 少人数で運営されている事務局も多く、経理、広報、会員管理、イベント運営など、多岐にわたる業務に携わる機会があり、マルチなスキルが身につきます。
- 裁量権の大きさ: 組織規模によっては、個人の意見やアイデアが反映されやすく、主体的に仕事に取り組める環境があります。
- アットホームな雰囲気: 比較的小規模な組織が多いため、スタッフ間の距離が近く、アットホームな雰囲気の中で働けることがあります。
- 事務局の仕事の厳しさ: 魅力的な側面がある一方で、限られた予算や人員の中で多様な業務をこなさなければならない、活動資金の確保が常に課題となる、といった厳しさもあります。また、関係者が多岐にわたるため、調整能力やコミュニケーション能力が特に重要となります。
「事務局」の事務職の主な仕事内容
事務局の事務職が担当する業務は、その団体の目的や規模によって大きく異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。
一般的な事務業務
- 書類作成・管理: 会議資料(アジェンダ、議事録)、報告書、申請書、会員名簿、各種規程などの作成、ファイリング、データベース管理。
- データ入力・管理: 会員情報、寄付情報、イベント参加者情報などの入力・更新・管理。
- 電話・メール・来客対応: 外部からの問い合わせ対応、会員からの連絡対応、来客時の受付・案内など、団体の窓口としての役割。
- 会計処理補助: 予算管理のサポート、経費精算、入出金管理、会計ソフトへの入力、決算業務の補助など(専任の経理担当者がいない小規模な事務局では、より広範な会計業務を担うことも)。
- 備品管理・オフィス環境整備: 事務用品の発注・在庫管理、オフィス機器のメンテナンス手配、事務所内の整理整頓など。
団体特有の事務業務
- 会員管理: 会員の入会・退会手続き、会費の徴収・管理、会員情報の更新、会員への連絡・情報提供、会員からの問い合わせ対応など。
- イベント・セミナー・会議の企画・運営サポート: 年次総会、理事会、セミナー、研修会、交流会といった各種イベントの企画立案補助、会場手配、広報活動(案内状作成・発送、ウェブサイトでの告知など)、参加者募集・管理、当日の運営サポート(受付、資料配布など)、事後のアンケート集計・報告書作成など。
- 広報業務: ウェブサイトの更新・管理、SNSアカウントの運用、ニュースレターや会報誌の作成・編集・発行、プレスリリースの作成補助、メディア対応のサポートなど、団体の活動を広く周知するための業務。
- 助成金申請・報告書作成の補助: 活動資金を得るための助成金プログラムへの申請書類作成のサポートや、採択された場合の事業報告書作成の補助など。
- 関係省庁や他団体との連絡調整: 団体の活動に関連する行政機関や、連携する他のNPO・団体との連絡や情報交換、会議への参加など。
組織の規模が小さいほど、一人の事務局スタッフがこれらの業務を幅広く担当する傾向にあります。
「事務局」の事務職へ転職する際に求められるスキルや経験
事務局の事務職として活躍するためには、どのようなスキルや経験が求められるのでしょうか。
必須・歓迎されるスキル
- 高いコミュニケーション能力: 会員、理事、ボランティアスタッフ、外部協力者、行政機関など、多種多様な立場の人々と円滑に意思疎通を図り、良好な関係を築き、時には利害を調整する能力。
- 基本的なPCスキル: Word(文書作成、書式設定)、Excel(データ入力、表計算、簡単な関数、グラフ作成)、PowerPoint(資料作成)、メールソフトの操作は必須です。
- 事務処理能力の正確性・迅速性: 会計処理や会員情報の管理、契約書類の取り扱いなど、ミスなく丁寧に、かつ効率的に業務を処理する能力。
- マルチタスク能力・段取り力: 多岐にわたる業務を同時並行で、かつ優先順位をつけて計画的に進める能力。
- 主体性・課題解決能力: 少人数の組織では、指示待ちではなく、自ら課題を見つけて改善策を考え、実行していく主体性が特に重要となります。
- ビジネスマナー: 社会人としての基本的な言葉遣い、電話応対マナー、来客対応マナーなど。
あると有利な経験・知識
- 事務局運営の経験: NPO法人や各種団体での事務局スタッフとしての実務経験は、即戦力として高く評価されます。
- NPOや各種団体での活動経験(ボランティア含む): 団体の理念や活動内容への理解が深く、貢献意欲が高いと判断されやすいです。
- 経理・会計の知識: 日商簿記2級・3級程度の知識や、会計ソフトの使用経験があると、会計業務を任される場合に役立ちます。
- 広報・PRの経験: ウェブサイト作成・更新スキル(WordPressなど)、SNS運用経験、チラシやニュースレターの作成経験があると、広報業務で活かせます。
- イベント企画・運営経験: イベントの企画立案から当日の運営、事後報告までの一連の流れを経験していると強みになります。
- 特定の分野に関する専門知識: 例えば、学会事務局であればその学術分野への関心や基礎知識、環境NPOであれば環境問題に関する知識など、団体の活動分野に関連する専門知識があると、業務への理解が深まります。
- 語学力: 国際的な活動を行う団体や、海外との連携がある事務局では、英語などの語学力が求められることがあります。
「事務局」の事務職求人の探し方と選び方のポイント
事務局の事務職求人は、一般的な企業の求人と比較して、見つけにくい場合もあります。以下の方法を参考に探してみましょう。
求人サイトの活用法
- 一般的な転職サイト: 「事務局 事務」「NPO 事務」「社団法人 事務」「公益法人 事務」といったキーワードに加え、団体の活動分野(例:「環境保護 事務局」)や勤務地などを組み合わせて検索します。
- NPO・ソーシャルセクター専門の求人サイト: NPO法人や社会貢献活動を行う団体の求人情報に特化したウェブサイトも存在します。
- 各種団体のホームページ: 興味のあるNPO法人や学会、業界団体などのホームページには、直接採用情報が掲載されていることがあります。
転職エージェントの利用
NPOや公益法人などの非営利組織の求人に特化した転職エージェントは数は少ないですが、存在します。一般的な転職エージェントでも、希望を伝えれば関連する求人を紹介してくれる可能性があります。
ハローワーク
地元の小規模な団体やNPO法人の求人が見つかることがあります。
人脈・紹介
NPOや各種団体の活動に関わっている知人や、イベント・セミナーなどに参加することで、求人情報を得られるケースもあります。
求人選びのポイント
- 団体の理念や活動内容への共感: 事務局の仕事は、団体の理念やミッションを支えることが根幹にあります。自分が心から共感できる団体を選ぶことが、長く働き続ける上で非常に重要です。
- 業務内容と自身のスキル・経験のマッチング: 求人情報に記載されている具体的な業務内容と、自身のこれまでの経験やスキルがどの程度合致しているかを確認しましょう。
- 組織規模、財政基盤の安定性: 団体の活動規模や、活動資金がどのように運営されているか(会費、寄付、助成金、事業収入など)といった点も、働く上での安定性に関わるため、可能な範囲で調べておくと良いでしょう。
- 労働条件、福利厚生: 給与、勤務時間、休日、社会保険の加入状況、有給休暇の取得しやすさなども確認が必要です。
応募書類(履歴書・職務経歴書)作成のコツ:「事務局」向け
事務局の仕事への応募書類では、一般的な企業への応募書類とは少し異なる視点でのアピールが求められることがあります。
- 志望動機:なぜその団体の事務局で働きたいのか、団体の理念や活動への共感を具体的に。社会貢献への思いも。 「貴団体の〇〇という理念に深く共感し、これまでの△△の経験を活かして、事務局の立場からその実現に貢献したいと考え、志望いたしました」「〇〇という社会課題の解決に取り組む貴団体の活動に感銘を受け、事務局の一員としてその活動を支えたいという強い思いがあります」など、具体的な共感ポイントや貢献意欲を、自身の言葉で熱意を込めて記述しましょう。
- 自己PR:これまでの経験で培ったスキルが、事務局運営にどう活かせるかをアピール。主体性やコミュニケーション能力を強調。 PCスキルや事務処理能力はもちろんのこと、多様な関係者と円滑に連携するためのコミュニケーション能力、少人数で幅広い業務に対応するための主体性や問題解決能力などを、具体的なエピソードを交えてアピールします。
- 職務経歴:具体的な業務内容、役割、実績を分かりやすく記述。団体運営に関連する経験があれば特に詳細に。 これまでの職務経歴の中で、予算管理、イベント企画・運営、広報活動、ボランティア活動の経験など、事務局運営に活かせそうな経験があれば、特に具体的に記載しましょう。
- PCスキルや保有資格は漏れなく記載。 使用できるソフトウェアやスキルレベル、保有資格は正確に記載します。
面接対策:「事務局」の事務職採用を勝ち取るために
面接では、あなたのスキルや経験だけでなく、団体の理念への共感度や、事務局スタッフとしての適性が見られます。
- よく聞かれる質問への準備: 自己PR、志望動機、これまでの職務経験、長所・短所、ストレス耐性、チームで働く上で大切にしていることなどに加え、「なぜ当団体に興味を持ったのですか?」「当団体の活動についてどう思いますか?」といった、団体への理解度を問う質問にも答えられるように準備しておきましょう。
- 団体の理念や活動内容への深い理解を示す。 事前に団体のウェブサイトや活動報告書などを読み込み、その理念や具体的な活動内容、そして現在抱えている課題(もし推測できれば)などについて、自分なりの考えを述べられるようにしておくと、関心の高さが伝わります。
- コミュニケーション能力、協調性、主体性をアピール。 面接官の質問の意図を的確に理解し、簡潔かつ分かりやすく回答することを心がけます。また、多様な関係者と協力して業務を進めるための協調性や、指示待ちではなく自ら考えて行動できる主体性を、具体的なエピソードを交えてアピールしましょう。
- 少人数で幅広い業務に対応する柔軟性や意欲を示す。 事務局の仕事は多岐にわたることが多いため、「様々な業務に積極的に取り組み、貢献したい」という柔軟な姿勢と意欲を示すことが重要です。
- 逆質問で団体への関心と貢献意欲を伝える。 面接の最後には、必ず質問の機会が設けられます。「特にありません」という回答は避け、事前に準備しておいた質問をしましょう。団体の今後の事業展開や事務局の具体的な役割、入社後の研修制度、ボランティアスタッフとの連携方法などについて質問することで、入社意欲の高さと団体への深い関心を示すことができます。
未経験から「事務局」の事務職へ挑戦する場合
事務局の仕事が未経験であっても、転職のチャンスはあります。
- ポータブルスキルのアピール: 前職で培ったコミュニケーション能力、基本的なPCスキル、企画力、問題解決能力、スケジュール管理能力といったポータブルスキルは、事務局の仕事でも十分に活かせます。
- ボランティア活動やプロボノでの経験: もし、NPOや地域活動などでボランティアとして関わった経験や、専門スキルを活かして非営利団体を支援するプロボノ活動の経験があれば、大きなアピールポイントになります。
- 団体への強い共感と学習意欲: なぜその団体の活動に共感し、貢献したいのかという強い思いと、未経験の業務についても積極的に学ぶ意欲があることを伝えましょう。
- まずは小規模な団体やアシスタント業務から経験を積むことも検討: 最初から大規模な事務局や責任のあるポジションを目指すのが難しい場合でも、まずは小規模な団体で幅広い業務を経験したり、アシスタントとして実務を学んだりすることからスタートするのも一つの方法です。
まとめ:「社会を支える」事務局の仕事で、やりがいと成長を
「事務局」の仕事は、社会貢献への意識が高く、多様な業務を通じて自己成長を実感したいと考える方にとって、非常に魅力的なキャリアパスの一つです。一般的な企業の事務職とは異なるやりがいや厳しさもありますが、そこで得られる経験は、あなたのキャリアにとって貴重な財産となるでしょう。
大切なのは、その団体の理念や活動内容に心から共感し、自身のスキルや経験を活かして貢献したいという強い意志を持つことです。この記事で紹介した情報を参考に、しっかりと準備を進め、あなたに合った事務局の仕事との出会いを実現してください。