福祉用具の営業へ転職|仕事内容からやりがい、未経験者が成功する秘訣まで
超高齢社会を迎えた日本において、高齢者や障害のある方の自立した生活を支える「福祉用具」の重要性は、ますます高まっています。その専門家である「福祉用具の営業(福祉用具専門相談員)」は、社会に深く貢献しながら、自身の専門性も高めていける、非常にやりがいのある仕事として注目を集めています。
「具体的にどんな仕事をするんだろう?」
「未経験からでも挑戦できるのだろうか?」
「大変なこともあるのかな?」
この記事では、そんな福祉用具営業の仕事に関心を持つあなたのために、仕事のリアルな姿から、その魅力、そして未経験からでも転職を成功させるための秘訣までを、分かりやすく解説していきます。
福祉用具営業の仕事内容とは?利用者様の「できる」を支える専門職
福祉用具営業の仕事は、単に商品を売ることではありません。利用者様一人ひとりの生活に深く寄り添い、その人らしい暮らしを支えるためのトータルコーディネーターです。その仕事の流れを見ていきましょう。
- ケアマネジャーとの連携地域の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターなどを訪問し、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)と情報交換を行います。日頃からコミュニケーションを取り、福祉用具の専門家として信頼関係を築くことが、新たな利用者様との出会いに繋がります。
- 利用者様宅への訪問とアセスメントケアマネジャーから紹介を受けたら、利用者様のお宅に伺い、身体の状況、住環境、そしてご本人やご家族が「どんな生活を送りたいか」という希望を、時間をかけて丁寧にヒアリング(アセスメント)します。
- 福祉用具の選定と提案アセスメントの内容をもとに、介護ベッドや車いす、手すり、歩行器など、数ある福祉用具の中から、その利用者様にとって最適なものをピックアップします。そして、なぜその用具が必要なのかを具体的に記述した「福祉用具貸与(販売)計画書」を作成し、提案します。
- 納品・フィッティング・説明提案に同意をいただけたら、福祉用具を納品します。ただ置くだけでなく、利用者様の身体に合わせて高さや角度を調整(フィッティング)し、ご本人やご家族が安全に使えるよう、使い方を丁寧に説明するのも重要な仕事です。
- アフターフォロー(モニタリング)納品後も、定期的に利用者様のお宅を訪問します。用具が正しく活用されているか、身体状況に変化はないか、何か不便なことはないかなどを確認し、必要に応じて用具の見直しや交換を検討します。
このように、福祉用具営業は、利用者様の生活に長期的に関わり続ける、高い専門性と倫理観が求められる仕事です。
福祉用具営業の「やりがい」と「きつい」と言われる点
人の生活に深く関わるからこそ、この仕事には他では得難い喜びと、向き合うべき大変さがあります。
やりがい・魅力
- 「ありがとう」という直接的な感謝 「このベッドのおかげで、夜ぐっすり眠れるようになったよ」「一人でトイレに行けるようになって嬉しい」といった、利用者様やご家族からの感謝の言葉と笑顔が、何よりの原動力になります。
- 高い社会貢献性 人の生活の質(QOL)を向上させ、尊厳ある自立した暮らしを支えているという、社会に不可欠な役割を担っている実感を得られます。
- 専門家としての成長 福祉用具の知識はもちろん、介護保険制度や、身体の仕組みに関する知識など、専門性を日々高めていくことができます。
きついと言われる点
- 体力的な負担 介護ベッドや特殊なマットレスなど、重量のある用具を搬入・搬出する作業もあり、体力が必要となる場面があります。
- 緊急時の対応 「用具が壊れてしまった」「体調が急変して、すぐにでも手すりが必要になった」といった、休日や夜間の緊急連絡に対応しなければならない場合もあります。
- 精神的な責任の重さ 提案する用具一つが、利用者様の安全や生活に直結するため、常に高い責任感が求められます。
- 多職種との連携 ケアマネジャーをはじめ、医師、看護師、理学療法士、ヘルパーなど、多くの専門職と円滑に連携し、チームの一員として利用者様を支えるコミュニケーション能力が必要です。
転職に必要な資格とスキルは?未経験でもなれる?
福祉用具のレンタルや販売を行うには、原則として事業所に2名以上の**「福祉用具専門相談員」**を配置することが義務付けられています。そのため、この資格を持っていると転職に非常に有利です。
**「福祉用具専門相談員」**は、都道府県の指定する研修機関で約50時間の講習を受け、修了評価試験に合格することで取得できます。
(※介護福祉士、社会福祉士、看護師、理学療法士などの国家資格を保有している場合は、講習が免除されます。)
未経験からの転職について
結論から言えば、異業種・未経験からの転職は非常に多い業界です。多くの企業では、入社後に資格取得を全面的にサポートしてくれる制度を整えています。
特に、介護職の経験がある方は、利用者様の身体状況や介護現場への深い理解があるため、即戦力として期待されます。また、他業界での営業経験がある方も、コミュニケーション能力や関係構築力を活かして活躍できます。
何よりも大切なのは、学歴や経験以上に、「人の役に立ちたい」「困っている人を支えたい」という強い想いと、相手の立場に立って親身に話を聞ける**「傾聴力」**です。
気になる給与・年収のリアル
給与水準は、勤務する地域や企業の規模、個人の経験によって異なりますが、一般的には月給20万円台後半から30万円台がボリュームゾーンとされています。求人ボックスの統計データ(2025年4月時点)によると、正社員の平均年収は約353万円です。
多くの企業では、経験年数や実績に応じて昇給があり、営業成績に応じたインセンティブ制度を設けている会社もあります。頑張りが給与に反映されることで、モチベーションに繋がるでしょう。
転職を成功させる!志望動機と面接のポイント
面接では、「なぜ数ある仕事の中から、福祉用具の営業を選んだのか」という点を、あなた自身の言葉で熱意をもって語ることが重要です。
- 介護職からの転職の場合 「介護現場で、適切な福祉用具が一つあるだけで、利用者様の生活が劇的に改善され、笑顔が増える瞬間を何度も目の当たりにしてきました。今度は自分が、より多くの利用者様にその『きっかけ』を提供する側になりたいと考え、志望いたしました。」
- 異業種からの転職の場合 「祖母の在宅介護を経験した際、ケアマネジャーさんや福祉用具の担当者の方に親身に相談に乗っていただき、福祉用具の重要性を痛感しました。前職の営業で培ったヒアリング力を活かし、今度は自分が、ご本人やご家族の不安に寄り添い、安心した在宅生活を支えるお手伝いをしたいです。」
このように、自身の原体験と結びつけて語ることで、志望動機に深みと説得力が生まれます。
「ありがとう」が原動力。人の暮らしに寄り添うキャリアへ
福祉用具の営業は、単なるセールスパーソンではありません。それは、利用者様の生活の質を高め、その人らしい、尊厳ある暮らしをデザインする、誇り高い専門職です。
時には大変なこともありますが、それを上回る「ありがとう」という感謝の言葉と、お客様の笑顔が、この仕事の何よりの原動力となります。この記事が、あなたの「人の役に立ちたい」という温かい想いを、やりがいに満ちたキャリアへと繋げるための一助となれば幸いです。