転職面接で「大学時代の研究」を聞かれたら?評価を上げるアピール術と回答例文
転職の面接も終盤。職務経歴に関する質疑応答も一通り終わり、少し和やかな雰囲気になったとき、面接官から、ふとこんな質問が投げかけられることがあります。
「履歴書を拝見しました。大学時代、〇〇について研究されていたのですね。具体的に、どんな内容だったのか、簡単に教えていただけますか?」
「卒業してから、もう何年も経つのに、なぜ今それを…」
「専門的すぎるし、今の仕事とは全く関係ない。どう分かりやすく説明すればいいんだろう…」
そんな風に、一瞬、頭が真っ白になってしまうかもしれません。
しかし、ご安心ください。この質問は、あなたの専門知識を試すための学力テストではありません。その裏にある面接官の意図を正しく理解し、戦略的に準備しておけば、あなたの思考力の深さや、仕事への取り組み姿勢を伝える、絶好の自己PRの機会に変えることができるのです。
この記事では、転職面接で「大学時代の研究」について問われた際の、質問の意図から、採用担当者の心を動かす必勝の回答法までを、具体的な例文を交えて徹底的に解説していきます。
なぜ面接官は、何年も前の「研究内容」に興味を持つのか?
採用担当者は、あなたの卒業論文のテーマそのものに、強い関心があるわけではありません。この質問を通して、あなたの人物像に関する、主に3つのことを見極めようとしています。
① 課題解決の「プロセス」を知りたい
未知の課題に対し、**あなたがどのように仮説を立て、情報を収集・分析し、試行錯誤を重ねて、結論を導き出したのか。**その一連のプロセスは、ビジネスにおける課題解決のプロセスと全く同じです。あなたの仕事への取り組み方の「型」を知ろうとしています。
② 論理的思考力(ロジカルシンキング)の深さを見たい
複雑な事象を、構造的に理解し、それを専門外の人間にも分かりやすく説明できるか。あなたの**「思考のOS」**とも言える、物事を整理し、伝える能力を見ています。
③ 粘り強さ・探究心の強さを確認したい
研究は、一朝一夕に結果が出るものではありません。思うような結果が出なくても、諦めずに、地道な努力を続けられる人物か。その粘り強さや、一つのことを深く掘り下げていく探究心を知りたいのです。
【これが王道】どんな研究も「ビジネススキル」に翻訳する、3ステップ説明術
では、どう答えればよいのでしょうか。ポイントは、研究の「内容」そのものの詳細ではなく、その**「プロセス」を通じて、どのような「ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)」を身につけたかを語り、それを仕事にどう活かすかに繋げる**ことです。
ステップ1:研究の「概要」を、一文で分かりやすく(専門用語はNG)
まず、相手は専門外の人間であることを前提に、あなたの研究を、中学生にも分かるレベルで、簡潔に説明します。「〇〇という社会課題を解決するために、△△という方法で、□□を明らかにする研究です」といった形です。
ステップ2:研究の「プロセス」から、自分の“強み”を抽出する
ここが最も重要です。研究内容の詳細ではなく、その研究に取り組む過程で、どのような壁にぶつかり、どう工夫して乗り越えたのかという、あなただけのエピソードを語ります。そして、そのエピソードから、自身の「強み」を抽出します。
- 抽出する強みの例:
- 課題設定能力:「誰も気づかなかった〇〇という点に問題意識を持ち、研究テーマとして設定しました」
- 仮説検証能力:「〇〇という仮説を立て、△△という実験や調査を繰り返し、その精度を高めていきました」
- 粘り強さ:「数百回に及ぶ試行錯誤の末、ようやく〇〇というデータを得ることができました」
ステップ3:「学び」を、応募企業の仕事に「接続」する
最後に、ステップ2で語った強み(学び)が、応募先の企業で、どのように貢献できるのかを、具体的に結びつけて締めくくります。
【文系・理系別】面接で使える回答例文集
このフレームワークに基づいた、具体的な回答例をご紹介します。
例文①(理系:化学系の研究 → メーカーの品質管理職)
「大学院では、〇〇という新素材の合成に関する研究に取り組んでおりました。一言で申しますと、△△という条件を精密にコントロールすることで、素材の純度を極限まで高めることを目指す研究です(①)。
研究当初は、どうしても不純物が混入し、安定した品質の素材が得られないという壁にぶつかりました。そこで私は、考えられる原因を5つの要素に分解し、一つずつ条件を変えながら、300回以上の実験を繰り返しました。その結果、不純物の発生源を特定し、品質を99.9%まで高めることに成功しました(②)。
この経験を通じて、粘り強く原因を追求し、僅かな差異も見逃さない、徹底した品質管理の姿勢を学びました。この力は、貴社の製品の品質を、製造工程から保証していく上で、必ずや活かせると考えております(③)。」
例文②(文系:社会学の研究 → IT企業の企画職)
「大学のゼミでは、SNSの普及が、若者の消費行動に与える影響について、アンケート調査とインタビューを通じて分析する研究を行っていました(①)。
特に、集計した膨大なデータの中から、一見無関係に見える項目同士の意外な相関関係を見つけ出し、その背景にある人々のインサイト(深層心理)を読み解くというプロセスに力を入れました(②)。
このデータから、人々の行動の裏にある“物語”を読み解く力は、ユーザーの潜在的なニーズを発見し、新しいサービスを企画する、貴社の〇〇という業務で、直接的に貢献できる私の強みです(③)。」
「今の仕事と全く関係ない研究」でも、アピールは可能か?
結論から言えば、全く問題ありません。むしろ、あなたのユニークな強みになります。
大切なのは、繰り返しになりますが、研究の「内容」ではなく、その「プロセス」で身につけた**「思考の型」**です。
例えば、哲学の研究であれば、「複雑な概念の本質を捉え、それを正確に言語化する力」。歴史学の研究であれば、「膨大な一次情報の中から、客観的な事実を導き出す力」。これらは、どんなビジネスの現場でも通用する、極めて普遍的な能力です。
まとめ
転職面接で語る「大学時代の研究」は、あなたの専門知識を試す発表会ではありません。それは、あなたが、いかにして「考え、行動し、課題を解決できる人材」であるかを証明するための、最高のプレゼンテーションの機会なのです。
研究のテーマが何であれ、その真摯な探究のプロセスにこそ、あなたの価値は眠っています。
その経験に自信を持ち、あなただけの知的な冒険の物語を、面接官に伝えてください。