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村上ファンドと光通信の「逆張り」伝説|ITバブル崩壊の廃墟からお宝を見つけ出す投資術

岩下隼人
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株式投資の世界では、「群衆の逆を行け」という格言があります。市場全体が悲観に包まれ、誰もが株を投げ売りしている時にこそ、絶好の投資機会が眠っている、という教えです。

2000年代初頭、この「逆張り投資」を、最もダイナミックな形で実践し、伝説的な成功を収めたのが、「村上ファンド」と、ITバブルの象徴であった「光通信」の物語です。

「なぜ、村上ファンドは倒産寸前と言われた光通信に投資したのか?」

「彼らは、廃墟の中からどんなお宝を見つけ出したのか?」

この記事では、株式投資を始めたばかりの初心者の方にも分かりやすく、この歴史的な「逆張り投資」の事例を紐解き、恐怖の中でチャンスを見つけ出すプロの投資家の思考法を解説していきます。

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時代の寵児から一転 – ITバブルの象徴「光通信」の光と影

まず、物語の舞台となった光通信が、当時どのような存在だったかを見ていきましょう。

1999年から2000年にかけて、日本はIT関連企業の株価が異常なまでに高騰する「ITバブル」の真っ只中にありました。その中心で、時代の寵児として最も輝いていたのが、創業者・重田康光氏が率いる光通信でした。携帯電話の販売事業を核に急成長を遂げ、その株価はわずか1年あまりで100倍以上に高騰。時価総額は7兆円を超え、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。

しかし、バブルは必ず弾けます。2000年3月、光通信の株価は、わずか2ヶ月で100分の1以下にまで大暴落。市場はパニックに陥り、多くの投資家が巨額の損失を被りました。光通信は「ITバブル崩壊の象徴」として、市場から完全に見放されたかに見えました。

廃墟の中の「お宝」- 村上ファンドが見抜いた本当の価値

誰もが光通信の株を投げ売りし、その名前すら聞きたくない、という状況の中、ただ一人、冷静にその「廃墟」を分析していたのが、村上ファンドの村上世彰氏でした。

市場のパニックを横目に、彼は光通信が持つ「本当の価値」を見抜きます。それは、株価からは到底読み取ることのできない、2つの「隠れたお宝」でした。

お宝①:儲かっている「本業」のキャッシュフロー

株価は暴落しても、光通信の主力事業である携帯電話の販売は、依然として高い収益を上げ、安定した現金(キャッシュフロー)を生み出し続けていました。つまり、会社は倒産するどころか、事業そのものは非常に健全だったのです。

お宝②:巨額の「繰越欠損金」という税金の切り札

そして、村上氏が見つけた最大のお宝が、「繰越欠損金(くりこしけっそんきん)」でした。

これは少し難しい言葉ですが、簡単に言うと「過去に計上した大きな赤字を、将来の黒字と相殺できる、税制上の権利」のことです。光通信は、株価の暴落などで巨額の会計上の損失を抱えていました。それは、将来、本業でどれだけ利益を上げても、この繰越欠損金がある限り、数年間にわたって法人税をほとんど支払わなくて済むことを意味していました。

これは、他の会社にはない、極めて強力な「税金の割引クーポン」を持っているのと同じであり、財務上のとてつもないアドバンテージだったのです。

支援者としての村上ファンド – 「物言う株主」の意外な一面

この2つのお宝の価値を確信した村上ファンドは、市場がパニックの中で投げ売りする光通信の株式を、安値で大量に買い集め、大株主となりました。

しかし、この時の彼らの行動は、他の企業に対するような、経営陣と敵対する「物言う株主」ではありませんでした。むしろ、創業者である重田氏が進める事業のリストラクチャリングを、大株主として静かに支える「支援者としての安定株主」の役割を果たしたのです。

市場全体が敵に回る中、会社の本当の価値を理解してくれる大株主の存在は、光通信の経営陣にとって、心強い支えとなったことでしょう。その後、光通信の業績はV字回復を遂げ、株価も劇的に上昇。村上ファンドは、この逆張り投資で莫大な利益を手にしました。

この「逆張り伝説」から個人投資家が学ぶべきこと

この村上ファンドと光通信の物語は、私たち個人投資家に、投資の本質を突く多くの教訓を与えてくれます。

教訓①:「群衆の逆を行く」勇気を持つ

ウォーレン・バフェットの有名な言葉に「他の人が貪欲になっている時に臆病になり、他の人が臆病になっている時に貪欲になれ」というものがあります。この事例は、まさにその実践編です。市場がパニックに陥っている時こそ、冷静に企業価値を分析し、行動する勇気が、大きなリターンに繋がります。

教訓②:株価と「事業そのもの」を切り離して考える

株価は、時に市場の恐怖や熱狂といった「感情」で大きく動きます。しかし、大切なのは、その感情の波に惑わされず、その会社が手掛ける「事業そのもの」が、本当に価値を生み出しているのかを見極めることです。光通信の株価は暴落しましたが、その事業は死んでいませんでした。

教訓③:財務諸表には「お宝」が眠っている

この事例における「繰越欠損金」のように、一見するとただの数字の羅列に見える財務諸表の中には、時に株価に反映されていない「隠れた資産」が眠っています。財務諸表を読む力を養うことは、プロの投資家と同じ視点を持つための、不可欠なスキルです。

まとめ

村上ファンドと光通信の物語は、市場の熱狂と絶望の真っ只中で、冷静な分析力と逆張りの発想がいかに大きな成功を生むかを示した、伝説的なケーススタディです。

そしてこの事例は、村上ファンドが単なる「ハゲタカ」ではなく、企業の真の価値を見抜き、時には経営の「支援者」にもなりうる、優れたバリュー投資家であったという、意外な一面をも私たちに見せてくれます。

投資のチャンスは、多くの人が逃げ惑う場所にこそ、静かに眠っているのかもしれません。群衆の心理に流されず、自分自身の頭で考え、価値を見抜く力。それこそが、株式投資で長期的に成功するための、最も大切な資質なのだと、この物語は教えてくれるのです。

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岩下隼人
岩下隼人
ロイヤル合同会社 代表
ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。
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