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村上ファンドのDNAを継ぐ「村上絢」とは?父との違いと現在の活動を初心者向けに解説

岩下隼人
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株式市場のニュースを追っていると、「旧村上ファンド系が〇〇社の株式を大量保有」といった見出しを目にすることが増えてきました。かつて日本市場を席巻した「村上ファンド」。その創業者である村上世彰氏のDNAを受け継ぎ、現在の“物言う株主(アクティビスト)”活動の中心にいるのが、長女の「村上絢(むらかみ あや)氏」です。

「村上絢って誰?」「お父さんと何が違うの?」

この記事では、株式投資を始めたばかりの初心者の方にも分かりやすく、村上絢氏がどのような人物で、どのような投資活動を行っているのかを、具体的な事例を交えながら解説していきます。

※有価証券報告書などでは戸籍名の「野村絢(のむら あや)」として記載されることもありますが、本記事では活動名である「村上絢」氏として紹介します。

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村上絢氏とは?- “物言う株主”のDNAを受け継ぐ投資家

村上絢氏は、1988年生まれの投資家です。父はもちろん、かつて「村上ファンド」を率いた村上世彰氏。幼い頃から父より投資に関する英才教育を受けてきたと言われています。

慶應義塾大学を卒業後、外資系証券会社のモルガン・スタンレーMUFG証券に勤務。その後、父・世彰氏が設立した投資会社である「C&Iホールディングス」の代表取締役に就任するなど、本格的に投資の世界へと足を踏み入れました。

現在は、シンガポールを拠点に、父から受け継いだ投資会社や「シティインデックスイレブンス」といった関連会社を通じて、日本の上場企業へ投資を行うアクティビストとして活動しています。

父の時代と何が違う?現代流アクティビストの戦い方

村上絢氏らの活動は、父である村上世彰氏の哲学を色濃く受け継いでいます。しかし、そのスタイルには時代の変化に合わせた進化が見られます。

共通の哲学:「株主価値の最大化」

まず、活動の根幹にある哲学は父の時代と変わりません。

  • 企業の潜在価値を見抜く: 豊富な現預金や不動産を持っているのに有効活用できていない、PBR(株価純資産倍率)が低いなど、本来の価値より株価が割安な企業に目をつける。
  • 経営陣への働きかけ: 株主という立場から、経営陣に対して「増配」や「自社株買い」といった株主還元策や、不採算事業の売却といった経営改革を強く要求する。

この「企業価値を高めて株価を上昇させ、利益を得る」というアクティビストの基本戦略は、まさしく村上ファンドのDNAそのものです。

スタイルの変化:静かなるチームプレイ

一方で、その手法はより現代的で洗練されています。

  • 表舞台に出ない戦略: 父・世彰氏がメディアに積極的に露出し、時に挑発的な言葉で世間の注目を集めたのに対し、絢氏らは公の場に姿を見せることは稀です。水面下で静かに株式を買い進め、準備が整った段階で株主提案を行うなど、より組織的で計算された動きが特徴です。
  • 社会貢献活動との両立: 絢氏は、認定NPO法人「チャリティ・プラットフォーム」の代表理事を務めるなど、社会貢献活動にも熱心です。父・世彰氏も近年は財団を通じた寄付や投資教育に力を入れています。こうした活動は、かつての「拝金主義」というイメージを払拭し、活動の正当性を社会に訴える狙いもあるのかもしれません。

村上絢氏らが関わる近年の注目事例

彼女たちの活動を具体的に知るために、近年注目を集めた2つの事例を見てみましょう。

事例1:あおぞら銀行(2024年〜)

2024年2月、あおぞら銀行が巨額の赤字と無配転落を発表し、株価が暴落(あおぞらショック)。多くの投資家がパニック売りをする中、村上絢氏らが関わる「シティインデックスイレブンス」は、この暴落した株式を積極的に買い増し、瞬く間に筆頭株主グループに躍り出ました。

これは、「経営に失敗した企業の株を安値で仕込み、経営改革を迫って企業価値を回復させ、将来的に大きな利益を得る」というアクティビストの典型的な戦略です。最終的に、彼らは保有株式を大和証券グループ本社に売却したと見られており、短期間で大きなリターンを得た好例となりました。

事例2:コスモエネルギーHD(2022年〜)

石油元売り大手のコスモエネルギーホールディングスに対しては、長期間にわたり揺さぶりをかけています。村上絢氏らは、同社が持つ風力発電事業を分離・上場させることなどを要求し、経営陣と激しく対立。株主総会では、会社の買収防衛策の是非を巡って、委任状争奪戦(プロキシーファイト)にまで発展しました。

個人投資家は「村上絢氏」の動きをどう見るべきか

では、私たち個人投資家は、彼女たちの動きをどう捉え、自身の投資に活かせばよいのでしょうか。

  • 安易な「提灯買い」は禁物「村上ファンド系が買った」というニュースが流れると、期待感から株価が急騰することがあります。しかし、そのお祭りに安易に乗るのはハイリスクです。彼らの目的が達成された後や、経営陣との対立が泥沼化した際には、株価が急落する可能性も十分にあります。
  • 最高の「企業分析レポート」として活用する彼女たちが目を付けた企業は、裏を返せば「経営に何らかの課題がある」と同時に「改善の余地=伸びしろがある」ということです。彼らが提出する株主提案書などは、その企業の課題と可能性をプロの視点で鋭く分析した、最高の企業分析レポートと言えます。なぜ彼らがその企業に投資したのかを読み解くことで、銘柄分析の力が格段に向上するでしょう。
  • 自分の投資スタイルを確立する彼らの動きは、あくまで投資判断の一つの材料です。その情報を参考にしつつも、最終的には「自分は長期的な視点でこの企業を応援したいのか」「短期的な値動きで利益を狙いたいのか」という自分自身の投資スタイルに沿って、冷静に判断することが最も重要です。

まとめ

村上絢氏は、父・村上世彰氏の“物言う株主”としてのDNAを色濃く受け継ぎながらも、より現代的で洗練されたスタイルで活動する「第二世代のアクティビスト」です。彼女たちの動きは、日本企業の構造的な課題や、コーポレート・ガバナンスのあり方を浮き彫りにします。

その動向を追いかけることは、単なるゴシップではなく、株式市場のダイナミズムを学ぶ上で非常に面白く、示唆に富んだケーススタディとなるでしょう。

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岩下隼人
岩下隼人
ロイヤル合同会社 代表
ロイヤル合同会社を設立して、新しいことに挑戦している人や、頑張っている会社を応援中。ときどき取材記者(ライター)。
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