メタプラネットは「胡散臭い」?投資家が抱く“3つの疑問”とその真相
「ホテル会社だったのに、いきなりビットコイン?」
「経営しているのは、どんな人たち?」
「常にお金を集めているみたいだけど、大丈夫?」
メタプラネットという会社を調べ始めると、その常識外れのビジネスモデルや、あまりにも急な方針転換に、どこか「胡散臭い」と感じてしまう方がいるのも無理はありません。
しかし、その「胡散臭さ」の多くは、この会社が日本の伝統的な企業の「当たり前」から、いかにかけ離れているか、という点に起因します。この記事では、多くの投資家が抱くであろう“3つの疑問”を解き明かし、その「胡散臭さ」の正体に迫ります。
疑問①:なぜ、いきなり「ビットコインの会社」に?
多くの人が最初に感じる最大の疑問は、その唐突な事業転換でしょう。「昨日までホテルをやっていた会社が、今日からビットコインの会社になる」というのは、確かに自然な流れには見えません。
「胡散臭い」と感じる点
- 事業に一貫性がなく、流行りに乗っただけの日和見な経営に見える。
- まともな事業で稼げなくなったから、怪しげな投機に手を出したように見える。
真相:変化を繰り返してきた歴史と、明確な戦略
メタプラネットの過去を遡ると、その社名は「レッド・プラネット・ジャパン」であり、さらにその前は「ダイキサウンド」でした。音楽CDの販売から始まり、ホテル運営、そして現在のビットコイントレジャリー事業へ。実は、時代に合わせて大胆にビジネスモデルを転換(ピボット)してきた歴史が、この会社にはあるのです。
そして、今回のビットコイン戦略への転換も、決して思いつきではありません。会社側は、その理由を公式に、そして繰り返し説明しています。
- 日本円の価値低下へのヘッジ: 長期的なインフレから会社の資産を守るため、国の発行する通貨ではないグローバルな資産、ビットコインを保有する。
- 成功事例の模倣: 米国で既に大成功を収めているマイクロストラテジー社の戦略を、日本市場で実行する。
このように、今回の転換は突飛に見えて、その裏には**「変化を恐れない社風」と「明確な戦略的意図」**が存在しているのです。
疑問②:経営しているのは、どんな人たち?
次に疑問に思うのは、その経営陣の顔ぶれです。日本の伝統的な大企業の経営者とは少し異なる、国際的なバックグラウンドを持つ人物が中心となっている点に、馴染みのなさを感じるかもしれません。
「胡散臭い」と感じる点
- 日本ではあまり馴染みのない外国人の経営者で、素性がよく分からない。
- 経営陣の狙いが、会社の成長ではなく、個人の利益のためではないかと勘ぐってしまう。
真相:金融と暗号資産のプロフェッショナル集団
代表取締役社長であるサイモン・ゲロヴィッチ氏は、ハーバード大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券などでキャリアを積んだ、金融のプロフェッショナルです。以前のホテル事業(レッド・プラネット・ホテルズ)も共同設立者として率いており、長年にわたりアジア市場でビジネスを手掛けてきた実績があります。
さらに、取締役やアドバイザーには、米国の大手資産運用会社のCEOであるマーク・ユスコ氏や、著名実業家のエリック・トランプ氏など、国際的な金融界や暗号資産業界の著名人を招聘しています。
これは、**「ビットコイン戦略というグローバルな戦いにおいては、その道のプロフェッショナルを世界中から集める」**という、非常に合理的な経営判断の表れと言えます。
疑問③:資金調調の方法が、普通じゃない?
メタプラネットは、新株予約権や社債の発行を繰り返し、常に市場から資金を調達し続けています。これもまた、「普通ではない」と感じる点でしょう。
「胡散臭い」と感じる点
- 常に資金集めばかりしており、自転車操業のように見える。
- 新株を乱発して、既存株主の価値を毀損している(希薄化させている)のではないか。
真相:ビジネスモデルを回すための「エンジン」
この疑問への答えは、同社のビジネスモデルそのものにあります。メタプラネットの目的は「ビットコインをひたすら買い増し、資産価値を高める」ことです。そのためには、**継続的な資金調達が不可欠な「エンジン」**なのです。
確かに、新株を発行すれば1株あたりの価値は「希薄化」します。しかし、同社は「希薄化のスピードを上回るペースで、1株あたりのビットコイン保有量を増やし続けることで、結果的に株主価値は向上する」と主張しています。
これは、**「短期的な痛みを伴ってでも、未来の大きな成長の果実を取りに行く」**という、極めて攻撃的な成長戦略です。この手法自体は、多くの成長企業で用いられる完全に合法的なものであり、その是非は、この戦略の成功を信じるかどうかにかかっています。
まとめ
メタプラネットに感じる「胡散臭さ」の正体は、その**徹底した「非・伝統性」**にあります。
事業内容、経営陣の顔ぶれ、資金調達の方法。そのすべてが、日本の多くの保守的な上場企業とは一線を画しています。しかし、その一つ一つの「普通ではない」点には、それぞれ明確な戦略的背景と、公に説明された合理的な理屈が存在します。
最終的に、その「普通ではない」姿を、「胡散臭い」と判断するか、「未来的で、既成概念を打ち破る革新的な挑戦」と判断するかは、私たち投資家一人ひとりの価値観と見識に委ねられています。大切なのは、漠然とした感覚で判断するのではなく、その裏側にある事実とロジックを理解した上で、自分自身の結論を導き出すことでしょう。