転職時に求められる「在籍証明書」とは?スムーズな発行依頼と確認ポイント
転職活動を進める中で、応募先企業やその他の機関から「在籍証明書」の提出を求められることがあります。「在籍証明書って何?」「どんな時に必要なの?」「どうやって発行してもらうの?」など、普段あまり馴染みのない書類だけに、疑問を感じる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、転職時に必要となる可能性のある在籍証明書がどのような書類で、どのような目的で使用されるのか、そして発行を依頼する際の手順や注意点などを分かりやすく解説します。
在籍証明書とは?その役割と目的
在籍証明書とは、あなたが特定の企業に在籍していること(または在籍していたこと)を、その企業が公式に証明する書類です。一般的に、企業が従業員や退職者の求めに応じて発行します。
転職活動において、在籍証明書が求められる主な目的は以下の通りです。
- 経歴の確認・照合: 応募者が提出した履歴書や職務経歴書に記載された在籍期間、役職、業務内容などに虚偽がないかを確認するため。
- 実務経験の証明: 特定の職務経験や在籍期間が応募資格となっている場合や、給与算定の根拠となる場合に、その証明として。
- 採用選考の参考資料: 応募者のこれまでのキャリアを客観的に把握するための資料の一つとして。
- その他: 稀なケースですが、海外での就労ビザ取得手続きなどで、公的な証明として必要になる場合もあります。
在籍証明書と類似する書類との違い
- 退職証明書: あなたがその会社を「退職したこと」を証明する書類です。在籍証明書が在籍の事実(現在または過去)を証明するのに対し、退職証明書は退職の事実に焦点があります。ただし、記載項目が類似しているため、退職証明書が在籍証明書の代わりとして認められることもあります。
- 職務経歴書: あなた自身がこれまでの職務内容や実績をまとめた書類であり、企業が発行するものではありません。在籍証明書は、職務経歴書の内容を裏付ける客観的な証拠の一つとなり得ます。
- 離職票: 主に失業保険の受給手続きに必要な公的書類で、ハローワークから交付されます。在籍証明書とは目的も発行元も異なります。
どのような場合に在籍証明書の提出を求められるのか?
転職活動において、必ずしも全ての企業が在籍証明書の提出を求めるわけではありません。一般的に、以下のような場合に提出を求められることがあります。
- 応募先企業からの指示: 書類選考後や内定後など、企業の採用プロセスの中で提出を求められるケース。特に、実務経験を重視する企業や、過去の経歴を慎重に確認したいと考える企業で見られます。
- 特定の業界・職種: 例えば、保育士が認可保育園へ転職する際に、過去の認可保育園での実務経験を証明するために必要となるなど、業界や職種によっては提出が慣例となっている場合があります。
- 公務員への転職や国家資格の受験: 一般企業から公務員へ転職する場合や、一部の国家資格の受験資格として実務経験が求められる場合に、その証明として必要となることがあります。
提出を求められるかどうかは応募先によって異なるため、まずは応募先の企業の指示を確認することが最も重要です。
在籍証明書に記載される一般的な項目
在籍証明書には法的に定められた統一フォーマットはありません。記載される項目は、提出先(応募先企業など)が何を求めているかや、発行する企業の規定によって異なります。一般的に記載されることが多い項目は以下の通りです。
- 証明を受ける者の情報:
- 氏名
- 生年月日
- 現住所(または在籍時の住所)
- 在籍に関する情報:
- 入社年月日
- (退職している場合)退職年月日
- 在籍期間
- 所属部署・役職(在籍時または最終)
- 雇用形態(正社員、契約社員、パートタイムなど)
- 担当業務内容(簡潔な説明)
- 証明書の発行に関する情報:
- 証明書の発行日
- 証明する会社名、所在地、代表者名
- 会社の印鑑(社印または代表者印)
提出先から特に指定がある場合は、発行を依頼する際にその旨を伝える必要があります。例えば、「給与額を記載してほしい」「具体的な職務内容を詳しく記載してほしい」といった要望があるかもしれません。
在籍証明書の発行依頼の手順と注意点
在籍証明書は、原則として現在在籍している企業、または過去に在籍していた企業の人事部や総務部などの担当部署に依頼して発行してもらいます。
依頼方法
- 在籍中の場合: 社内の規定に従い、担当部署に直接依頼するか、社内システムやメールで申請します。
- 退職後の場合:
- 電話で問い合わせる: まずは電話で、在籍証明書の発行を依頼したい旨と、必要な手続きについて問い合わせるのがスムーズです。
- 郵送またはメールで依頼する: 企業によっては、書面での依頼が必要な場合があります。その際は、依頼状を作成し、必要な情報を明記して郵送またはメールで送付します。
- 企業指定のフォーマットがあるか確認: 企業によっては、在籍証明書の発行依頼専用のフォーマットを用意している場合があります。
依頼する際に伝えるべき主な情報
- 自分の氏名(旧姓などもあれば)
- 生年月日
- 在籍していた期間
- 在籍時の所属部署・役職
- 在籍証明書の使用目的(例:転職先の企業へ提出するため)
- 必要な記載項目(提出先から指定がある場合)
- 必要な部数
- 受け取り方法の希望(郵送か、直接受け取りかなど)
- 提出期限(もしあれば)
- 連絡先(電話番号、メールアドレス)
発行依頼時の注意点
- 早めに依頼する: 在籍証明書の発行には、数日から1週間程度、場合によってはそれ以上かかることがあります。提出期限に間に合うよう、余裕を持って依頼しましょう。特に退職後の会社に依頼する場合は、事務処理に時間がかかることを考慮に入れる必要があります。
- 丁寧な言葉遣いを心がける: 特に退職した会社に依頼する場合は、相手に手間をかけることになるため、感謝の気持ちと丁寧な言葉遣いを忘れないようにしましょう。
- 必要な記載項目を正確に伝える: 提出先から求められている記載項目があれば、漏れなく正確に伝え、二度手間にならないようにします。
- 発行手数料の有無を確認する: 企業によっては、発行手数料がかかる場合があります。
- 返信用封筒の準備(郵送の場合): 郵送での受け取りを希望する場合は、切手を貼った返信用封筒を同封するよう求められることがあります。
労働基準法との関連:
労働基準法第22条では、労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならないと定められています。これは「退職証明書」に関する規定ですが、実務上、在籍時の情報を含む証明書の発行についても、企業は合理的な理由なく拒否することは難しいと考えられます。
もし在籍証明書の発行を拒否されたら?
通常、企業は在籍証明書の発行依頼に応じてくれますが、万が一、正当な理由なく発行を拒否されたり、対応が著しく遅れたりする場合は、以下の対応を検討しましょう。
- 再度、丁寧に発行を依頼し、発行義務について言及する: 労働基準法上の退職証明書の発行義務(上記参照)に触れつつ、協力を求める。
- 労働基準監督署に相談する: 企業が応じない場合は、管轄の労働基準監督署に相談し、助言や指導を求めることができます。
- 提出先に代替書類で対応可能か相談する: 応募先企業に事情を説明し、雇用保険の被保険者証のコピーや給与明細、源泉徴収票、労働契約書のコピーなど、他の書類で在籍の事実を証明できないか相談してみるのも一つの方法です。
まとめ:在籍証明書は計画的に準備を
転職活動中に在籍証明書の提出を求められた場合は、慌てずに、まずは発行元となる企業(現在または過去の勤務先)の担当部署に連絡を取り、発行手続きを進めましょう。
重要なのは、提出先がどのような情報を求めているのかを正確に把握し、それを発行元の企業に的確に伝え、余裕を持ったスケジュールで依頼することです。スムーズな書類準備は、転職活動を円滑に進めるための大切な要素の一つです。この記事が、あなたの在籍証明書に関する疑問解消の一助となれば幸いです。