転職時の保険証、どうなる?手続きの流れと空白期間の対処法を徹底解説
転職は、新しいキャリアへの期待とともに、社会保険に関する様々な手続きも伴います。特に「健康保険証」の扱いは、日々の医療費に関わるため、多くの方が気になる重要なポイントではないでしょうか。「今の保険証はいつまで使えるの?」「退職してから次の会社に入るまでの間はどうすればいいの?」「新しい保険証はいつもらえるの?」など、疑問は尽きません。
この記事では、転職時の健康保険証の切り替え手続きや、退職から再就職までの間に無保険期間を作らないための選択肢、そしてそれぞれの注意点などを分かりやすく解説していきます。安心して新しい生活をスタートできるよう、しっかりと確認しておきましょう。
退職時:健康保険証の取り扱いと返却
まず、現在の会社を退職する際の健康保険証の扱いです。
- 原則:退職日をもって、それまでの健康保険証は使用できなくなります。 退職日の翌日以降は、その保険証を使って医療機関を受診することはできません。
- 返却先:最終出社日または退職日までに、勤務先の会社(通常は人事・総務担当者)に健康保険証を返却します。
- 扶養家族がいる場合: あなたに扶養されている家族がいる場合は、その家族の分の健康保険証も一緒に返却する必要があります。
- 退職後に誤って使用しないように注意! もし退職後に、資格を喪失した古い保険証を誤って使用してしまうと、後日、保険者(健康保険組合や協会けんぽなど)が負担した医療費の返還を求められることがあります。十分注意しましょう。
会社に保険証を返却すると、後日(通常1週間~2週間程度)、会社から「健康保険資格喪失証明書」といった書類が発行されることがあります。これは、国民健康保険への加入手続きなどに必要となる場合があるため、受け取ったら大切に保管しておきましょう。
退職後から次の会社に入社するまでの間の健康保険:3つの選択肢
前の会社を退職してから、新しい会社に入社するまでに期間が空く場合(1日でも空けば)、その間の医療保険をどうするか、以下の3つの選択肢があります。無保険の期間を作らないように、必ずいずれかの手続きを行いましょう。
選択肢1:国民健康保険に加入する
最も一般的な選択肢です。
- 対象者: 退職後、すぐに再就職しない場合や、自営業を始める場合など、他の健康保険に加入しない全ての方が対象となります。
- 手続き場所: お住まいの市区町村の役所・役場の国民健康保険担当窓口
- 手続き期限: 原則として、退職日の翌日から14日以内です。期限を過ぎても加入手続きは可能ですが、保険料は退職日の翌日まで遡って支払う必要があります。
- 必要なもの(一般的な例):
- 退職した会社から発行される「健康保険資格喪失証明書」(または離職票など退職日がわかる書類)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- 印鑑(自治体によって不要な場合もあります)
- 保険料: 前年の所得や世帯の状況などに基づいて計算されます。保険料率は市区町村によって異なります。会社員時代は会社が半額負担していましたが、国民健康保険は全額自己負担となります。
- メリット: 誰でも加入できます。所得によっては保険料の減免制度が利用できる場合があります。
- デメリット: 保険料が全額自己負担となるため、前年の所得が高い場合などは保険料が高額になることがあります。
選択肢2:元の会社の健康保険を任意継続する
退職後も、一定の条件を満たせば、それまで加入していた会社の健康保険を継続できる制度です。
- 対象者(主な条件):
- 退職日までに継続して2ヶ月以上の被保険者期間があること。
- 退職日の翌日から20日以内に申請すること。
- 手続き場所: 退職した会社の健康保険組合、または協会けんぽ(全国健康保険協会)の都道府県支部。
- 加入期間: 最長で2年間です。
- 必要なもの(一般的な例):
- 任意継続被保険者資格取得申出書(加入していた健康保険組合や協会けんぽから入手)
- 住民票(マイナンバーを記載すれば不要な場合も)
- その他、健康保険組合などが指定する書類
- 保険料: 在職中の自己負担額と会社負担額を合計した額が自己負担となります(ただし、標準報酬月額には上限が設けられています)。原則として、退職時の標準報酬月額に基づいて計算されます。
- メリット:
- 扶養家族も引き続き同じ健康保険の被扶養者となることができます(追加の保険料負担なし)。
- 保険給付の内容(高額療養費、出産手当金、傷病手当金など ※一部例外あり)は、在職中とほぼ変わりません。
- 国民健康保険料と比較して、保険料が安くなる場合があります(特に扶養家族が多い場合や、退職時の標準報酬月額がそれほど高くない場合)。
- デメリット:
- 保険料が全額自己負担となるため、在職中の保険料の約2倍になります。
- 原則として、加入期間の途中で任意に脱退することはできません(国民健康保険への切り替えなど、再就職した場合や保険料を納付しなかった場合などの例外を除く)。
選択肢3:家族の健康保険の扶養に入る
配偶者や親族などが加入している健康保険の被扶養者になるという選択肢もあります。
- 対象者(主な条件):
- 家族(被保険者)によって主に生計を維持されていること。
- 年間の収入見込みが一定額未満であること(一般的には130万円未満、60歳以上または障害者の場合は180万円未満。ただし、同居・別居の状況や被保険者との続柄によっても基準が異なります)。
- 手続き場所: 家族(被保険者)の勤務先を通じて、その会社の健康保険組合または協会けんぽに申請します。
- 必要なもの(一般的な例):
- 被扶養者(異動)届(家族の勤務先から入手)
- 続柄を証明する書類(住民票など)
- 収入を証明する書類(退職証明書、離職票、非課税証明書など)
- その他、健康保険組合などが指定する書類
- メリット: 被扶養者自身が保険料を負担する必要がありません。
- デメリット: 被扶養者として認定されるための収入基準などを満たす必要があります。
どの選択肢が良いかは、個人の状況(収入、扶養家族の有無、次の就職までの期間など)によって異なります。 それぞれの保険料を試算したり、給付内容を比較したりして、慎重に検討しましょう。
新しい会社に入社した際の健康保険の手続き
無事に新しい会社に入社したら、入社と同時に、その会社の健康保険に加入することになります。
- 手続き: 基本的には、新しい会社(人事・総務担当者)が加入手続きを行ってくれます。 あなたが個人で特別な手続きをする必要はほとんどありません。
- 提出するもの(一般的な例):
- マイナンバー(個人番号)
- 年金手帳または基礎年金番号通知書(基礎年金番号の確認のため)
- 扶養家族がいる場合は、その情報(氏名、生年月日、マイナンバー、収入状況など)を申告し、必要に応じて「被扶養者(異動)届」などを提出します。
- 新しい健康保険証の発行: 手続きが完了すると、新しい健康保険証が会社を通じて交付されます。
新しい健康保険証が手元に届くまでの期間と医療機関の受診
新しい会社に入社しても、健康保険証がすぐに手元に届くわけではありません。
- 保険証が届くまでの期間: 一般的に、入社手続き後、1週間~3週間程度かかることが多いようです。特に4月などの入社者が多い時期は、発行までに時間がかかることもあります。
- その間に医療機関を受診する場合の対処法:
- 「健康保険被保険者資格証明書」の利用: 新しい会社に依頼して、「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらえるか確認しましょう。これは、健康保険に加入していることを証明する仮の証明書のようなもので、保険証が届くまでの間、保険証と同様に医療機関で使用できます(全ての医療機関で対応しているとは限りません)。
- 一旦、医療費を全額自己負担する: 証明書がない場合や、医療機関で対応してもらえない場合は、一旦窓口で医療費の全額(10割)を支払い、後日、新しい健康保険証が届いたら、加入している健康保険組合や協会けんぽに「療養費」として、自己負担分を除いた金額(通常7割)の払い戻しを請求する手続きを行います。その際、医療機関で発行された診療明細書と領収書が必要になります。
- 医療機関の窓口で相談する: 受診する前に、医療機関の窓口で「転職直後で、現在新しい健康保険証の発行手続き中です」と正直に伝え、どのように対応すれば良いか指示を仰ぎましょう。
健康保険の切り替えに関する注意点
スムーズな健康保険の切り替えのために、以下の点に注意しましょう。
- 無保険期間を作らないことが最も重要: 日本は国民皆保険制度であり、何らかの公的医療保険に加入している必要があります。退職日の翌日から、必ずいずれかの健康保険に加入している状態にしましょう。
- 手続きの期限を守る: 国民健康保険への加入手続き(退職日の翌日から14日以内)や、任意継続の手続き(退職日の翌日から20日以内)には期限があります。遅れないように注意しましょう。
- 二重加入はできません: 例えば、任意継続をしながら国民健康保険に加入する、といったことはできません。
- 保険料の比較検討を忘れずに: 退職後の期間が空く場合、国民健康保険と任意継続では、どちらの保険料がご自身の状況にとって有利になるか、事前に市区町村役場や退職する会社の健康保険組合に問い合わせて試算してみることをお勧めします。扶養家族の有無も考慮に入れましょう。
- 扶養家族がいる場合の手続きも忘れずに: あなたが退職・転職することで、扶養に入っている家族の健康保険も影響を受けます。必要な手続きを併せて行いましょう。
まとめ:転職時の健康保険証の扱いや手続きは、空白期間を作らないことが最も重要。自分の状況に合わせて最適な選択をし、必要な手続きを確実に進めて、安心して新生活をスタートさせよう。
転職に伴う健康保険証の手続きは、少し複雑に感じるかもしれませんが、将来の医療費負担に関わる大切なことです。「無保険期間」を作らないことを第一に、ご自身の状況(次の就職までの期間、収入、扶養家族の有無など)に合わせて、国民健康保険への加入、任意継続、家族の扶養に入る、という選択肢の中から最適なものを選び、必要な手続きを期限内に確実に行いましょう。
もし手続きに関して不明な点や不安なことがあれば、自己判断せずに、お住まいの市区町村役場、年金事務所、加入している(または加入していた)健康保険組合、あるいは新しい会社の人事・総務担当者に遠慮なく相談してください。万全の準備で、安心して新しいキャリアへの一歩を踏み出しましょう。