転職時の入社日、どう交渉する?円満に進めるための伝え方と注意点
転職活動で内定を勝ち取った喜びも束の間、次なるステップとして「入社日」の調整が待っています。企業側の希望と自身の退職準備や個人的な都合をすり合わせる必要があり、どのように交渉すれば良いのか悩む方も少なくないでしょう。
入社日の調整は、新しい職場でのスタートを円滑にするための重要なプロセスです。この記事では、転職時の入社日交渉を円満に進めるための具体的な伝え方、交渉のタイミング、注意点などを詳しく解説します。
なぜ入社日の交渉が必要になるのか?よくある理由
企業から提示された入社希望日と、自身の都合が必ずしも一致するとは限りません。入社日の交渉が必要になる一般的な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 現職の引き継ぎ期間の確保: 最も多い理由の一つです。後任者への業務の引き継ぎには、十分な期間が必要です。円満な退職のためにも、この期間を疎かにはできません。
- 有給休暇の消化: 未消化の有給休暇がある場合、退職前に消化したいと考えるのは自然なことです。
- 個人的な事情: 引っ越しや家族の予定、資格試験の受験など、個人的な事情で入社時期を調整したいケースもあります。
- ボーナス支給後の退職希望: 現職のボーナスを受け取ってから退職したいという希望も、交渉理由の一つとなり得ます。
- 他社の選考状況との兼ね合い: まれなケースですが、他に選考が進んでいる企業があり、その結果を待ってから最終判断をしたい場合(ただし、これは企業への伝え方に細心の注意が必要です)。
どのような理由であれ、企業に対して誠実に状況を伝え、相談することが大切です。
入社日交渉を始める前に確認すべきこと
スムーズな交渉のためには、事前の準備が不可欠です。以下の点を必ず確認しておきましょう。
- 現職の就業規則: 退職の申し出が何ヶ月前までと規定されているか、退職に関する手続きなどを正確に把握しておきます。
- 引き継ぎに必要な期間の見積もり: 担当業務の内容や量、後任者の状況などを考慮し、現実的にどれくらいの引き継ぎ期間が必要かを見積もります。
- 有給休暇の残日数と消化の可否: 有給休暇が何日残っているか、また、それを退職前に消化できるか(職場の慣習や繁忙期なども考慮)を確認します。
- 企業の希望入社日とその理由: 内定面談や内定通知の際に、企業側がなぜその入社日を希望しているのか、背景を理解しておくと交渉の糸口が見つかることがあります。
これらの情報を整理しておくことで、交渉の際に具体的な根拠を示しやすくなります。
入社日交渉の基本的なマナーと進め方
入社日の交渉は、企業との最初の共同作業とも言えます。良好な関係を築くためにも、以下のマナーと進め方を意識しましょう。
- タイミング: 内定の連絡を受け、入社の意思を固めたら、できるだけ速やかに(通常は内定承諾の意思を伝える際か、その直後に)入社日について相談を切り出します。企業も採用計画があるため、早めの連絡が重要です。
- 連絡手段: まずは電話で直接伝えるのが最も丁寧です。採用担当者に口頭で感謝の意を述べた上で、入社日の相談をします。その後、確認の意味を込めてメールでも内容を送付しておくと、双方にとって記録が残り安心です。
- 姿勢: 「交渉」という言葉を使うと強気な印象を与えがちですが、あくまでも**「相談」という謙虚な姿勢**で臨むことが大切です。内定をいただいたことへの感謝の気持ちを忘れずに、企業側の事情も尊重する態度を示しましょう。
- 伝え方:
- 内定へのお礼: まず、内定をいただいたことに対する感謝を述べます。
- 入社意思の表明: 貴社で働きたいという入社の意思を明確に伝えます。
- 希望入社日と具体的な理由: いつ入社したいのか、そしてその理由(例:「現職の引き継ぎに〇ヶ月を要するため」「就業規則により退職申し出から〇ヶ月後が最短の退職日となるため」など)を正直かつ具体的に伝えます。
- 企業側の事情への配慮: 「貴社のご事情も十分承知しておりますが」といった言葉を添え、一方的な要求ではないことを示します。
- 柔軟性のアピール: 「〇月〇日を希望いたしますが、〇月~〇月の間で調整させていただけると幸いです」など、ある程度の幅を持たせて相談すると、企業側も検討しやすくなります。
【例文あり】入社日交渉の伝え方(電話・メール)
実際に企業に入社日交渉を行う際の例文をご紹介します。
電話での交渉例文
自分: 「お世話になります。先日、貴社より内定をいただきました〇〇(氏名)と申します。採用ご担当の△△様はいらっしゃいますでしょうか。」
(担当者に代わってもらう)
自分: 「△△様、お世話になります。〇〇です。この度は内定のご連絡、誠にありがとうございました。ぜひ貴社で力を尽くしたいと考えております。つきましては、入社日についてご相談させて頂きたい事項がございまして、お電話いたしました。」
自分: 「貴社からは〇月〇日入社とのご提示をいただきました。誠にありがとうございます。ただ、現職の引き継ぎ業務に責任を持って対応するため、また就業規則に基づきますと、退職までに約2ヶ月ほどお時間をいただきたく存じます。つきましては、大変恐縮ではございますが、入社日を〇月〇日頃でご調整いただくことは可能でしょうか。もちろん、貴社のご都合もあるかと存じますので、ご相談させていただければ幸いです。」
メールでの交渉例文(電話後のフォローや、電話が難しい場合)
件名: 入社日に関するご相談/〇〇(氏名)
本文:
株式会社□□(企業名)
人事部 △△様(採用担当者名)
お世話になります。
先日、貴社より内定のご連絡をいただきました〇〇(氏名)です。
この度は、採用内定をいただき誠にありがとうございました。
貴社の一員として貢献できる機会をいただけること、大変光栄に存じます。
つきましては、入社日についてご相談させて頂きたく、ご連絡いたしました。
(もし電話で先に伝えている場合は、「先ほどお電話でもお伝えいたしましたが、」と加える)
貴社からは〇月〇日の入社をご提示いただいておりますが、現職におきまして、担当業務の引き継ぎに万全を期すため、また弊社の就業規則に基づき退職手続きを進めますと、〇月〇日頃の退職を見込んでおります。
つきましては、誠に勝手なお願いとは存じますが、入社日を〇月〇日頃としてご調整いただくことは可能でしょうか。
もちろん、貴社のご採用計画におけるご事情もございますかと存じますので、ご相談のうえ、できる限り貴社のご要望に沿えるよう努めたいと考えております。
お忙しいところ恐縮ですが、ご検討いただけますようお願い申し上げます。
署名
〇〇(氏名)
メールアドレス:✕✕✕@✕✕✕.com
電話番号:✕✕✕-✕✕✕✕-✕✕✕✕
入社日交渉で企業が許容してくれる期間の目安
企業がどの程度の期間、入社を待ってくれるかは、その企業の状況や募集背景によって大きく異なります。一般的には、内定から1ヶ月~3ヶ月程度であれば、交渉に応じてくれるケースが多いようです。
- 欠員補充や緊急性の高い求人の場合: あまり長い期間の猶予は難しい可能性があります。
- 増員や長期的な視点での採用の場合: 比較的柔軟に対応してくれることもあります。
まずは正直に自身の状況を伝え、相談してみることが大切です。あまりにも現実離れした長期間の希望は、企業側に受け入れられにくいと理解しておきましょう。
入社日交渉における注意点とリスク
入社日の交渉は慎重に行う必要があります。以下の点に注意しましょう。
- 交渉決裂や内定取り消しの可能性: 誠実な態度で交渉すれば、入社日の希望が理由で即座に内定取り消しとなるケースは稀です。しかし、あまりにも一方的な要求や、企業側の事情を全く顧みない姿勢は、心証を損ね、最悪の場合、内定取り消しに繋がる可能性もゼロではありません。
- 企業側の心証への配慮: 入社前から「自分本位な人物」という印象を与えないよう、言葉遣いや態度には細心の注意を払いましょう。
- 回答期限の確認と遵守: 交渉の結果、企業から回答期限を設けられた場合は必ず守りましょう。また、こちらから返答に時間を要する場合は、いつまでに回答できるか明確に伝えます。
- 一度合意した入社日の再変更は極力避ける: やむを得ない事情を除き、一度双方で合意した入社日を再度変更するのは、企業に多大な迷惑をかけるため、絶対に避けるべきです。
どうしても希望が通らない場合の対処法
誠意をもって交渉しても、どうしても双方の希望が折り合わない場合も残念ながらあり得ます。その場合は、以下の点を考慮して最終的な判断を下しましょう。
- 再度、企業側の事情と自身の優先順位を天秤にかける: その企業への入社意欲の度合い、現職の退職条件、自身のキャリアプランなどを総合的に考えます。
- 妥協点を探る: 例えば、有給休暇の完全消化は諦める、引き継ぎ期間を少し短縮できないか再検討するなど、自身で譲歩できる点がないか探ります。
- 場合によっては内定辞退も覚悟する: どうしても条件が合わず、無理に入社しても後悔しそうだと判断した場合は、残念ながら内定を辞退するという選択も視野に入れる必要があります。
まとめ:入社日交渉は誠実なコミュニケーションが鍵。円満なスタートを目指そう。
転職における入社日の交渉は、企業との最初の信頼関係を築く上で非常に重要なプロセスです。内定への感謝の気持ちを忘れず、自身の状況を正直かつ具体的に伝え、企業側の事情も尊重する姿勢で臨むことが、円満な合意への近道となります。
丁寧なコミュニケーションを心がけ、双方にとって納得のいく入社日を決定し、気持ちの良い新しいスタートを切りましょう。